アルテ・ウァン

写真左からIROHA、YO-桜、墨高台、茶灰釉錆、SAKURA、松

どんな料理も引き立つ、有田の名窯が造る多用碗

17世紀には、欧州で多大な人気を博していた有田焼。その後、各国の窯元の台頭や江戸幕府の貿易規制による不況を経験し、明治33(1900)年に開催されたパリ万国博覧会で再起を図ることとなる。この万博で日本館の入り口に鎮座したのが、有田の名窯「深川製磁」創業者・深川忠次作の「染錦金襴手丸紋鳳凰文様 大花瓶」だ。本作は見事金牌を受賞し、有田焼再躍進の契機になるとともに、深川製磁の名を世界に知らしめた。

同社は明治27(1894)年に、忠次が佐賀県有田町に設立した老舗の窯元である。開窯前から若くして渡欧を重ねていた忠次は、“世界一のやきものづくり”を目指して、有田焼の伝統技法に欧州の先進技術を取り入れた独自の意匠を追求した。
「忠次が何よりもこだわったのは、1350℃の高温度還元焼成で造られる『透白磁』でした。形状を保てるギリギリの高温で焼くことで、高い透明度と輝きをたたえた白い磁肌に仕上がります。軽く硬度が高いのも特徴です」と語るのは、副社長・深川真樹生さん。この焼成方法は、現在も同社が造るすべての器に用いられている。

今回紹介する『アルテ・ウァン』は、平成18年の同社イタリア・ミラノスタジオ開設を記念してデザインされたシリーズだ。「再度、欧州に日本の器の魅力を紹介したい」という思いから企画された。
「日本に根付く“器を手に持つ食文化”のあたたかさを世界に発信するために、手になじむ形を目指しました。どんな料理にも使いやすい多用碗にすることで、国内外を問わず幅広く愛用いただける器になっています」(深川さん)

有田焼の製造は昔から分業制が一般的だが、同社では忠次の志を受け継ぎ、創立当初から社内一貫生産にこだわり続けている。明治時代に忠次が築いた工房で、粘土作りから釉薬の調合、焼成、絵付け、検品に至るまで、熟練の職人たちが心血を注ぐ。

伝統技法による多彩な柄がコレクション欲をくすぐる

紹介する6種類の多用碗『アルテ・ウァン』は、それぞれ異なる技法を用いて造られる。深川製磁の代名詞ともいえる格調高き青色「フカガワブルー」を堪能できる「松」と「IROHA」は、染め付け技法によるもの。素焼きした器に、筆または自社開発のエアログラフ(顔料の吹きかけ機)を用いて染め付けし、フカガワブルーの深い奥行きを生み出す。「SAKURA」と「YO-桜」に用いられるのは赤絵(上絵付け)技法。素焼き後に釉薬をかけて焼成を行ない、その後、赤や金色などの顔料で繊細な絵付けを施す。「墨高台」と「茶灰釉錆」は鉄さびという顔料を使用し、前者は無地、後者は線のみ入るシンプルで渋い意匠に仕上げた。どの絵柄も美しい和模様だが、現代の食卓にもさりげなく調和する。
「実用性と芸術性を兼ね備え、数種類集める方も多い本品。どんな料理も引き立ち、食卓を美しく彩ります」(深川さん)

アルテ・ウァン

写真=YO-桜
「SAKURA」と「YO-桜」には同じうさぎと桜の背景が描かれているが、高台の色が異なることで印象が違ってくる。

【今日の逸品】
アルテ・ウァン

深川製磁
4,950円~(消費税込み)

 

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