最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか、「読めるけれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもありますよね。
動画を見ながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
先日、知人から「政局で椿事が起こりましたね」というメールを受け取りました。はて、この「椿事」、どう読むのか、なんのことだろうと思いました。そこで詳しく調べてみました。「脳トレ漢字」第10回目は、「椿事」をご紹介します。
脳トレ漢字の動画を見ながら“読んで書く”ことで、記憶力を鍛えながら、漢字への造詣を深めてみてください。
■「椿事」は、なんと読む?
木の名前、“椿”が入ったこの熟語、「椿事」。読み方に心当たりはありますか? 「椿」は木の名前という意味の他にも、「思いがけないこと」という意味があるのですが…。
正解は…
「ちんじ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「1.珍しい出来事。 2.思いがけない重大な出来事。一大事」と説明されています。「珍事」とも書きますが、特に(2)の意味を表す際には「椿事」が用いられますよ。
ではなぜ、「椿事」と書くようになったのか。由来についてご説明をいたしましょう。
■「椿事」の由来とは?
古くから使われているのは「珍事」であり、「椿事」と使われるようになったのは、日本における近世以降のことです。
由来については諸説あるので、その中から2つをご紹介しましょう。
1つ目は、誤用が由来であるという説。もともとは「樁事(とうじ)」と書くはずが誤って、「椿事」になったというもの。ちなみに、「樁事(とうじ)」の「樁」は「日」の部分が「臼」になっています。「樁事(とうじ)」は事柄を数える際に用いられるもの。そう考えると、説得力もありますね。
2つ目は、「椿」は『荘子』に書かれている、伝説中の長寿の大木「大椿(だいちん)」を指すことに由来しているというもの。大椿は、8千年を春とし、8千年を秋として、人間の3万2千年がその1年にあたるという大木。花を咲かせることは滅多にないことから、珍しいことを指すようになったというものです。
■他にもある、「椿」を使った漢字
「椿事」の他にも、「椿」を使った漢字は多く存在します。以下に、ご紹介しましょう。
・椿寿(ちんじゅ):長生きをすること、長寿。先ほどご紹介した「大椿」に由来します。
・椿庭(ちんてい):父のこと。
・椿萱(ちんけん):父と母のこと。「椿」は長寿の木で父に例え、「萱(わすれぐさ)」は主婦の部屋近くに植えるので、母に例えられたことに由来します。
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いかがでしたか? 今回の「椿事」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 最近、気候変動しかり、新しい生活様式しかり、「椿事」が様々な分野で起きていますね。これまでは、想定外の出来事と表現していましたが、これだけ「椿事」が多くなってきますと、もはや「想定外」では済まされないのかもしれません。となれば、やはり、日頃からの備えが重要となってくると思われます。
来週をお楽しみに。
文/京都メディアライン
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