世界最高峰の食の都・京都。表通りでなく、一歩足を踏み入れた路地裏に、地元の人が通う小体で旨い店はある。その中でも、とりわけ新しくて、あまり知られていない食事処を選りすぐった。
最新美味処「京都は小体な店ほど面白い」
パリの街カフェを思わせる小粋な料理と自然派ワイン
水上製作所(中京区 突抜町)
「パリのカフェのような光がたっぷり入る明るい場所で、料理やコーヒーを楽しめるお店を開きたかった」と話すのは、店主の水上智さん。福井県出身で、地元の飲食店に勤めた後、京都の人気店『カフェ コチ』に入店。その後、姉妹店のベーカリーカフェの立ち上げを任され、店長として腕を揮った。
「店で出すワインに魅せられ、いつか手作りの料理と自然派ワインの店をと思うようになり、ワインを学び始めました」と話す。
両店で10年の歳月を過ごし、令和3年、念願の自店を開業した。言葉通り、店で出すパンやスコーンのほか、ハムやベーコン、ソースなどもすべて手作り。たとえば、しっとりとしてほどよい塩味のロースハムは、豚のロース肉を塩漬けにしてから、低温で4時間かけ丁寧に作った一品。世界的に評価される京都のイタリアン『チェンチ』(左京区)の柚子胡椒を添え、ピリッとした辛みと香りで旨味を深める。
メニューには、「パイナップルとミントのマリネ フロマージュブランと富士酢」といった融合料理も並ぶ。バケットサンドやリゾット、カレーといった軽食もあるので、昼時に出かけるのもいいだろう。日曜には朝食も用意し、地元客だけでなく、近くのホテルに泊まる観光客を迎える。
朝から夜まで自然派ワインで料理を味わえる店の誕生は、京都美食の幅や奥行きを広げている。
水上製作所
京都市中京区突抜町793 2階
電話:075・286・7761
営業時間:13時~22時(最終注文21時15分)日曜は8時~11時(朝食)、13時~19時(最終注文18時30分)
定休日:火曜、不定休あり
交通:地下鉄烏丸御池駅より徒歩約5分
※この記事は『サライ』2022年10月号より転載しました。