京都「琵琶湖疏水」の通船が来春復活!127年の歴史薫る夢の水路を行く

取材・文/末原美裕

京都の水道から流れる水は、どこから来ているか知っていますか? じつは滋賀県にある琵琶湖から届いているんです。

琵琶湖から毎日約200万トンの水が京都へと送られ、飲料水や農業用水、山県有朋氏の別荘無鄰庵や平安神宮などの庭園用水として活用されています。その水を通す水路が「琵琶湖疏水」です。

琵琶湖疏水は、第1・第2の二つの疏水からなります。そのうちの「第1琵琶湖疏水」は、明治23(1890)年に竣工してから127年の歴史を持ち、今もなお京都の暮らしを支えているのです。

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当時としては日本最長のトンネル工事を含む琵琶湖疏水の建設は、一年分の国家予算に匹敵する巨額の費用と、約5年という歳月を費やしました。特筆すべきは、当時一般的であった外国人技術者の助けを借りることなく日本人のみの力で造られたこと。さらにこの大プロジェクトの技術責任者として抜擢されたのは、工部大学校(現在の東京大学工学部)を卒業したばかりの若き土木技師・田邉朔郎氏だったというのだから驚きです。

夜に作業員を集めて技術指導をし、次の日の昼にはそれを現場で実践する−−−努力というだけでは足りない、若くたぎる情熱のようなものが、難工事を推し進めていったのでしょう。

工事中の大津運河の様子。荷車や牛車で土砂を運んでいました。

そんな琵琶湖疏水を巡る通船が、67年ぶりに2018年3月に復活します。滋賀県の大津を起点に山科、蹴上へ。明治時代、多くの人々が水路に託した夢の軌跡を感じられる船旅が味わえます。

そんな琵琶湖疏水の通船に、一足先に乗ってきました。

疏水沿いには3のトンネルがありますが、各トンネルの入り口には「扁額」と呼ばれる石の額が掲げられています。これらは伊藤博文氏や山県有朋氏など明治を代表する政治家らが揮毫した大変貴重なものです。

第一トンネル東口洞門の扉上には伊藤博文の扁額には“様々に変化する風光は素晴らしい”という意味の「気象萬千」の四字が刻まれています。

第一トンネルは全長2.4km。ゆっくりとした船の速度を鑑みるととても長く感じますが、出口には疏水からの眺めをより一層美しく感じられる景色が広がっています。

蹴上下船場には、モダンなレンガ造りが特徴の旧御所水道ポンプ室が隣接しています。設計には京都国立博物館などで知られる建築家・片山東熊氏が携わりました。

このポンプ室は京都御所で一番高い紫宸殿の屋根よりも高く放水できる施設になっています(※内部見学はできません)。

旧御所水道ポンプ室

琵琶湖疏水が建設された背景には、明治維新後の東京への事実上の遷都により、活気をなくした京都を再び繁栄させるという大きな目的がありました。今、京都は日本の魅力である“和”を体現するかのように美しくも繊細な魅力を持って、季節に関係なく、多くの人々の心を捉え、迎えています。

今回、「琵琶湖疏水」の通船に乗って川の流れに身を委ねるうちに、先人たちの想いや歴史を噛み締め、先人たちも見ていたであろう美しい季節の移ろいを感じることができました。

建設当時、地面を固めるために植えられた桜の花と楓の紅葉が、四季を通して疏水の旅の情緒を盛り上げてくれることでしょう。まずは琵琶湖疏水が一番華やぐという、桜の季節の到来が待ち遠しい限りです。

【琵琶湖疏水船】
運行予定期間:2018年3月29日から11月28日までの春・秋を中心に82日間営業運航。完全予約制。
予約受付:びわ湖疏水船受付事務局(JTB西日本京都支店内)
予約開始:2018年2月1日から
公式HP:http://www.biwako-sosui.jp
問い合わせ:075-365-7768(平日9:30~17:30のみ)

同通船には、川の流れに沿ってゆったりと楽しめる大津発の下り便(所要時間約55分)と、疏水路の流れに逆らってダイナミックに進む蹴上発の上り便(所要時間約35分)が運行する予定です。

※乗下船上の所在地:
《大津下船場》滋賀県大津市大門通り(京阪三井寺駅から徒歩約2分)
《蹴上乗船場》京都府京都市山科区日ノ岡夷谷町(地下鉄蹴上駅から徒歩約3分)
《山科乗船場》京都府京都市山科区四ノ宮柳山町(京阪四宮駅から徒歩約10分)

取材・文/末原美裕

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