2017年7月、ポーランドのクラコフで行われていた世界遺産委員会において、日本の宗像・沖ノ島が世界遺産登録を果たした。そのとき、インド南西海岸、グジャラート州アーメダバードの建築物群も同じく登録を果たしたことはご存知だろうか?
乾燥地帯で農業に適していないため、グジャラート州はもともと他州にくらべると貧しい州だった。しかし英国統治下の19世紀に織物業で栄え、現在は紡績やダイヤモンド交易、IT産業によって発展。かくしてアーメダバードは、同州最大の都市となり、そればかりかインド有数の都市のひとつに数えられるにまでなっている。
マハトマ・ガンディーの生誕地でもあり、彼がここから独立運動を開始したことでも有名。いま大きく注目されるアーメダバードの見所をご紹介しよう。
■1:スワミナラヤン寺院
完成が2005年と歴史こそ浅いものの、いまや人気スポットとしてすっかりおなじみ。ヒンズー教スワミナラヤン派の寺院である。その魅力は、高さ43m(マンションでいえばおよそ13階)という圧倒的な大きさで、世界最大のヒンズー教寺院としてギネスブックにも登録されている。
しかも、これだけの大建築物でありながら、コンクリートや金属が一切使われていない石造りだというのだから驚く。白い大理石で埋め尽くされた本殿の美しさも特筆すべきものだ。
寺院内には、インドの歴史を美しい映像とともに振り返る映画や、ジオラマなどの展示物、庭園、ボート・ライド、ロボットショーなど見どころも満載。伝統とテクノロジーの融合は、とにかく圧倒的だ。
■2:モスク群
アーメダバードといえば、点在するモスクの美しさにも注目したいところ。なかでも必ず訪れたいのが、アフマド・シャー 1 世によって建てられたジャーマー・マスジッド・モスクだ。緻密な作りの柱、引き込まれるような美しさのドームなど、インド・イスラム建築ならではの美しさに圧倒される。
場所は、アーメダバードの歴史地区の中心。近隣にはマネク・チョウクのフードマーケット、スワミナラヤン・マンディール、ティーン・ダルワザの門など見所が集中しているので、移動にも便利だ。
■3:旧市街のポル
まるで迷路のようなアーメダバードの旧市街には、道の両側に2~3階建ての住居が連なる。ポルと呼ばれる集合住宅地だ。特徴的なのは、まとまった住居郡がひとつの単位となってコミュニティーを形成しているところだ。
もともとは工業労働者の急激な増加に伴って作られたものだが、現在では繊細な彫刻の美しさによって観光客を魅了するスポットとして人気だ。
■4:コルビュジエの繊維業会館
アーメダバードの注目スポットに建築物がある。というのもここには、近代建築の巨匠として知られるル・コルビュジエによる4つの建築物が存在するのである。
特に有名なのが「繊維業会館」。コンクリート打ちっ放しのモダンな作りで、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、黒、白と鮮やかな色がアクセントに用いられている。
なお、窓に取りつけられた大きなスリットは、インド特有の強い日差しを避けるため窓に取りつけられたもの。これも、デザイン的にいい効果を生み出している。
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以上、世界遺産に登録されたインド・アーメダバードの見どころをご紹介した。
近年は、それぞれの宗教コミュニティが共存する旧市街のウォーキングが人気。またコルビュジエ作品や、近郊にある階段井戸を訪ねる人も多く、アーメダバードは大きな注目を集めている。インドの魅力を多角的に感じてみたいのなら、ぜひとも選択肢に入れておくべき都市だといえるだろう。
文/印南敦史
写真提供/ワールド航空サービス