文・石川真禧照(自動車生活探険家)
1907年(明治40年)に日本初の「国産エンジン」を開発し、現親会社のトヨタよりも先に世に自動車を送り出したダイハツ。小さな車に関する技術力は世界上位の同社が新たにハイブリッド車を生み出した。
ダイハツの小型SUV「ロッキー」は2019年11月に発売された。新世代の車づくりの技術を生かした新型車は低価格と技術力の高さで人気を集める。その小型SUVにハイブリッド技術を導入した車種が加わった。ダイハツの小型車に対する技術力の高さには定評がある。それは親会社のトヨタも一目置いている。
ダイハツが初めて自動車を完成したのは1930年(昭和5年)。以来、小型車を中心に開発、製造している。ちなみにトヨタが自動車の第1号を試作したのは1935年(昭和10年)なので、車づくりの歴史はダイハツのほうが長い。さらにダイハツは一貫して軽自動車を中心にした開発を行なってきたので、小さな車づくりの技術に関しては世界でも上位に入る。
実際にトヨタがダイハツを傘下に収めてからは、トヨタの小型車はダイハツの技術力に頼っていることが多い。トヨタ「ライズ」は「ロッキー」のトヨタ版。開発、生産はダイハツが受け持っている。
小型車に適したハイブリッド
先進安全装備も快適装備もダイハツが主導して車づくりを行なっている。
新しくハイブリッド車を開発することになったときも、技術はダイハツが担当。ダイハツが得意とする小型車に最適なハイブリッド車を開発するにあたり重視したのは、小型車に適したハイブリッドだった。小型車なので電池やモーターは軽量、小型のほうが良く、車両価格もハイブリッドだからといって高額にはできない。車体も小型車基準の5ナンバーサイズを維持しつつ、効率のよいハイブリッド車はこうして完成したのだ。
街中でも高速でも高燃費を実現。行動範囲の広い人にはうれしい
ダイハツが「ロッキー」用に開発したハイブリッド技術は、新開発の小排気量ガソリンエンジンが発電を担当し、電力を電池に蓄える。その電池からの電力でモーターを動かし、駆動力として車を動かすという方式だった。この方式はすでに日産自動車が採用しているが、ダイハツは全長4m以下の小型車専用のハイブリッド車として実用化している。
もちろんこの技術の実用化は将来的にはダイハツが得意としている軽自動車のハイブリッド化も視野に入れていることは間違いない。
ロッキーハイブリッドに試乗してみる。発進ボタンを押し、変速機をDレンジに動かす。アクセルペダルを踏むと、軽快に走りだす。モーターの動力は最初から力強い。電池の容量は軽量化とコストを考えた結果、最小限に抑えられているので、モーターでの走行は低速域だけ。車速が上昇するとエンジンがかかり電池に充電を開始。その電力でモーターを動かす。この方式のほうがエンジンだけで走るよりも効率がよい。その効果はてきめんで、試乗中は街中でも高速でも18~30㎞/L近くまで走った。行動範囲の広い人にはうれしい小型SUVが登場した。
ダイハツ/ロッキー プレミアム G HEV
全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1070kg
エンジン:モーター:水冷直列3気筒 1196cc:交流同期
最高出力106PS/4372rpm〜6329rpm:82PS
最大トルク:17.3㎏-m/0〜4372rpm:10.7kg-m
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:28.0km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 36L
ミッション形式:電気式無段変速
サスペンション:前:ストラット式 後:トーションビーム式
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ドラム
乗車定員:5名
車両価格:234万7000円
問い合わせ先:お客様コールセンター 0800・500・0182
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2022年3月号より転載しました。