古来、日本人は鬼の存在を信じ、暮らしにも取り入れ、ともに生きてきました。
神話・伝説から芸能、小説、マンガ、アニメ、ゲームにいたるまで、鬼が登場する創作物は多く、鬼は日本人の心に深く根ざしています。
江戸時代にも読本などに鬼は多く登場しました。浮世絵師、葛飾北斎も錦絵「百物語」や版本などで鬼を数多く描いています。
鬼才、北斎はどのように鬼をとらえ、表現したかを紹介する展覧会が開かれています。(8月28日まで)
本展の見どころをすみだ北斎美術館の主任学芸員、奥田敦子さんにうかがいました。
「北斎は、浮世絵師としては異例なほど、この世のありとあらゆるものを捉えようとしました。そうした北斎だからこそ、作品から日本の多種多様な鬼の概念を辿ることができます。今回、出品作から2点紹介します。
葛飾北斎『釈迦御一代記図会』六 暴悪を罰して天雷流離王が王宮を焼君臣を撃殺す図
釈迦の一生を描いた、北斎最晩年の本の一図です。暴悪な流離王は釈迦の一族を滅ぼし、天罰を受け地獄に堕ちます。その場面を左に天罰の電撃を落とす雷神、右に爆風のなか破壊される流離王の王宮を大胆に対比させ描いています。雷神は神ですが、古来鬼の様態を示すことが多いです。
葛飾北為「摂州大物浦平家怨霊顕る図」
源頼朝から刺客を放たれた義経は、逃亡の途中で遭難します。その史実が平家の怨霊によるとされ、さまざまな創作物が作られました。北斎門人の北為による本図もそのひとつで、三枚続の大画面に、嵐に翻弄される義経の船、長刀を手に鬼神のごとく襲いかかる平知盛らの怨霊が描かれた迫力に満ちた作品です。
本展ではこのほかにも北斎とその一門が描いたさまざまな鬼の絵を紹介します。会期中、講演会やイベントなども開催しますのでぜひお越しください」
怖いけれど見てしまう!! そんな鬼たちに会いに、ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
北斎 百鬼見参
会期:前期6月21日(火)~7月24日(日)後期7月26日(火)~8月28日(日)
※前期・後期で一部展示替えあり
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
電話:03・6658・8936
開館時間:9時30分から17時30分まで(入館は17時まで)
休館日:月曜日(ただし7月18日は開館)、7月19日(火)
公式サイト:https://hokusai-museum.jp/HyakkiKenzan/
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