文/山下隆盛

「持ち家リスク」って本当? 家を長持ちさせると老後資金がこんなにたまる!

老後資金に余裕を持ちたいなら、持ち家に住み続けるのが一番

自分の家を建てるのは、一生に一度の大きな買い物です。
かなりの決意をして買われた方も少なくないのではないでしょうか。
それなのに、最近では「持ち家リスク」という言葉が聞かれるようになりました。
持ち家は気軽に売買できないし、貸出しもできない。資産価値もすぐに落ちるし、リフォームなどで維持をするのにもお金がかかる。持っていても資産上のリスクでしかない、というわけです。
持ち家を持っているであろう、読者の方。そんな言葉に惑わされて不安を感じなくても大丈夫です。
確かに資産価値はすぐに落ちますし、貸出しもできないし、高くは売れないかもしれません。
しかし、先の時代を見据えれば、「持ち家」はまったくリスクではありません。
むしろ、老後資金に余裕が出るのは、ローンを支払い終えた持ち家に長く住み続ける人です。
なぜなら、ローン終了後の家に住み続ける間の住宅費が、かからないからです。

たとえば、夫が65歳、妻が60歳の夫婦が、持ち家を手放し、2人で家賃12万円の賃貸住宅に住んだとすると、15年で、約2200万円かかります。
そのとき、夫は80歳、妻は75歳。
平均余命は、夫は約8年、妻は約15年もあります。
それからも妻が同じ賃貸住宅に15年間住み続けたとしたら、家賃と更新料でさらに約2200万円以上支払わなければなりません。

これがローンを支払い終えた持ち家に住んでいたら、かかるのはリフォーム代だけ。25~30年間家を長持ちさせるために大がかりな「アンチエイジングリフォーム」をしたとしても1000万円~1900万円ぐらいでおさまるでしょう。

リフォームをするためのお金がないという場合でも大丈夫。

マイホームに住み続けながら、その自宅を担保に金融機関からお金を借り、契約者が死亡、もしくは契約期間が満了したら、自宅を売却して一括返済する「リバースモーゲージ」を使って借りるという手もあります。
いずれにしても、「アンチエイジングリフォーム」をして持ち家に長く住み続ければ、かなりのお金が浮くことは、わかっていただけたでしょうか。

一方で、リフォームも何もせずに、家がボロボロになってしまって、住めなくなったり、住みたくなくなったりしたら、その恩恵にあやかることができなくなります。
つまり、家をいつまでも長持ちさせる「アンチエイジングリフォーム」が、老後資金に余裕を持つためには必要なのです。

いらなくなった部屋も、それほど邪魔な存在ではない

「長く住み続けるといっても、子どもたちが出ていってから、広い家に夫婦2人で住むのはすごくもったいない気がする」という方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、別に空いている部屋があるからといって、余計な資金がかかるわけではないのです。
単純に、使っていないところがあるという事実が、なんとなく損をしているような気にさせてしまうだけなのです。

「掃除が大変!」と感じるかもしれませんが、月に一度の掃除は実はとてもいい運動になります。
掃除機がけも、モップがけも窓ふきも、ウォーキングよりも消費カロリーが高いといわれている立派な運動です。

それに、空いている部屋は、自分の趣味に使ったり、収納部屋に利用したり、いろいろな使い方ができるはずです。
空き部屋を忌み嫌うのではなく、楽しみが広がると前向きにとらえれば、むしろ余った部屋が多ければ多いほど、より豊かな人生が待っているともいえます。

きれいな家だから、人が集まる! さびしい老後とサヨナラ

空き部屋があるから、孫たちも好きなだけ泊まっていける

「年を重ねると、久しぶりに子どもが孫を連れて帰ってきたときに、本当に幸せを感じるんですよね」

最近、会ったお客さまが、こんなことを言っていました。
息子や娘が結婚をすれば、自分の子どもだけでなく、その伴侶や孫も一緒に帰ってくることになります。
そんなときに、息子・娘の家族が遊びに来たくなるのは、どんな家でしょうか?
ボロボロで居心地のよくない家では、足も遠のきがちになります。
特に子どもは正直ですから、孫の顔を見れば、心から楽しめているかどうかはすぐにわかるでしょう。
また「おじいちゃん、おばあちゃん家に行く」と言っても、「あんなボロボロなところ嫌だよ」と言って嫌がることもあるでしょう。

