取材・文/ふじのあやこ
新型コロナの流行に伴い、私たちの生活は激変した。この連載ではコロナ禍よってもたらされたさまざまな変化により、人生が変わってしまった人たちに話を伺っていく。
優子さん(仮名・39歳)は高校時代から付き合っていた男性と27歳のときに結婚。夫婦で妊娠を望むも夫側に不妊の原因が見つかり、3年を不妊治療に費やすも夫婦関係が破綻してしまわないためにも治療継続を断念します。
【~その1~はコチラ】
男としてのプライドを封印した分、仕事に対するプライドが高かった
治療をやめるときに夫婦で今後のこともしっかりと話し合い、夫婦のスキンシップも徐々に前のように戻っていったそう。そこから約2年後、未知なるウイルスとして新型コロナウイルスが日本で流行。コロナ禍が仕事に直撃したのは優子さんではなく元夫のほうだった。
「夫はインバウンド事業をメインで行う企業で働いていて、外国人が日本に来なくなったことで仕事が一気になくなっていったみたいです。1回目の緊急事態宣言前にリモートワークになり、そこから週5勤務が週4,週3と減っていきました。女性に優しく、『男だから』と威張ることがなかった夫でしたが、仕事に対するプライドは大きかったようで、落ち込みは酷いものでした。
私から見て、夫は仕事がそこまでできるタイプではなく、断れないからなのか理不尽な量を家に持ち帰っても仕事をしていました。報酬ではなく、頼られていることで仕事の充実感を得ていたんだと思います。以前なら仕事の話を私にもしてくれていたのに、家で仕事をするようになってから、聞いてもこたえてくれなくなったのです」
最初に言っていた『“コロナ離婚”という言葉が流行った頃はまったくの他人事』だった理由は、外で働く優子さんのために元夫は家事を率先して行ってくれていたから。以前のようにお金を稼げなくなったことはまったく気にならなかったという。
「よくメディアで取り上げられていたコロナ離婚の原因は、ずっと家にいるくせに家事をまったくしない夫、という感じだった。私の夫にはまったくそれが当てはまらず、元々掃除はしてくれていましたが、得意じゃない料理もしてくれるようになりました。
そんなときに夫はよく『こんなことぐらいしかできないし』と少し自分を卑下する発言をしていたんです。私が今までしていたことを『こんなことだと?』と少しイラっとはしましたが、根本に仕事に対するプライドが壊れたことが原因だなんて考えは、そのときはまったく及びませんでした」
【元夫が抱く「被害者意識」はどこから? 次ページに続きます】