文・写真/野間あみこ(海外書き人クラブ/日本在住ライター)
大人の海外ひとり旅は非日常、自由や憧れ、自立した大人という優雅なイメージを持ちますが、ディナータイムに直面する小さな悩みがその優雅さを阻むことがあります。特に海外では言語の壁や文化の違いからディナーに妥協が生じ、結局日常と変わりない時間になっては、大人のひとり旅が台無しです。しかし、少しの準備と工夫でこれらを乗り越え、素敵なディナー体験に変えることができるのです。
本記事では、台湾中部の静寂で美しいリゾート地、日月潭(にちげつたん・じつげつたん)という湖のほとりにあるホテル「THE LALU」でのひとり旅ディナー体験を例に、どのような準備をすることで大人の優雅な時間を過せたかをご紹介いたします。私のひとり旅から得た知識をあなたの次の優雅なひとり旅にどうぞお役立てください。
台湾の日月潭はその神秘的な静寂と優雅さで知られる台湾中部の人気リゾート地で、中でも「THE LALU」 という高級ホテルは全室スイートルームでそのスタイリッシュな建築の豪華さと洗練されたサービスの質で際立っています。大人の優雅な時間、期待通りのサービスを享受してゆっくりと食事を楽しむことができました。
このような素晴らしいホテルなら、ディナーも同じくらい洗練された時間にしたいですよね。
それでは、私が経験したひとり旅でも素敵なディナー時間を過ごす為の3つの準備をお伝えいたします。
夕食はコンシェルジュで予め相談
まず1つ目は、ホテル到着時に夕食についてコンシェルジュで予め相談、リクエストを遠慮なく伝えてみることです。そのようなことは当然と思われるかもしれませんが、海外のひとり旅は弱気になりがちですし、上手く伝わらなかった時をイメージし相談が億劫になったりします。ですが、台湾は日本語が通じる事が多いですし、ただのリクエストなので自分の要望を明確に伝えて良いのです。私はルームサービスと日本食を避けたいとリクエストし、同時に時間や座席については妥協できることを伝えてみました。すると、直ぐにメインダイニングの中華料理店で一人前コース料理の有無を確認頂き、8時に中華料理のコースディナー(全8品)の予約を確保して頂きました。予め相談を持ち掛けることによって、店側のひとり客に対する反応を知ることができたので、安心してディナーに出かけられたのです。通常中華料理は大皿料理を取り分けるのが一般的ですし、コース料理は2名からの設定が多いので、少しチャレンジではありましたが、こちらの心地良さを確保しながら妥協できる点も伝えることで、1つ目の関門をクリアいたしました。当日の予定が確実であるなら宿泊予約時にメールで相談しておくと更に良いと思います。
自分自身の演出に気を配る
2つ目は、ディナーに出かける私自身の演出に気を配ってみました。皺にならず小さく畳めるシンプルなニットのワンピースと大ぶりのアクセサリーを用意していました。特に目線に近い大ぶりのイヤリングはマダム感が増すので丁寧に扱って欲しい時の強い味方となります。日本の女性の間では華奢で繊細な美しいアクセサリーを好む傾向にあると思うのですが、海外マダムは目立つアクセサリーを上手に使い、さりげなく存在感を醸し出すのがとてもお上手だと感じます。日本では少し気後れするアクセサリーも海外で是非チャレンジして、マダムのディナー体験を味わってみるのは如何でしょうか? 少しの演出が堂々と振る舞える魔法となり、お店側からも喜ばれることでしょう。
お茶のオーダーのために中国茶について調べる
3つ目は、ディナーまでに中国茶について調べておきました。イタリアンやフレンチならワインの知識があれば食事が更に楽しくなるように、中華料理店でも美味しいお茶が飲めたら食事が更に美味しくなります。当時私は中国の深圳在住で、広東省で広く飲まれるプーアル茶が好きでした。ですが、台湾はお茶の名産地ですので、どのような種類のお茶が有名か調べて、リクエストできるように準備しました。旅行前にその土地のお料理やお土産を下調べするのとなんら変わりません。ですが、少しだけ踏み込んで中国茶は発酵度によって6種類に分類され、飲んでみたいお茶がどのカテゴリーに属するのかを知っておくだけで、お茶を勧めてくれるスタッフとの会話がより楽しいものとなりました。中華料理店に行かれる場合は、お茶について少しだけ事前準備をしておくと、席について直ぐに聞かれるお茶のオーダーにあたふたせずにすみます。
