寒い時期だからこそ、行ってみたい温泉地があります。そのひとつが山形県尾花沢市の銀山温泉です。
銀山温泉はゆるやかに流れる銀山川を挟んで、木造の宿が軒を連ねます。江戸時代初期、幕府直轄の延沢銀山で栄えた後、湯治場として賑わいました。しかし大正時代には、大洪水でほとんどの温泉宿が流されてしまいました。
その後昭和元年に温泉のボーリングにより高温で豊富な湯が湧出。和洋折衷の木造3~4層の宿が立ち並ぶようになり、現在もその姿を留めています。ノスタルジックな温泉街として、今も独特の景観が楽しめます。
なんといっても銀山温泉は雪が似合います。鉛色の空、すぐそこまで迫る山の傾斜、静かに佇む温泉宿。そのすべてを包み込む淡い雪の世界。夜には、ガス灯の明りでいっそう幻想的になります。
宿では長靴と防寒具を貸し出していますので、のんびりと夜の温泉街を散策してみてください。散策後、冷えた体を温めるのは透明な湯に白や茶色の湯の花が浮かぶ、塩化物・硫酸塩泉です。
昔ながらのこじんまりした浴場には熱い湯が溢れます。日本の冬の風情を満喫できる温泉です。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。