常滑焼といえば愛知県常滑市などを産地とする日本六古窯のひとつであり、原料となる常滑土の朱色を生かした急須が有名である。ところが本品は常滑焼でありながら、艶消しの黒の仕上がり。これは釉薬をかけずに焼いて成形してから、再び炭と一緒に焼いて燻す「炭化焼成」という手法で作られたもの。焼き締め時に炭化が定着することで、美しい黒色が醸し出されるのだ。
「急須の形は、お茶本来の味わいが出せる『平丸』と呼ばれる平たいタイプと、見た目のよい『つぼ』のような形の折衷案で、それぞれの急須のいいとこ取りです。湯呑みの形も急須とバランスよく合わせました。いずれも手頃な重さで扱いやすいと思います」と、創業74年の窯元、玉光陶園2代目で伝統工芸士の梅原廣隆氏は語る。
お茶の味をよくするのは、鉄分を多く含む正真正銘の常滑土にもある。この土で作った急須でお茶を淹れると、鉄分がお茶の成分と反応してコクが増し、誰が淹れても渋みも程よいまろやかな味わいになるという。特に緑茶や中国茶に向くとされる。
憩いのひと時、美味なるお茶を淹れて楽しむにふさわしい茶器である。
【今日の逸品】
常滑焼の炭化焼成の急須と湯呑み2客組み
玉光陶園
6,160円~(消費税8%込み)