文/中村康宏、内本菜穂
2月3日は節分の日。恵方巻きを食べたり、豆まきを行い、厄を追い払う日本の伝統的な行事のひとつです。豆まきに使用される大豆は「畑の肉」と言われるほど栄養価も高く、日本人に馴染みのある食材です。今回はその大豆の栄養について解説します。
動物性食品にも劣らない大豆の栄養価
大豆たんぱく質
たんぱく質の栄養価の評価法として、アミノ酸スコアというものがあります。アミノ酸スコアは0〜100まであり、体内での合成が難しい必須アミノ酸をバランスよく含むものは数値が高くなり、100に近いもの程「質の良いたんぱく質」と評価する事ができます。大豆のアミノ酸スコアは100で、牛肉や卵といった動物性食品に引けを取らない良質なたんぱく質を含みます。
また、吸収率も良く、筋肉の合成を促す分岐鎖アミノ酸(BCAA)も豊富に含まれるため、体づくりにも効果が期待できます。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンの代謝産物である「エクオール」が女性ホルモンに近い働きをする事から、更年期症状を改善したり、骨形成を促し骨粗鬆症を予防する等の効果が認められています。※1(日本醸造協会誌 2008)
その他にも、薄毛を引き起こす男性ホルモンである「ジヒドロテストロン」の生成を抑制し、特にAGA(男性型脱毛症)による薄毛の予防に効果が期待されています。
大豆レシチン
大豆レシチンは以下のような体にいい働きがあります。
・水に溶けにくい脂溶性ビタミン(A・D・E・K)を包み込み、腸での吸収を促進します。
・肝臓から中性脂肪を運び出し、脂肪肝の予防・改善に効果的です。
・「アセチルコリン」という神経伝達物質の元となり、脳の働きを活性化させ記憶力を高め、認知症のリスクを低下させます。
・動脈硬化の原因となるLDLコレステロールを低下させる効果も期待できます。
大豆サポニン
強い抗酸化作用があり、脂質の酸化を抑え、代謝を促すため、血液中のコレステロール値を下げることができます。
オリゴ糖
腸内でビフィズス菌や乳酸菌等の善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす事で腸内環境を整えてくれます。
大豆製品の栄養成分や特徴
大豆を使った食品は数多く販売されていますが、同じ原料を使ったものでも、製造方法等の違いで栄養成分にも特徴が出てきます。
それぞれの特徴を知り、日常の食事の中でうまく使い分けてみましょう。
納豆
ゆで大豆に納豆菌を加え発酵させたものです。脂質代謝を促すビタミンB2が、ゆで大豆のおよそ7倍含まれる他、血液凝固作用のあるビタミンKも豊富に含まれます。
また、納豆菌は胃酸にも強い為、生きたまま腸内に届き善玉菌を活性化させ、腸内環境を整えてくれます。
※血液をサラサラにする薬(ワーファリン等)を服用中の方は拮抗作用のあるビタミンKを含む納豆は控えましょう。
豆腐
豆乳をそのまま固めたのが「絹ごし豆腐」、豆乳の上澄みや余分な水分等を除き、重しで固めたものが「木綿豆腐」です。木綿豆腐は余分な水分等がしぼり出されるため、絹ごし豆腐に比べ、たんぱく質やカルシウムが豊富に含まれます。どちらも水分量はおよそ90%程あるので消化されやすく、胃腸の調子や体調がすぐれない時のたんぱく質補給としても活用できます。
豆乳
大豆に水を加えてすり潰し、煮て濾したものです。普通牛乳と比べるとカルシウムは約1/3となりますが、脂質量は普通牛乳に比べ約1/2に抑えられ、鉄分や葉酸も豊富に含みます。
大豆たんぱく質は緩やかに吸収されるため、腹持ちが良く、間食の代わりに豆乳を活用すれば、体を構成する栄養素を補いつつ、余分な菓子類等を控えられ、ダイエット効果も期待できます。
高野豆腐
豆腐の製造過程で冷凍し、乾燥させたものです。ゆで大豆よりもカルシウムが豊富で、動脈硬化を予防するαリノレン酸を多く含みます。また、水分が抜け、栄養素が凝縮しているので、豆腐よりも少ない量で同じような栄養素が摂取できます。その結果、食事量が減らせるようになるので、栄養不足になりがちな高齢層の栄養補給としておすすめな食材です。
きな粉
大豆を炒って挽いた粉で、香ばしい風味が特徴です。大豆に含まれるたんぱく質やビタミン・ミネラルがそのまま摂れる他、食物繊維も豊富です。食パンやヨーグルトにきな粉をかけるだけで、手早くたんぱく質や食物繊維が摂れるので、仕事が忙しく、朝は欠食しがちな方や、菓子パンのみ等、栄養素に偏りがある方は活用してみてはいかがでしょうか。
近年、肉の代替え食品として「大豆ミート」に注目が集まるほど重宝されている大豆。栄養価だけでなく様々な健康効果にも注目して、肉や魚と同じようにメインディッシュとして料理のレパートリーを増やせると良いですね。
文/中村康宏
医師。虎ノ門中村クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。一般内科診療から健康増進・アンチエイジング医療までの幅広い医療を、予防的観点から提供している。近著に「HEALTH LITERACY NYセレブたちがパフォーマンスを最大に上げるためにやっていること」(主婦の友社刊)がある。
【クリニック情報】
虎の門中村クリニック
ホームページ:https://toranyc.com
住所:東京都港区虎ノ門3丁目10-4 虎ノ門ガーデン103
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