2006年に世界文化遺産登録されたノスタルジックなペナン島の街、ジョージタウン。中国寺院にリトル・インディア、キリスト教会やマレー料理の店などさまざまな文化が混ざり合い独特な雰囲気を醸し出しています。多民族が仲良く暮らすにぎやかな街を、日がな一日、ジャランジャラン(ぶらぶら散歩)してみました。
■「ナッカヤーマ!」と声をかけてきたおじさんは…
ペナン島に到着して3日目、古いのに新しい不思議なジョージタウンの魅力に気がつき始めると、有名なレストランや観光地を巡るよりも、ただ、ブラブラと当てもなく歩いてみたくなりました。アルメニアン通りの入り口にあるジョージタウン世界遺産事務局で地図をもらい、複数の家が連なる赤い屋根の家々を眺めながら進んでいくと、孫文の顔写真が入った大きな看板を発見しました。
立ち止まると、「ナッカヤーマ!」と中から受付にいたおじさんが叫びながら飛び出してきました。
「え!? 私、中山じゃないよ」と首を振ると、おじさん、笑いながら、孫文の写真を指さし、「中国やマレーシアではナカヤマの名前のほうが知られているんだよ」と説明してくれました。
なるほどよく見たら、「孫中山記念館」と書かれています。どうやら孫文が辛亥革命の直前、約半年ほど暮らしていた住居のようです。
孫文は日本亡命時代に、日比谷公園の近くで見た「中山」という表札を見て気に入り、日本滞在時に使っていた偽名なのだそうです。本名より偽名のほうが中国で知られるようになったとは、驚きですが、「小さい頃、キコリに憧れていた」から「中山樵(ナカヤマキコリ)」と名乗っていたのだとか。なかなか日本人には思いつかないしゃれた名前ですね。
装飾が美しい古い建物に入ると、孫文が暮らしていた当時のままの台所や、優美な調度品の数々が展示されています。
孫文の功績は英語と中国語で書かれていますが、おじさんは嬉しそうに「孫文が亡命したとき、たくさんの日本人が助けてくれたんだよ」とパソコンで日本語の説明をプリントしてくれました。展示だけ見て帰ろうとする人を、引きとめて話しかけています。おじさん、孫文が本当に好きなんですね。