取材・文/ふじのあやこ
新型コロナの流行に伴い、私たちの生活は激変した。この連載ではコロナ禍よってもたらされたさまざまな変化により、人生が変わってしまった人たちに話を伺っていく。
隆司さん(仮名・37歳)は恩があった前の職場の社長にお願いされ子会社に出向し、その後完全に子会社所属に。新しい職場では隆司さん自身の人間関係はうまくいっていたものの、上と下の衝突が多く、板挟み状態が続いていた。
【~その1~はコチラ】
クビになった社員の仕事に加え、新規事業を負担することに
コロナ禍によるリモートワークになったことでサボる社員と1人で黙々と作業を続ける社員との差が大きくなっていく。社員の面談なども隆司さんは担当しており、面談内容をまとめたレポートや各社員の業務実績から、実績の伴わないある社員の給料が大幅カットされることに。その該当社員は仕事を辞めていき、その仕事は隆司さんが背負うことになる。
「人によってリモートの向き、不向きって出てくるじゃないですか。私もリモートになったことで集中力が続かずに仕事に時間がかかるタイプでしたし。その不向きが顕著に出てくる人がいて、彼には頻繁に連絡して進捗をチェックするなどしていたんですが、どうもなめられているのか私の前でもまったくやる気を見せないんです。
このことを少しオブラートに包んで社長に仕事の実際の進捗とともに報告していたら、『最終通告』だと彼の給料は1/4カットされることになったんです。もちろんすぐにではなく、現在担当している仕事を遂行しない場合などの条件がありました。でも、それを聞いた彼は『じゃあ辞めます』と。そうなったら両者もう一方も引かずに、私が彼の仕事をとりあえず引き継ぐことになったのです」
社員の士気だけでなく、コロナ禍によって業績も悪化。複数あった得意先は、リモートワーク導入などを含めたシステムを一括で受託する大手に流れ、細々した仕事の受注が多かった隆司さんが勤める会社との契約を打ち切った。そこで新たな顧客を狙うべく新規事業が立ち上がり、その担当も隆司さんが抜擢されてしまう。
「決して仕事ができるわけじゃないですよ(苦笑)。社長からしたらただいいように使えるだけだと思います。実際にプレゼン資料を作ったり、予算を組んだりは得意じゃなかったですから。
今までの仕事に加えて新たな資料作りがスタートして、もちろん他の社員のまとめ役もそのまま。自分でもオーバーワークになってきているのがわかっていましたが、『できません』なんて言える状況ではなくて……」
【「自分が仕事を辞めると会社は回らない」と思い込んでいた。次ページに続きます】