忙しく日々を過ごすなかで、いつの間にか夫婦の間に亀裂が生じ修復困難な状況になってしまっている場合、「離婚」を考え出すことでしょう。しかし、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導いてきた離婚カウンセラーの岡野あつこさんは、「離婚の8割はがんばれば修復できるケースだ」と言います。
そこで、岡野さんの著書『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』から、崩れてしまった夫婦関係を修復し、よりよい関係を築いていけるようにするコツをご紹介します。
文/岡野あつこ
プライドは夫婦関係の修復の邪魔になる
パートナーとの関係性を良好に保ちたい、健全に築いていきたい、あるいは修復したいと思っているときに、ときに大きなネックになるのが「プライド」です。妻(夫)として自分なりに精いっぱいやってきたというプライドが邪魔をして、相手に仲よくしたいという意思を伝えることができずにいる人が少なくないのです。
たとえば、五十代の男性相談者Hさんの例です。Hさんは一流企業のエンジニアとして懸命に働いてきましたが、仕事に熱中するあまり家庭をおざなりにしていたツケが回ってきたとうなだれていました。家事はもちろん、子育ても妻に任せきり。妻から幾度も話し合いたいという申し出を受けていたのに「仕事で疲れているのだから勘弁してほしい」などといって跳ね除けていたといいます。
気づけば妻と子どもたち対Hさんという敵対関係が生まれていて、四十代で海外赴任を命じられたときにも、子どもの学校の問題があるからと家族はついてきてくれませんでした。
二年後に帰国してからは家庭に自分の居場所がなく、孤独感を抱いたことがきっかけで夫婦関係を修復しなければと思い始めます。
ところが自分は家族を養ってきたという自負が先立ってしまい、妻に頭を下げることができないと悩んでいたのです。
「そもそも妻は取りつく島がないといった感じで、話しかけても聞く耳をもってくれません。どうすれば対話のきっかけをつくることができるのでしょうか?」
と尋ねるHさんに私は「悩みを打ち明けてみる」ことを勧めました。「こんなこと君にしか言えないよ」と甘える作戦でいきましょうと。
期待されるとモチベーションが上がるという心理現象のことを「ピグマリオン効果」といいます。このピグマリオン効果を狙おうと企てたのです。
Hさんは「むずかしいかもしれない」と難色を示していましたが、「ちょっとやりすぎかなと思うくらいがちょうどいいのです。だまされたと思ってやってみてください」と促したところ、実行に移し、妻との対話に成功。
「がんばってきたつもりだけれど思うように出世できなかったことが悔しい。こんなこと君にしか言えないよ」と伝えると、それまで塩対応だった妻が身を乗り出して話を聞いてくれたばかりか、「出世なんてどうでもいいことよ」と寄り添ってくれたとのことでした。
Hさんのように対話を求めている場合、母性愛の強い女性に対しては「こんなこと君にしかいえないよ」といって甘えるのが有効ですが、プライドの高い男性に対しては「あなただからいうのよ」と頼るのがコツ。あえて弱みを見せることで相手に「放 っておけない」と思わせることができればしめたものです。
* * *
『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(岡野あつこ 著)
サンマーク出版
岡野あつこ(おかの・あつこ)
立命館大学産業社会学部卒業後、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験をもとに、91年に離婚相談室を設立。以来、「 離婚しないに越したことはない!」をモットーに 、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導く。夫婦問題研究家® 、パートナーシップアドバイザー 。カウンセラー育成にも力を注ぎ、「マリッジカウンセラー、夫婦問題カウンセラー養成講座」を開講。NPO法人日本家族問題相談連盟理事長。YouTube岡野あつこチャンネル更新中。