文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)
ドイツ料理といえば多くの方が、ソーセージやシュヴァイネハクセなどの肉料理をまずイメージするのではないだろうか。当地ではたしかに肉料理の割合が多いのだが、年々菜食主義が増加しており、それにともないベジタリアンやヴィーガンの専門店が増え続けている。とくに首都ベルリンでは、軽食屋からカフェ、レストランまでよりどりみどり。そのなかでも、人気・実力ともにトップに君臨するのが、流行発信地ミッテ地区にある「フレア(FREA)」だ。2019年にオープンして以来、多くのメディアに取り上げられ、国内外から注目を浴びている同店を実食取材した。
ドイツで初めてのごみゼロ・レストラン
ベルリンには多くのヴィーガンレストランがあるが、フレアは他店と一線を画すこだわりっぷりで知られ、圧倒的な人気を誇っている。そのこだわりのひとつが「ゼロ・ウェイスト」(ごみゼロ)を目指しているということ。このコンセプトはお店がオープンする前の段階から始まっており、工事の際もできるだけごみが出ないように心がけたという。
食材はすべてオーガニックで、運搬にかかるエネルギーや包装ごみを減らすため、できるだけハンドメイド。野菜は丸ごと使い、種からは発酵食品を作る。生ごみは堆肥製造機にかけられ、できた堆肥は食材を仕入れる農家でも再利用するなど、徹底したサステナビリティの取り組みに頭が下がる思いだ。
店内にはプラスチック製やレザーなど動物製の家具はなく、すべてリサイクルのもので統一。おしゃれでモダンな雰囲気でありながらも温かみが感じられ、アットホームなサービスが心地よい。
「おいしい!」が大前提のヴィーガン
さらに感動させられたのが、料理のクオリティの高さ。メニューはメインとデザートを2種類から選べる4皿のコースのみ。どの皿も、それまで抱いていたヴィーガンのイメージを覆されるものだった。盛り付けの美しさ、食材の組み合わせ方、ハーブやスパイスの絶妙な使い方、そして何よりおいしさ。我々取材陣のテーブルは、料理がサーブされるごとに驚きと感嘆のため息に包まれた。
ミシュランでグリーンスターを獲得
世界的なグルメガイド「ミシュラン」では、通常の星とコストパフォーマンスに優れたビブグルマンに加え、2021年に新たな指標として、サステナブル(持続可能)な活動に積極的なレストランを称えるグリーンスターが新設された。フレアはこのグリーンスターをはじめ、「ベルリンのトレンド・レストラン」ほか様々な賞を受賞。ベジタリアンやヴィーガンのためだけでなく、いまやベルリンで外せないグルメ・スポットとして世界中にファンを増やし続けている。
各国の記者とご一緒させていただいた今回の取材ツアーの最終日。「どこが一番良かったか」という話題になった。観光名所やレストランなどで様々な素晴らしい体験をさせていただいたのだが、「フレア」を一番に挙げた人が多かった。それほど印象深く、とても良い夜だった。
ベルリンならではのちょっと特別なレストランに行きたい、という方に、心よりおすすめしたいお店。早めに予約して、ぜひ訪れてみてください。
■ドイツ観光局 https://www.germany.travel/en/
■ベルリン観光局 https://www.visitberlin.de/
■レストラン「フレア」 https://www.frea.de/
文・写真/坪井由美子
ドイツを拠点に世界を旅するライター。旅行、グルメなどの分野において新聞、雑誌、ウェブ媒体で執筆。レシピ連載や食のリサーチも手掛ける食いしん坊。2020年『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。