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【娘のきもち】5人兄妹の中でずっと抱いていた劣等感。私にだけ厳しい父親のことがずっと疎ましかった~その1~

取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「兄妹の中で父は私に一番厳しかった。ずっと私のことが嫌いなんだと思っていました」と語るのは、千夏さん(仮名・37歳)。彼女は現在、都内の通信販売関連の企業で営業として働いています。胸まである手入れの行き届いた黒のストレートロングに、オリーブ色の総レースマキシ丈ワンピースにはデニムを合わせており、170センチを超える長身と姿勢の良さから凛とした雰囲気のある女性です。

執拗に父に構われる私。そのことが兄妹の軋轢を生んだ

千夏さんは愛知県出身で、両親と7歳上に兄、2歳上に姉、1歳下に妹、さらに2歳下に弟のいる7人家族。父親は祖父の代から続く不動産の仕事をしており、母親は持ちビルの1階で喫茶店を営んでいたと言います。

「うちはとにかく兄妹の多い大家族で、兄以外はみんな年齢が近いんですよ。周りにうちの家みたいな大家族はいなかったから少し目立っていましたね。小さい頃は共働きの忙しい両親に変わって、兄に面倒を見てもらっていました。兄は勉強ができて優秀で、いつも私のことをバカにしていたので、あまりいい記憶が残っていませんけどね」

兄以外にも姉も優秀で、部活のキャプテンや学級委員を任されるタイプ。妹は学校の成績は良くないものの可愛くて愛想が良く、学校の人気者だった。そして弟は我が道を行くタイプで常に単独行動を好むような変わり者。みんなそれぞれ個性があり、自分だけが無個性だと悩んだこともあったそう。

「個性豊かな兄妹たちに劣等感を持っていたことは両親は知らないと思います。父親からは私だけやたらと厳しく育てられました。兄妹の中で私だけ小学校の頃から塾に入れさせられたり、中学受験をさせられたりしましたから。しかも理由は『お前は高校からだと追いつけない』という理由で。私の成績は中の上くらいで、妹は中の下くらいだったのに、いつも目をつけられるのは私。中学受験に失敗したことでさらに自分に自信が持てなくなっていきましたね」

父親は兄妹が多いからといって大学を諦めてほしくないという思いがあり、兄妹全員を大学まで行かせてくれます。千夏さんは名古屋の公立の大学に進学することができたそう。しかし父親からの干渉は続きます。妹は千夏さんよりややランクの低い私立大学に入学するも、干渉している様子はなし。なぜ私だけと、その怒りを姉妹にぶつけるようになっていったとか。

「私は昔から言いたいことを表では口に出せない内弁慶タイプで、自分みたいに厳しく扱われていない姉や妹によくあたっていました。姉とは普通のケンカでも、妹のことはバカにしてしまってましたね……。反抗期のイライラも親ではなく、姉妹に向かっていたのかもしれません。その時に姉から言われたことがあるんです。『いつも千夏だけお父さんに構われていてずるい』って。自分はそのことが嫌で嫌で仕方なかったのに、兄妹にはそう見えていたんだと、愕然としましたね」

とにかく1人になりたかった。大学卒業後に海外へ逃亡

さらに父親からの干渉は勉強からプライベートのことにまで及んでいきます。まだ大学生の20歳にして父親から『結婚』の言葉が聞かれるようになったそうです。

「まだ学生で20歳になったばかりでした。それなのに父は私にお見合い写真を持ってきたんです。相手はかなり年上の、父親の会社と取引のある地元の銀行の支店長の息子でした。姉や妹にはもちろんそんなことはしていません。私はどうしても納得できなくて、今まで父親に強くものを言ったことはなかったけど、今回ばかりはなぜだとキレてしまったんです……。

そしたら、『おまえだけやりたいことも、趣味もなにもない。結婚しかないだろう』と言われました。正直、当たっていましたけど……、20歳の娘に投げる言葉ではないと思います」

家族から離れたい。そんな思いを抱えていた千夏さんは大学卒業と同時にアルバイトで稼いだ貯金を握りしめて海外へ逃亡します。海外ではバックパッカーのような放浪を1年ほどしていたと言います。

「若さゆえの勢いってやつですね。とにかく1人になりたかったんです。日本にいると絶対に就職しないことを許してくれないと思い、就職活動をしていると嘘をついて卒業までやり過ごし、海外に言ってくると報告だけしてすぐに日本を離れました。海外では毎日が新鮮なことばかりで、とてもリフレッシュできましたね。そして、1年後に実家に戻るんですが、最初は地元を離れるつもりでいたんです。でも、親の仕事が親族トラブルで揉めてしまったことで、地元就職を選んだんですが……」

跡継ぎを巡っての親族間トラブル、そして地元企業での激務で体調を崩し、知人を頼っての上京。兄妹が続々と結婚していく中、千夏さんに70歳の父親が語った本心とは……。

~その2~に続きます。】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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