以上の話をまとめますと
(1)予約の時点で堂々とリクエストを伝えお店の反応を確かめる。
(2)丁寧に扱って貰えるように良い客になる演出をする。
(3)お店のお料理に合った飲み物をオーダーできるように予習しておく。
ちょっとしたコツを知って準備するだけで、ひとり旅が確実にグレードアップし、自分の自信にもつながります。そして、このコツはどこの国でも有効に活用できるでしょう。
と言うのも、私の大人のひとり旅デビューはロンドンでした。日中の観光やランチで困る事はなかったのですが、ディナーの時間に入りたいお店の前を何往復かしては諦め、ファーストフードで済ます数日になりました。この事を宿泊先のAirbnbの女性ホストに話すと、手頃なお店でカジュアル過ぎずひとりでも食事を楽しめるイタリアンレストランを紹介してくれたのです。
そして、現代では欧州でも格式高いレストランでない限り、女性ひとりでの食事は珍しくないと教えて貰いました。それでもなんとなく躊躇している私の心を読み、ひとりで食事を楽しめるようにとアドバイスをして頂いたのが、今回お伝えしている3つのコツなのです。
私はあまりワインを頂かないので、ワインの知識に自信がありませんでした。それもひとりでディナーのお店に入り難い要因だと話したところ、色々な国に旅慣れているホストのアドバイスは、以前に飲んだワインの中で美味しいと思ったワインを伝えると、好みを理解して貰いやすく、価格帯も無理せずためらわずに伝える事でワインの知識や言語に明るくなくてもスムーズだという事でした。このアドバイスのお陰でロンドンでの一夜をひとりで堂々とレストランに入り、美味しい食事とワインを楽しめた経験は、私に自信をもたらし次の台湾日月潭、高級リゾート地への大人のひとり旅へと誘ってくれたのでした。
ちなみに私の記憶にあった好みのワインはニュージーランドのオイスターベイという一般的な銘柄で、それを伝えるとすぐに予算内の私好みのグラスワインを用意していただきホッとしました。お茶のオーダーは、プーアル茶のように発酵が進んだお茶が好きである事を伝え、台湾の銘茶東方美人という比較的発酵が進んだお茶をオーダーする事にしました。ネーミングも相まって非常に美味しく頂けたのは言うまでもありません。日本人に馴染みがある発酵していないお茶がお好きでしたら、台湾の緑茶も非常にさっぱりと美味しく、飲み比べてみるのも楽しい体験です。
しかも、台湾のレストランでは日本語勉強中というスタッフが絶妙なタイミングでコミュニケーションを取ってくださったので気兼ねなく質問もでき、香港や中国本土で食する中華料理より食べやすいテイストのお料理が多い印象です。安心してひとりで食事を楽しめる場所でした。
ひとり旅の小さな悩みも、簡単な準備やコツで自分が思っている以上にすぐに解決できます。無理をせずそして大人の素敵な旅を自信と共に楽しむ一助にしてください。
THELALU日月潭涵碧楼酒店 The Lalu Sun Moon Lake
南投縣魚池鄉水社村中興路142
No.142號, Zhongxing Rd, Yuchi Township, Nantou County, 台湾555
https://www.thelalu.com.tw/en
文・写真/野間あみこ (日本在住ライター)
2003年から2020年まで、香港、シンガポール、タイ、中国に在住。日本人家庭が長期に渡って海外子育て、海外教育を子供に受けさせると、どんな経験をして子供がどう育つのかを20のエピソードにまとめた著書 『自己肯定感低めママの海外子育て、英語教育、20年間5カ国成功&失敗20エピソード』 を電子書籍にて出版。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織 「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/) 会員。