世界最高峰の食の都・京都。表通りでなく、一歩足を踏み入れた路地裏に、地元の人が通う小体で旨い店はある。その中でも、とりわけ新しくて、あまり知られていない食事処を選りすぐった。

最新美味処「京都は小体な店ほど面白い」

料理とお酒のより良い相性を追求する話題の新店

こぴゑ(下京区高辻猪熊町)

毛ガニと焼きマイタケ 焼きリゾット添え2000円。マイタケの旨味が染み出た出汁をたっぷりとかけた一皿。芽ネギの風味も効いている。日本酒は「八兵衛十五夜」900円。

開業からわずか1年という短期間ながら、評判を呼んでいるのが、『こぴゑ』である。興味深いのは、店主の橋本遼さん(41歳)と女将の知華子さん夫妻、そして、シェフの上田大樹さん(30歳)とソムリエの風里さん夫妻という、ふた組の夫婦で店を切り盛りしていること。店名はイタリア語でカップルという意味だ。

橋本遼さんは飲食店の業態開発を手がけ、上田大樹さんは、リッツカールトン京都や町場のイタリアンで長年腕を磨いた料理人。互いに独立を考えていたこともあって意気投合し、手を携え開業を目指した。

繁華街から離れた住宅街の一角、町家を改装した店舗は、木や土のぬくもりのある空間。知華子さんの親身な接客や風里さんの的確なワイン選びも相まって、客は友人宅を訪れたかのように、知らずしらず寛いでゆく。

料理はイタリアンを基本にしながらも、そこに和食やアジアン、中華などの要素も加えた独創性の高いもの。甘みたっぷりの毛ガニには、乾燥させて焼いたマイタケの出汁をかけ、それぞれの旨味を増幅させる。毛ガニの下には焼きリゾットを敷いて、サクッとした小気味よい食感を加える。

ほかにも鰻の蒲焼とゴルゴンゾーラチーズ、安納芋にチーズと大徳寺納豆を合わせるなど、その発想の領域は無限かと思うほど。定番料理も何品かあるが、いつ行ってもその日の仕入れを反映した季節感のある即興料理に出会える。

安納芋のすり流しスープ1200円。ストラッチャテッラチーズと大徳寺納豆がトッピングされる。
鰻の炭焼き1800円。自家製フォカッチャにゴルゴンゾーラをのせ、その上に鰻をのせたもの。イチジクの甘酸っぱさとともに味わいたい。

京都らしい町家で、味わったことのない料理と格別の酒で心地よく酔う。帰りたくないと思わされるひとときなのである。

築80年の町家の趣を生かした店舗。大きな暖簾が目印。左から上田風里さん、上田大樹シェフ、店主の橋本遼さん、女将の橋本知華子さんの4人。休日も一緒に食事に行ったり、旅に出たりするという。信頼感の深さが、料理や接客にも表れている。

こぴゑ

京都市下京区高辻猪熊町367
電話:050・3139・1491 
営業時間:17時~22時30分(最終入店) 
定休日:不定
交通:阪急京都線四条大宮駅より徒歩約10分 

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※この記事は『サライ』2022年10月号より転載しました。

 

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