昔、縁側で父親が爪を切っていたときに聞こえてきた、パチパチという小気味よい音。ニッパー型の爪切りといえばそんな情景を思い出す人もいるだろう。だが、ステンレス製爪切りが普及して以来、その姿はあまり見かけなくなった。それでも、当時日本初のニッパー型爪切りを発売した「鈴木刃物製作所」が製造を続けるのは、未だ根強いファンがいるからだ。
ニッパー型爪切りは、もともと医療分野での使用が目的で作られたもの。硬い爪や変形爪でも難なく切ることができるタフさが、特に男性から支持されている由縁である。弟の寛氏とともに職人技を極める鈴木美朗氏は語る。
「切れ味と長切れする点にこだわり、素材は最高級の炭素鋼を使用しています。爪切りは消耗品と思われがちですが、炭素鋼で職人が手作りする高級爪切りは長持ちします。愛着を持って使ってほしいのです」
さらなるこだわりは設計にもある。爪切りを閉じたときに刃同士がピタッと接すると早く傷む原因になるが、刃付け角度と刃合わせを試行錯誤した結果、刃がぎりぎり接しない箇所で爪が切れる構造を実現した。
時代の流れで生産が減少しており、今後手に入れることは難しくなる。世界に誇れる逸品を今こそお手元に。
【今日の逸品】
炭素鋼メッキ爪切り
鈴木刃物製作所
15,984円(消費税8%込み)