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文/鈴木拓也

子どもがいない場合の相続や自身の介護はどうすべきか|『子どもなくても老後安心読本』

21世紀に入ってからの20年足らずで、急激に増えているシニア世代の単独世帯。直近(平成27年)の国勢調査によれば、65歳以上の単独世帯は約6百万世帯に及ぶ。そして、同様に増加しているのが子どものない「夫婦のみの世帯」。こちらは、全年代合わせ1千万世帯を超えている。こうした世帯はこの先も増え、2035年には(未婚と離別死別者を合わせた)独身率は約48%になるという。

こうした世帯構成の潮流の変化は、自分が死亡したとき誰が遺産を相続するのか、自分が要介護になったとき誰が面倒を見てくれるのかといった、切実な問題に直面する人が激増することも意味する。

もし、シニアになったあなたに子どもがいなくて、相続・介護などで不安を感じたとき、どうすればよいのだろうか?

それに対する手引きとなるのが、今回紹介する新書『子どもなくても老後安心読本』だ。

■「たすき掛け遺言」で無用の争族を予防

著者の司法書士の岡信太郎さんは、「子どもがいない夫婦の場合は、何よりまず遺言を遺しておきましょう」と、いの一番にアドバイスする。
岡さんは、夫婦のどちらかが亡くなった場合、全財産は配偶者に遺されると思い込んでいる人が多いと指摘。

実は法律上、確かに配偶者は相続人の1人になるが、それ以外にも他の親族も相続人となり、場合によっては「全く面識もなく連絡先も知らない甥や姪にまで、自分の財産が渡ってしまう可能性」があるという。

親族にはちがいないので、気にならないという人もいるかもしれない。しかし、仲の良いはずの親族間でも、第三者がいきなり現れてこじれるなどトラブルの種も少なくない。
そこで岡さんは、夫から妻へ、妻から夫へ向け「自分の財産を全て相続させる」内容の遺言書を作成することをすすめている。こういうかたちの遺言を「たすき掛け遺言」と呼ぶ。
夫婦でなく独身の場合でも、遺言書を作成しておくことは検討に値する。例えば、特定の兄弟・姉妹・甥や姪に相続させたい場合がこれにあたる。

■独り身の自分が要介護になったら

「年をとったがまだまだ元気」と思っていたら、不意の転倒がきっかけで思うように動けなくなったら?

配偶者も子どももいない場合、入院やその後の介護生活において財産の管理や生活の支援などさまざまなことを、誰にやってもらえばよいのだろうか。

岡さんは、財産管理等委任契約という制度を取り上げている。これは、身動きがままならない本人に代わり、諸々のタスクを任せられる人を決めておくというもの。任せる内容には、例えば以下の事柄がある。

・金融機関、郵便局との取引に関すること
・保険契約に関すること
・定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払に関する事項
・医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入退所契約に関すること

委任する相手は、信頼できる親族の誰か、あるいは弁護士や司法書士といった専門家になる。専門家に委任する場合、委任費用として毎月いくらというかたちで支払うことになる(場合によって初期費用が別途かかることも)。

■独り身の自分が判断力を損なう病気になったら

財産管理等委任契約は、身体が不自由でも頭脳はしっかりしている場合に有効だが、仮に自分が認知症に代表される、判断力が著しく低下する病気に冒されたら、どうすべきだろうか。

この場合は、成年後見制度が役に立つ。これは、成年後見人に指定された人が、財産の管理などを代行してくれる制度で、その中身は預貯金の管理から入院費の支払まで多岐にわたる。介護施設探しまで含まれるが、お風呂に入れるといった身の回りの世話は対象外となる。

成年後見人の選び方は、元気なうちに自分で決めることができるが、既に病が進んでしまっているなら、家庭裁判所が選任することになる。選任されるのは、やはり専門家である司法書士、弁護士、社会福祉士が多いという。

■独り身の自分が死亡したら

人が死亡したら、病院・施設から遺体を引き取り、死亡届の提出、葬儀の手配など多くの「死後事務」が発生する。

もし自分に、そうした死後事務をしてくれる配偶者や子どもがいない場合、どうすべきだろうか。

岡さんは、「子どものいない方は特に、自分の場合はどうするか元気な内に意思表示しておくことが重要」と説く。具体的には、希望を書き出して実行者を決め、意向を伝える。甥・姪など若い世代が候補となろうが、弁護士・司法書士に頼むのも一考の余地がある。成年後見人を決めているなら、その人にセットで頼んでおくのも手だという。

ただ、口頭で頼むのは法的な根拠として不十分。死後事務委任契約を結んで、万全の備えをとる。委任契約の内容として、例えば以下の事柄が考えられる。

・葬儀に関すること
・遺品整理の手配に関すること
・お墓や納骨に関すること

どの会場で葬儀を行うかなど、細かいことをまで決めておくのが肝心。作成した契約書は、公証役場で締結し、公正証書にすることが望ましいと岡さんは述べている。

*  *  *

本書には、遺言書の書き方や介護保険の受給手続きなどにも言及があり、終活を始める際に役立つちょっとしたハンドブックとしても活用できる。子どもがいない方は、一読すると安心できるはずである。

【今日の終活に役立つ1冊】
『子どもなくても老後安心読本』

https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20746

(岡信太郎著、本体税込869円、朝日新聞出版)『子どもなくても老後安心読本』

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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