忙しく日々を過ごすなかで、いつの間にか夫婦の間に亀裂が生じ修復困難な状況になってしまっている場合、「離婚」を考え出すことでしょう。しかし、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導いてきた離婚カウンセラーの岡野あつこさんは、「離婚の8割はがんばれば修復できるケースだ」と言います。
そこで、岡野さんの著書『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』から、崩れてしまった夫婦関係を修復し、よりよい関係を築いていけるようにするコツをご紹介します。
文/岡野あつこ
自分のことを愛せない人が他者に愛されることは望めない
私のセミナーに参加したOさんは小さい頃から脚が太いことを気にしていて、物事がうまくいかないのも、脚が太いせいだと思い込んでいました。
周囲の人たちに「あなたのお姉ちゃんはスタイルがいいのにねぇ」などと心ないことをいわれ、強いコンプレックスを抱くようになったとか。
「脚が太いせいで、なかなか彼氏ができませんでした」「CAになりたかったのですが面接試験で落ちました。脚が太いからですよ」「夫に浮気されてしまいました。相手は脚のきれいな女なんです!」といった具合。
そして「先生、私、脚が太いせいで夫に捨てられてしまいそうなんです!」と訴えてきました。
Oさんのように夫婦関係がうまくいかなくなったり、修復がうまくいかない理由として、自分のコンプレックスを持ち出す人は少なくありません。
たとえば、夫のほうが若いという女性に多いのは年齢コンプレックス、玉の輿婚をした人に多いのは生い立ちコンプレックス、妻のほうが収入が多いという男性に多いのは年収コンプレックス……。
そうした人に出会うたび、私は著名な心理学者、アルフレッド・アドラーの〈コンプレックスに逃げてさえいれば、努力しなくても許される。しかしそれは安価な手品であり、ごまかしでしかない〉という言葉を思い出します。
私はOさんに、コンプレックスを言い訳にしないよう、脚痩せサロンに行くことという宿題を出しましたが、脚が太いことと夫婦問題に因果関係はありません。
諸悪の根源は「どうせ私なんて」という自信のなさ。自己肯定感が低い人は、ちょっとした夫の言葉にも必要以上に落ち込み、ちょっとほめられたくらいでは満足できません。いうなれば「かまってちゃん症候群」であることが、夫をイラつかせてしまうのです。
私も人生がままならず、自信を喪失することがありますが、そんなときは寝食も忘れて必死に勉強して難関校を突破した、学生のときの自分を思い出します。あのときだってがんばり抜いたのだから、きっと今度も切り抜けられると。
自己肯定感をアップするためには、輝いていた時代の友達と会って、キラキラしていた頃の思い出話をするのもいいでしょう。
あるいはいろいろな人に会ってほめてもらうのも一案。黙っていても誰もほめてくれないかもしれませんが、自分のほうから「いつも溌溂(はつらつ)としているね」とほめれば、大概は相手も「あなたこそ、いつも素敵」とほめてくれます。
やってみればわかりますが、自分がほめられたということだけが心に残りますので、自己肯定感を底上げすることができるのです。
「どうせ私なんて」と自分を卑下しながら、相手には好きでいてほしいと望むのは、あまりにも身勝手というものです。
そもそも自分のことを正しく愛せない人が他者に愛されることは望めません。すばらしい夫婦関係をめざすにせよ、夫婦関係を修復するにせよ、まずは自分が自分を好きになることが先決なのです。
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『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(岡野あつこ 著)
サンマーク出版
岡野あつこ(おかの・あつこ)
立命館大学産業社会学部卒業後、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験をもとに、91年に離婚相談室を設立。以来、「 離婚しないに越したことはない!」をモットーに 、3万8000件 以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導く。夫婦問題研究家® 、パートナーシップアドバイザー 。カウンセラ ー 育成にも力を注ぎ、「マリッジカウンセラー、夫婦問題カウンセラー養成講座」を開講。NPO法人日本家族問題相談連盟理事長。YouTube岡野あつこチャンネル更新中。