きちんと手入れされて、きれいにリフォームをした家なら、孫のほうから「おじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行きたい」と催促されるに違いありません。

きれいな家には自然と人が集まり、幸せな笑顔が絶えないものです。
そう考えると、持ち家を手放してまで部屋の数を減らした賃貸住宅に移るのは、もったいないというほかありません。

息子・娘の家族が家を訪ねてきても、そもそも泊まる部屋がなければ、日帰りするしかなくなります。
一方、持ち家にそのまま住んで、空き部屋を残しておけば、遠くに住んでいて年に数回しか会えない家族との団らんを心ゆくまで楽しむことができます。
持ち家をリフォームして、きれいに保ち、そこに住み続けるほうが、のちのちの幸せにもつながりやすい。
それが、日々のお客さまとのやり取りから得た、私自身の実感です。

猛威を振るう風水害から、生活と財産をしっかり守る

日本の家は、雨水への対策が絶対に欠かせない

近年猛威を振るい続けている台風、そしていつ起こるかわからない地震。
自然災害だから、どうしようもないと考えるのは、早計です。
災害による被害は、アンチエイジングリフォームをするかしないかによって、大きく変わる可能性があります。
簡単に説明すると、私が考えるアンチエイジングリフォームとは、主に雨水などの水分や湿気から家を守るためのリフォームです。

日本には四季があり、季節の変わり目には梅雨や秋雨といった長雨が降ります。
国土交通省の発表によれば、日本の年平均の降水量は、なんと世界平均の約2倍にも達するそうです。
木が多く使われている日本の住宅にとって、最大・最悪の敵は水です。

水が柱に染みこんだり、湿気が残ったりすると、柱が腐敗して弱り、家の耐久性がガクっと落ちてしまい、台風・地震などで大きな被害を受けやすくなるのです。

そのため、特に雨がよく降る日本では、家を長持ちさせるためには雨水への備えが欠かせず、私が考えるアンチエイジングリフォームはこの対策が主になります。

日々のメンテナンスこそが、生活と財産を台風から守る最善の備え

たとえば、「令和元年房総半島台風」では、屋根が吹き飛ぶなど、屋根材の被害が目立ちました。
大きな被害があった家の屋根のほとんどは、2001年に業界団体連合会が発行した瓦屋根標準設計・施工ガイドラインに準拠していなかったといわれています。

しっかりとしたメンテナンスをしていれば、準拠しないままということはあまり考えられません。
つまり、新築されてから長い間、メンテナンスやリフォームをしていない家である可能性が高いのです。
新築から数年間ならともかく、20年以上もメンテナンスをしなければ、普段の雨でも不都合が生じるかもしれず、ましてや相手が強大な台風では大きな被害につながったのも無理はありません。
別に、これは、歴史的な台風に限った話ではありません 。

台風が通過したら、大体、屋根がはがれたといったご連絡を受けます。
周りを見渡して、それほど被害がなくても、その1軒だけ瓦がはがれているなどの被害を受けているのです。
そういう家は、十中八九、雨水などが長年浸水して、屋根が傷んでいます。
台風への備えに、特別な対処法があるわけではありません。
唯一にして最善の備えは、日ごろから浸水を防ぎ、家を丈夫に保ち続けるメンテナンスをすることなのです。
つまり、アンチエイジングリフォームこそが、災害への対策となるのです。

「高齢引っ越し」のリスクがなくなる

本当に家を手放して大丈夫?「高齢引っ越しのリスク」に注意

今や、「人生100年時代」といわれています。
つまり、住まいについても、100年生きることを見据えて、プランニングをしなければならない時代になったということです。

長持ちする家に住むメリットはたくさんありますが、「高齢引っ越しのリスク」がないこともその1つです。

たとえ売るつもりがなくても、メンテナンスもリフォームもしなければ、建ててから早ければ10年で傷み始め、20年過ぎればボロボロ、30~40年ほどで家はいろいろなところに不具合が生じ、そのまま住み続けるのが難しくなってしまいます。

