関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、会社を経営しながら大学の講師をしている俊夫さん(仮名・62歳)。2年前に結婚した妻(42歳)が、明らかに外出しているのに「家にいた」と嘘をつくことと、LINEを見たことで、浮気かトラブルを確信。素行調査のために私たちに調査を依頼。
【それまでの経緯は前編で】
昼から出かけて、慣れた様子でバーに入っていく
土曜日の朝10時から都内の閑静な住宅街にある俊夫さんの家の前で張り込みを開始。俊夫さんの知性と富を表現するような、よく手入れされた古い家で、ステキな存在感を放っていました。
妻が出てきたのは、12時。写真通り小柄で色白ではかない感じの女性です。白髪は栗色に染めており、ファーの襟がついたピンクのコートが愛らしい印象。バッグもフリルやリボンを多用したもので、15年ほど前に流行した“かわいい”を表現しています。このタイプのファッションは、男性にモテる。
妻は慣れた様子で電車に乗り、都心方面へ。浮気をしている人に特有のルンルンした感じはなく、通勤という感じの空気です。
40分ほどかけて、飲食店が入ったテナントに到着。階段を上がり、明らかに会員制のバーに入っていきました。店内を伺うことはできませんが、複数の男性と女性の話し声が聞こえる。
コロナ禍中に、アルコール提供が規制され、知人の店で知り合い同士が集まって早い時間から飲むというスタイルが増えましたが、どうもそのようです。
そのうちに、麻雀の音も聞こえてきて、男性が勝ったような雰囲気の声も聞こえてきました。
そうして、妻が出てきたのは、16時ごろ。近くのコーヒーショップに入り、窓際のカウンターに座って、行きかう人々を見ています。妻は男性ウケする雰囲気なので、店にいた男性グループは「あのコ、かわいくね」「絶対あれはデート前だよ」などとささやいていました。
20分ほどすると、がっしりした体型で、浅黒く日焼けした男性がやってきました。妻は「あ、どうも」という様子で立ち上がり、男性の腕に自分の腕を絡めます。
そして、予想通り、近くにある高級ラブホテルに入って行ったのです。
【妻が夫・俊夫さんに言えない秘密とは……次のページに続きます】