取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「2人の母親がいる状態が小さい頃はとてもしんどくて。それに母と私の絆よりも、母と伯母の絆のほうが強く見えて、嫉妬も入っていたんだと思います」と語るのは、梢さん(仮名・38歳)。彼女は現在、都内にある自宅にて、専業主婦として旦那さんと2人暮らしをしています。梢さんは現在妊娠8か月。2か月前まで仕事を続けていたそうで、オーバーサイズの服を着ていることもあり、お腹の膨らみは注目して見ない限りあまり目立ちません。
隣にある叔母の家の従姉妹とともに育ち、一人っ子の寂しさは一切なかった
梢さんは大阪府出身で、両親との3人家族。近所には親戚の家が集中していて、隣の一軒家には母親の姉家族が暮らしていたと言います。
「母方の祖父母の土地に我が家を建てていたので、伯母の家が隣にあったんです。叔母の家は元祖父母の家で、祖母は伯母の家で暮らしていました。祖父はすでに他界していて、母親は姉妹。伯母は婿養子をもらい、私の母は嫁入りしてはいるんですが、母親の親族一同とほぼ同居しているようなものなので、父親はマスオさん状態です。伯母の家にも娘が2人いて、まさに女ばかりといった感じでした」
梢さんは一人娘ながら、従姉妹の姉妹とともに育ったため、一般的な一人っ子が抱くイメージではまったく育っていないとのこと。
「従姉妹は4つ上と1つ下で私は挟まれていて、母と伯母がとても仲が良かったこともあり、小さい頃から常に3人で一括りにされていたというか。すごく小さい頃は本当の姉と妹だと思っていましたから。だから一人っ子なのに、お菓子などもすべて三等分されていたし、お年玉も年齢順に少しの差をつけられていました。田舎あるあるなんですが、家の玄関はどちらも施錠されていなかったので、行き来し放題でした。昔は一度家の敷地を出てから伯母の家に行かないといけなかったんですが、少し大きくなると庭の仕切りの塀を簡単に越えられるようになったこともあり、家が2つある感覚でしたね」
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