文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)

ドイツの観光地と聞いて多くの人がイメージするのが、ロマンティック街道やノイシュヴァンシュタイン城、オクトーバーフェストで有名なミュンヘンなど、南ドイツではないだろうか。日本の旅行会社が企画するドイツツアーも南を中心としたものが多いが、じつは北部にも世界遺産をはじめとする見どころが盛りだくさん。南とは異なる独特の文化がみられ、個人旅行者やリピーターを中心に人気を集めている。今回紹介するのは、日本人にはまだあまり知られていない美しい町、シュトラールズント。名物グルメを頬張りながら、情緒あふれる旧市街をのんびり散策したい。

2つでひとつの世界遺産 シュトラールズントとヴィスマール

バルト海沿岸のシュトラールズントは、100kmあまり西に位置するヴィスマールとともに「シュトラールズント及びヴィスマールの歴史地区」としてユネスコ世界遺産に登録される港町。ともに14~15世紀にハンザ同盟都市として繁栄し、三十年戦争後には一時スウェーデン領時代を経験するなど共通する歴史が多く、当時を偲ばせるゴシック様式のレンガ建築が多く残されている。

ハンザ都市らしい美しい建物が並ぶヴィスマールのマルクト広場。レンガの建物はスウェーデン領時代に建てられた町で最も古い建築物「アルター・シュヴェーデ」。現在はレストランとなっている。

シュトラールズントの街歩きは、歴史地区の中心となるアルター・マルクトからスタートしよう。重厚なレンガ建築の市庁舎をはじめ、ハンザ都市特有の美しい建物が広場をぐるりと囲むように並んでいる。

「ハンザの女王」と称されるリューベックの市庁舎をモデルとして建てられたシュトラールズントの市庁舎。尖塔や透かし模様をもつファサードが美しい。
かつて問屋街だったという市庁舎の一階部分には、現在はチョコレートショップやブティックなどが入っている。
レンガ造りや破風などハンザ都市特有の建築が見られるアルター・マルクト。祭り期間中につき広場には中世市が立っていた。

訪れた日はちょうど年に一度の祭り「ヴァレンシュタインターゲ」(ドイツ語: Wallensteintage、ヴァレンシュタインの日々)が開催中。このイベントは「シュトラールズント攻囲戦」(30年戦争時代の1628年、ヴァレンシュタイン率いる軍が行った攻城戦)に対するシュトラールズントの抵抗を記念した北ドイツ最大規模の民族祭りで、屋台やスタッフも当時の雰囲気が再現されている。街並みからして中世の面影を残しているため、本当にタイムスリップしたような気分だ。ドイツではこのような中世祭りが各地で開催されるので、ぜひ一度体験してほしい。

名物グルメ1 フィッシュサンド

シュトラールズントには知る人ぞ知るグルメな町。この町で味わいたい名物3選を紹介しよう。

港にはフィッシュサンドの屋台船がいくつも浮かぶ。右手にみえる白い建物は2010年にヨーロッパのミュージアム・オブ・ザ・イヤーを受賞した人気の水族館「Ozeaneum」。

ドイツ料理というとソーセージや豪快なシュヴァイネハクセなど肉料理のイメージが強いが、海に面する北部では日本人好みの魚料理も豊富。旨みが凝縮された小エビやニシンなど、北海やバルト海産の新鮮なシーフードが味わえる。シュトラールズントの港の周辺には、名物のフィッシュサンドを売る屋台船や鮮魚店に併設された軽食屋、おしゃれなレストランまで、おいしいお店がよりどりみどりだ。

ドイツの魚屋では鮮魚より燻製が充実している。サーモンにさば、ウナギなど種類豊富。
北ドイツ名物のストリートフード、フィッシュサンド。一番人気のマチェス(若いニシン。写真左)は、旬の初夏には脂がのってとろける旨さ。

老若男女がフィッシュサンドをほおばりながら歩いている光景は、海辺のリゾートらしい開放感に満ちている。そのなかに身を置いていると、自然と心身がゆるんでいくようだ。ちなみに、ドイツではファストフードの立ち食いは当たり前。大人だって心置きなく食べ歩きを楽しめるのが嬉しい。

名物グルメ2 北欧風ソフトクリーム

港で人気のソフトクリーム店にて。ラクリッツ(甘草)のトッピングは北欧で定番の味。

港周辺でフィッシュサンドとともによく見かけるのが、意外にもソフトクリーム。ドイツではソフトクリームはそれほどポピュラーではなく、とくに南部や西部ではあまりお目にかかれない。ところが、ここシュトラールズントやリューゲン島、ダース半島などバルト海沿岸の町ではあちらこちらにあり、ソフトクリーム好きな筆者は歓喜した。

筆者調べによると、ベルリンやライプツィヒ、ドレスデンなど東部の町では旧東ドイツ時代に流行ったDDRソフトアイス(あっさりタイプの白黒のソフトクリーム)の影響もあって、他の地域に比べるとソフトクリームの認知度は高い。だが密集度でいえばバルト海沿岸のリゾート地がダントツだと思う。対岸に位置する北欧産のソフトクリームを売りにしている店も多く、ミルキーでとてもおいしい。

名物グルメ3 海賊のビール

シュトラールズントが誇るビール醸造所「Störtebeker」。試飲付きの工場見学ツアーに参加することもできる。

シュトラールズントに行ったならば、「シュテルテベーカー(Störtebeker)」のビールを飲まずに帰ることはできない。14世紀の北海で名を轟かせた伝説の海賊クラウス・シュテルテベーカーに因んで名付けられたという醸造所では、この地で800年も受け継がれてきたという製法で約20種類ものビールが造られており、ビールの世界一を決める「ワールド・ビア・アワード」他数多くの賞を受賞している。シュトラールズントの本社工場には直営レストランやショップも併設されており、ビール好きなら一度は訪れたい場所だ。

レストランではモダンにアレンジされたドイツ料理を味わえる。マチェスもタルタル風でおしゃれ。6種類のビールが味わえるテイスティングセットとともに。
約20種類もあるビールの他、クラフトジンやウイスキー、オリジナルグッズなどが並ぶショップ。

ドイツ人に人気のリゾート、リューゲン島への玄関口

シュトラールズント駅構内に描かれたリューゲン島の地図。リューゲン島までは電車ですぐ。

シュトラールズントはドイツ最大の島、リューゲン島へ渡る拠点となる町でもある。島とは約2.5kmの橋で結ばれており、電車で気軽にアクセス可能。ドイツきってのリゾート地として知られるリューゲン島には、自然保護区にある白亜の断崖絶壁やかつてナチスが計画していた巨大保養施設の跡地を利用したユースホステルなど見どころが多いので、ぜひ足をのばしてみてほしい。

世界遺産の歴史地区、名物グルメ、ビーチ、自然……、と魅力が尽きないシュトラールズント。まだあまり知られていないドイツの魅力に出会いたい人に、心からおすすめしたい。

ドイツ観光局:https://www.germany.travel/en/campaign/german-local-culture-jp/home.html
シュトラールズント観光局:https://www.stralsundtourismus.de/

文・写真/坪井由美子 ドイツ在住ライター。旅行、グルメ、文化などの分野において新聞、雑誌、ウェブ媒体で執筆。レシピ連載や食のリサーチも手掛ける食いしん坊。2020年『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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