「建て替えるのにはお金がかかるし、家を売って、どこか便利な場所に賃貸住宅を借りて暮らせばいいじゃないか」
と、考える人もいるかもしれません。

もし30歳前後で家を建て、30年間住んで、家を手放したとすると、このときに60歳前後です。
この場合、平均余命から考えると、男性で23年以上、女性で29年以上、賃貸住宅で過ごすことになります。
ずっと同じ賃貸住宅に住み続けられれば、運がいいといえるでしょう。

しかし、賃貸住宅の借主は、非常に不安定な立場であることを覚悟しておかなければなりません。
たとえば、建物の老朽化など、家主の都合で立ち退きを求められることもあります。
そうなると、また引っ越しをしなければならないのです。
物件を探し、入居のための初期費用を支払い、業者に頼んで引っ越しをする。

そのとき、一体、何歳になっているでしょうか? 
70 歳? ひょっとしたら、80歳で「そのとき」を迎えるかもしれません。

70歳や80歳で引っ越しをするなど、想像するだけでも、疲れてしまいます。
もちろん、お金の心配もしなければならないでしょう。
今の家に住み続ければ、こうした苦労は一切せずにすむのです。
ただし、そのためには、「長く住み続けられる家」を持つ必要があります。

家を使い捨てにしてしまうのは、あまりにももったいない話です。
家を大切にすることは、自分や家族の将来を大切にすることだと考え、家のリフォームをきちんと行っていれば、高齢引っ越しの心配もありません。

住むところがない!「漂流老人」のリスクを避けるには?

ある程度の年齢に達してから家を手放したときに生じるリスクは、ほかにもあります。

それは、「漂流老人」のリスクです。

お金があっても住むところがない高齢者の住宅難民は「漂流老人」といわれ、今、問題になっています。
「高齢引っ越し」で苦労したとしても、満足のいく住まいにすぐに入居できれば、まだ幸せだといえるでしょう。

そもそも、階段を上って部屋に行かなくてはならないところはダメ、大きな段差があるところはキツいなど、高齢者の部屋選びには、特有の条件がそれなりに加わってきます。

さらにいえば、高齢者は、健康状態や年齢などの理由から、賃貸住宅への入居を敬遠されることが少なくありません。

ましてや一人暮らしともなると、家主が孤独死や重病、認知症の発症といった事態を心配して、賃貸契約を結ぶのが難しくなりがちです。

また、一度は入居できても、更新時に間接的に退去を望まれることもありえます。
仲介業者や貸し主によっては、年齢や保証人がいないことを理由に、契約更新のできない定期借家契約を条件とするかもしれません。

住む家がなかなか見つからない。

住む家がないかもしれないという不安に苛まれる。
結果的に、満足できない賃貸住宅に住まざるをえない。

「高齢引っ越し」は、こうした現実に直面します。
超高齢化社会を迎え、対策がとられる可能性もありますが、それでも街中などの人気エリアの物件を高齢者が借りにくい状況は続くかもしれません。

もちろん、家を手放さなければ、「漂流老人」にならずにすむはずです。
そして、もし何の不具合もなく、快適に過ごせる家だったら、売ってしまおうなどとは考えないでしょう。
つまり、アンチエイジングリフォームをして「長く住み続けられる家」を持つことは、「人生100年時代」を安心して暮らすための重要な布石にもなるのです。

山下 隆盛 /ヤマテック株式会社代表取締役社長。一般社団法人木造住宅塗装リフォーム協会(国交省認定団体)理事。NPO法人外装エコロジーシステム理事長。建築士。ファイナンシャルプランナー(FP)。1969年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後、半導体業界へ就職。1998年に父親が起こしたばかりのヤマテックに入社。外装工事部門を立ち上げ、現在、神奈川県の県央エリアでは、外壁サイディング・屋根の施工数NO.1企業へと成長させる。長年、家のアンチエイジングのためのメンテナンスリフォームを提唱。さらに、外壁サイディング廃材の有効的な利用法を考えるNPO法人外装エコロジーシステム理事長を務めるなど、SDGsにも積極的に取り組む 。

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