文・写真/東リカ(海外書き人クラブ/アメリカ在住ライター)

90歳で現役のダーセル15世(写真提供: Darcelle XV)

筆者の暮らすオレゴン州ポートランドで「レジェンド」と呼ばれる、ダーセル15世は、1930年11月生まれ。50年以上のキャリアを誇る90歳の現役ドラァグクィーンです。

2018年には、ギネスブックに「最年長の現役ドラァグクイーン」としても記載されました。そんなダーセルの生き様と元気の秘訣についてご紹介します。

ダーセル15世の誕生まで

ウォルター・コール氏の自伝「Just Call Me Darcelle」

「ドラァグクィーン」とは、女装をした男性パフォーマーのこと。「ダーセル15世(以下ダーセル)」を演じているのは、ウォルター・コール氏です。

コール氏は、高校を卒業と同時に、当時付き合っていた女性と結婚。定職につき、家を買い、一男一女をもうけて「普通に」暮らしていました。

昼間の仕事を続けながらも、いずれは独立したいと、ポートランドのダウンタウンでカフェを開店したことから、転機が訪れます。当時、まだ珍しかったエスプレッソを提供するモダンなカフェは若者の人気を集めたのですが、市の都市再開発で立ち退きが言い渡されてしまいました。そこで、新たな場所でジャズクラブを始めたものの、そこでも再度立ち退きが言い渡され、ジャズクラブは、アイスクリームパーラー、そして、現在の「ダーセル15世ショープレイス(The Darcelle XV Showplace)」となるナイトクラブと場所と形を変えていきました。

午前2時に閉店という夜の仕事でこれまでとは違う人々と交流する中、コール氏は、男性に惹かれる自分に気づきます。今でこそ、多様性を認める気風の強いポートランドですが、この当時、同性愛は「ソドミー法」で禁止されており、まだまだセクシュアル・マイノリティへの風当たりは強く、日陰の存在でした。

LGBTQ*社会運動が始動しつつある中、コール氏も、ゲイであることを隠す自分に耐えられなくなり、ついに妻にカミングアウト。当時12歳の長男と10歳の長女も母の電話を立ち聞きして、父の決意を知ってしまいます。そのショックから一時は絶縁状態になってしまいましたが、後に和解し、現在もより真摯な良い関係を築いているそうです。

ゲイ・プライドパレードでグランドマーシャルを務めるダーセル(写真提供:Darcelle XV)

そんなコール氏が初めて女装したのは、37歳の時。

そのきっかけは、50年以上、連れ添うことになる男性との出会い。ナイトクラブを盛り上げるために、彼と共に自らドラァグクイーン「ダーセル」としてステージに立つようになり、次第にLGBTQコミュニティの中心的な存在となっていきました。

ダーセルは、カミングアウト以降、LBGTQコミュニティが集まるナイトクラブ、キャバレーの経営はもちろん、各種のチャリティーイベントや取材に参加。自分が大勢の前にドレスを着て姿を現し、忌憚なく発言することで、コミュニティをサポートする資金を集めることはもちろん、コミュニティの広告塔としても貢献してきました。

*LGBTQ(L: レズビアン(女性同性愛者)、G: ゲイ(男性同性愛者)、B: バイセクシュアル(両性愛者)、T: トランスジェンダー(心と体の性が一致していない者)に加えて、Q: 自分の性がわからないという「クエスチョニング」と性的少数者を表す「クィア」のQを加えた言葉で性的マイノリティ全般のこと

【全米一歴史のあるダーセル15世のキャバレー。次ページに続きます】

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