文・石川真禧照(自動車生活探険家)
小さくてきびきび走る車づくりを得意としてきたホンダが、未来的な電気自動車を開発した。圧倒的な小回りのよさで、狭い路地や車庫入れ時にもストレスは皆無。大画面でテレビを見ることもできるのだ。
昨年10月から発売を開始した「ホンダe(イー)」は、久々にホンダらしい独創性にあふれた車として注目を集めている。車名の「e」は、エレクトリック(電動)の頭文字。電気の力でモーターを回し、車を動かす電気自動車(EV)だ。
外観は未来的でありながら、どことなく懐かしさを呼び覚ます形状である。かつての名車「シビック」や「N360」といった、ホンダが得意としてきたスモールカーを思わせる丸目のヘッドライトがかわいらしい。
内装は、運転席、助手席の前面に広がる大型液晶パネルが特徴的だ。大胆なデザインで、最近のホンダ車とは一線を画している。
小さくて独創的なEV
電気自動車といえば、ここ数年、世界的に話題となっているのが、米国・テスラ社だ。テスラは、大量の電池を搭載し、大型で高級な電気自動車をつくっている。最も安価な「モデル3」は、カタログ上の航続距離400km以上を誇るが、全長は約4.7mとやや大きく、価格は500万円を超える。
また、日本では日産が2010年に世界で初めて量産化に成功した電気自動車「リーフ」がある。こちらも多くの電池を搭載し、航続距離は300km以上を誇る。車体全長は約4.5m、一般的なセダンと同等のサイズだ。
一方のホンダeは、街乗り向けで、全長は約3.9m。大人4名が楽に乗れ、航続距離は283km(今回取材したアドバンスは259km)と充分に走る。ハンドルを切ると小気味よく曲がり、運転も楽しい。ホンダらしい独創性を強烈に感じさせる、まったく新しい車である。
後輪駆動の良さを活かしスポーツカーのように走る
ホンダeは、電気モーターなどの駆動部品を車体後部の床下に収め、後輪を駆動する。前部ボンネットにモーター(エンジン)や変速機などを収める前輪駆動車はハンドルをあまり大きく切ることができないのだが、ホンダeは後輪駆動にすることで、片側一車線の6m幅道路でもハンドルの切り返しをせずに、1回でUターンできる性能を達成した。最小回転半径は4.3m(リーフは5.2m)。
後方確認は、ミラーの代わりにカメラを用い、画像が前方液晶画面に大きく映し出される。これが違和感なく、とても見やすい。
満充電の状態で走行できる距離は、液晶画面上で「195km」(※充電前までの走行状態を基に算出するため、カタログ値と異なる。)と表示された(カタログ上の航続距離は259km)。エアコンをかけると走行可能距離が15km以上減少した。高速道路で100km/h近くで走行すると、走行可能距離はどんどん短くなるが、街乗り中心であれば問題はなさそうだ。
一方、スポーツモードに設定すると、カーブが連続する地形でもきびきびと鼻先が向きを変える走りを楽しめる。このあたりの車づくりが、いかにもホンダらしい味付け。電気自動車でもスポーツ心は忘れられていなかった。
ホンダ/ホンダe アドバンス
全長× 全幅× 全高:3895×1750×1510mm
ホイールベース:2530mm
車両重量:1540㎏
モーター:交流同期/60kw
最高出力:154PS/3497〜10000rpm
最大トルク:32.1kg-m/0〜2000rpm
駆動方式:後輪駆動
一充電走行距離:259km(WLTCモード)
動力用主電池:リチウムイオン電池/192個
ミッション形式:電気式無段
サスペンション:前・後:ストラット式
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員:4名
車両価格:495万円(税込み)
問い合わせ先:お客様相談センター 電話:0120・112010
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2021年2月号より転載しました。