パリから約1時間。ジヴェルニー「モネの家」の訪ね方

クロード・モネ《睡蓮》(1916-1919年頃、マルモッタン・モネ美術館、パリ)
国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』(25年2月11日まで開催中)より。
(C)musée Marmottan Monet

※公式サイト https://www.ntv.co.jp/monet2024/

印象派の巨匠、クロード・モネ(1840~1926)。その最も代表的な作品は、一連の「睡蓮」の連作です。その多くが、現在、東京上野の「国立西洋美術館」で開催中の『モネ 睡蓮のとき』に出展されて、大きな話題となっています。

今回、フランス・ノルマンディ地域観光局の協力で、「睡蓮」連作の制作地であり、モネの終の住処である「モネの家」、その有名な「水の庭」(睡蓮の池)を、ノルマンディのジヴェルニー村に訪ねました。

ジヴェルニーの「モネの家」の「水の庭」。枝垂れ柳の枝が、睡蓮の池に垂れ下がり、モネが描いた当時の風景を追体験できる。

ノルマンディ地域圏の最南部に位置するのどかな村、ジヴェルニー(Giverny)は人口500人ほど。パリ中心部から電車や自動車で1時間あまり。セーヌ川の辺りの北側に、「モネの家」(現在はクロード・モネ財団が運営管理)を中心にして伸びる「クロード・モネ通り」沿いに細長く街区があります。

ノルマンディのル・アーブルで育ち(生まれはパリ)、画家となってからも、ノルマンディの風景を描き続けていたモネは、パリからノルマンディに往復する電車の車窓から、よくジヴェルニー村を眺めていました。そして彼はそこに見えるピンク色の家を見つけたと言われます。1883年、モネ一家はその家に移り住みます。1890年、50歳のモネはその家と周辺の土地を購入し、彼が作品に描きたいと望んでいた洋風の庭園と、日本風の「水の庭」作りに着手しました。そして、その「水の庭」で、睡蓮の連作が生まれます。

1926年にモネが亡くなるまで住んだ家と庭園は、現在、財団が運営管理をしていて、モネが住んでいた当時のままに復元保存され、世界中の観光客が訪れています。

ジヴェルニーの「モネの家」の入口。9時30分の開場前から行列が出来ていた。
ジヴェルニーの「モネの家」の母屋。ピンク色の外観を気に入ったモネだったが、窓枠や階段をグリーンに塗り直した。

今回は、ジヴェルニー村のあるヴェルノン市観光局のアンヌ・ル・エナフさんに案内して頂きました。

朝9時20分に、「モネの家」入口で待ち合わせ。開場は9時30分からですが(閉場は18時)、既に多くの人が行列を作っていました。

「入場券は当日、現地でも購入できますが、ハイシーズンには1時間以上並ぶこともあります。前もってモネ財団の公式サイトでデジタル・チケットを購入するのがおすすめです。それも出来れば朝早くから、昼間は物凄い混雑ですから。『水の庭』は朝の光が一番美しいと私は思います」とアンヌさん。

デジタル・チケットは時間制で日時と入場時間が予約でき、それを購入すると正面入口とは別の入口から、チケットをスキャンするだけで早めに入ることができます。

「開場期間は4月1日から11月1日までです。花を見たいなら、6月末から8月がベストでしょう。睡蓮も夏ですね。観光客が少ない秋も静かで心地いいです」(アンヌさん)

パリ市内のサン・ラザール駅から最寄りのヴェルノン駅までは電車で約1時間。ヴェルノン駅からジヴェルニー村へのシャトルバスも、4月から10月までのみ運行しています(所要時間15分前後)。パリからの日帰りバスツアーを利用する方法もあります。

※クロード・モネ財団公式サイト(英語あり) https://claude-monet-giverny.tickeasy.com/en-GB/home

「睡蓮」が描かれた、日本風の「水の庭」

まず、「水の庭」を訪ねました。セーヌ川の支流から引き込んだ細い水の流れ沿いに、竹林と枝垂れ柳に囲まれた道が伸びていて、そこを抜けるとグリーン色の日本風の「太鼓橋」が現れます。日本から持ち込んだと言われるフジの花が橋を彩っていて、モネが太鼓橋のヒントを得たとも言われる、安藤広重の「名所江戸百景 亀戸天神境内」を彷彿とさせます。

「水の庭」の周りには、ツツジ、モミジなども植えられていますが、残念ながら現地の庭師の人たちには手入れが難しいらしく、かつての日本庭園の姿からは程遠いようにも感じました。「いつか日本の庭師が手入れしてくれれば良いのですが」とアンヌさんも残念そうでした。

睡蓮が浮かぶ「水の庭」、右奥にグリーン色の日本風の太鼓橋が見える。
太鼓橋の近影。フジの蔓が橋に絡まっている。
クロード・モネ《日本の橋》(1918、 マルモッタン・モネ美術館、パリ)。
『モネ 睡蓮のとき』より。
(C)musée Marmottan Monet

「水の庭」には、さまざまな色の睡蓮が浮かんでいます。揺れ動く水面を眺めていると、映っている空の青に白い雲が浮かび、ゆっくり流れていきます。風で揺れる枝垂れ柳の緑の葉枝の間から、その様子を見つめているうちに、100年前のモネの姿が浮かんでくるかのようです。

「水の庭は、朝、昼、夕刻で、色彩が変わっていきます。ですから、本当は、1日に2〜3回訪れたら素晴らしいことですが(笑)」と、アンヌさん。モネの「睡蓮」の連作の数々を思い出しながら、ゆったりした時間を過ごしたいものです。

クロード・モネ《睡蓮の池》(1917-19年頃、 マルモッタン・モネ美術館、パリ)。
『モネ 睡蓮のとき』より。
(C)musée Marmottan Monet
モネの家、「水の庭」の赤い睡蓮。100年前の、モネが描いている姿が浮かんでくる。

次回は、モネのアトリエのあった「モネの家」の母屋、そこに飾られているモネの浮世絵コレクションの数々と、芸術家村ジヴェルニー誕生の物語をご紹介します。

※ヴェルノン・ジヴェルニー観光局公式サイト(英語あり) https://www.nouvelle-normandie-tourisme.com/en/

※フランス観光開発機構公式サイト(日本語)  https://www.france.fr/ja/article/normandie-experiences-pour-marcher-sur-les-pas-des-impressionnistes/

取材・文・撮影/福田 誠

 

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