1.「遊んでほしい」アピールで飼い主の気を引くため
飼い主さんが大好きな猫は、遊んで欲しくて、気を引くためにわざと飼い主さんのベッドで粗相をすることだってあります。ですので、毎日何かと忙しいとは思いますが、「ながら遊び」でも大丈夫ですので、ご飯を食べている時、家事をする間、テレビを見ている時など、ちょっとした時間を利用して、5分~10分だけでも遊んであげてください。
これを続けていると、「飼い主がテレビを見る時がボクの遊びタイム♪」と、猫も学習してその時間を楽しみにするようになり、かまってほしいというアピールによる粗相が解消されることもあります。
2.猫だってキレイなトイレでなきゃイヤ!
猫はとってもきれい好き。トイレのこまめなお掃除も大事です。用を足した後、猛ダッシュでトイレから逃げ去るようであれば、「臭い! 汚い! イヤ!」と思っているはずです。(「狭い!」の可能性もありますが、そこは改善したという前提での話の続きです)。
猫によっては、おしっこの跡が一か所あるだけでも「もうイヤ! 他の場所でしちゃうもん!」という子だっています。人間だって、ちょっと汚れたトイレでも気にならないという人もいれば、外出先ではトイレに行けない、という人だっていますよね。猫にもそれぞれ性格に違いがあり、許容範囲は異なるのです。
3.臭いがまだ残っていたから尿意をもよおしてしまう
また、一度うっかり粗相してしまったことのある場所に、まだ臭いが残っていて、なんとなくそこに行くと臭いにつられて尿意をもよおしてしまう、というケースもあるでしょう。お布団やクッションでしたら、アンモニア臭が完全になくなるまでしっかり洗うか、新しいものに変えるなどした方が良さそうです。
ところで、トイレ後の猛ダッシュについて、「トイレをする時は、いつ敵に襲われてもおかしくないから緊張していて、それが終わるとほっとして、開放感から喜びの猛ダッシュをしてしまう」といった都市伝説のようなものを聞いたことがあります。以前、アメリカの野良猫がトイレをする様子を録画したことがありますが、広い原っぱの真ん中で、悠々と排泄していました。ちゃんと掘って、排泄して、また埋め戻して…とじっくり、丁寧に。その後も、悠々とその場から立ち去っていきました。
そんなあけすけの原っぱの真ん中であれば、四方八方どこから襲われてもおかしくないですし、空にも大きな鳥が飛んでいるかもしれません。それでも、猫は平気な様子でした。まして、住み慣れた家の中で、どんな敵に遭遇するというのでしょうか。
だから、トイレ中に警戒心がある、というのは当てはまらないように思います。
4.もしかしたら、病気の可能性も
トイレ環境を改善しました。掃除もしっかりしています。気を引くためのスプレーでもないみたい。遊びの時間もたっぷりとっています。それでも粗相が治らない、ということでしたら、まずは動物病院で尿検査などを受け、病気がないか確認を! 膀胱炎や腎臓の病気などでお漏らしをしてしまう場合もありますので、医療機関で調べる必要があります。
病気もなく、健康体なのに粗相してしまうようでしたら、これはもう、専門医や動物行動認定医(獣医行動診療科認定医)に相談すべし。それぞれの猫の体調や性格、住んでいる環境などにより、可能性は無数にあるので、ひとつひとつ検証して原因を探る必要があります。
大切な家族と楽しく、快適に暮らすためにできる工夫はいろいろ。飼い主にも猫にも良い解決策が見つかるといいですね。
次回は、猫が本当に好きな食べ物について検証します。
《入交眞巳(いりまじり・まみ)さん プロフィール》
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。
《わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)》
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻、父さんと母さん。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。