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【娘のきもち】70歳で見せた父の本音。「あと10年しか守ってあげられないから」~その2~

取材・文/ふじのあやこ

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、都内の通信販売関連の企業で営業として働いている千夏さん(仮名・37歳)。愛知県出身で、両親と7歳上に兄、2歳上に姉、1歳下に妹、さらに2歳下に弟のいる7人家族。5人兄妹の中、自分だけが父親から厳しくされていることに納得できなかったそう。とにかく1人になりたかった思いから大学卒業後に海外へ逃亡。1年後に日本に戻りますが、家族の状況は大きく変化していたと言います。

「日本に戻った直後は、家を出るために地方に就職することを大前提に考えていました。でも、父親の会社の跡継ぎ問題で親族間に軋轢が生じていたんです。祖父の仕事を継いだのは次男の私の父親で、父親は跡継ぎとして自分の息子である兄を考えていました。そこに父親の長男である、私の伯父が跡継ぎには自分の娘婿をと主張してきたんです。その後何があったかは知りませんが、結局伯父の娘婿が会社を継ぎました。その時に、持ちビルの権利もなくなってしまったんです。その結果、1階の喫茶店は閉店。母親は仕事を奪われる結果となり、そんな中で自分だけ家を離れるわけにはいかないと思いました」

父から初めてもらった「よく頑張った」の言葉

当時はIT企業が続々と誕生していたITバブル期。千夏さんは苦労することなく名古屋の企業に営業職として就職することができたそうですが、営業職の洗礼を受けることになります。

「就職してからが本当に大変だったんですよ。そこの営業職はとにかくノルマがきつく、1日に1件も取れないと先輩から『役立たず』などの厳しい言葉を浴びせられることもしばしば。しかも、固定給+歩合だったのでもらえる給料もごくわずかなのに、朝から深夜までずっと働き詰めでどんどん体が疲弊していきました。でも、1年間フラフラしてからやっと就職できたところなので、簡単に辞めたいなんて言えないんですよ。結果、激務が続いたことで体調を崩してしまいました」

その後も体調を偽りながら仕事を続けたそう。ついには過食症を患い、10キロ近く体重が増加します。そんな姿を両親は見てくれていたと千夏さんは語ります。

「両親は私の変化に気付いていたんです。もう仕事に行くことができないと追いつめられて朝方に吐いたことがあったんですが、その時に『そんな会社行かなくていい』と言ってくれました。その一言で救われたような気持ちになったのを覚えています。仕事は3年ほど続けたんですが、父親から初めて『よく頑張った』という言葉をもらったのもこの時でした」

「自分の代わりになる存在を」上京後に見えた不器用な父の本音

しばらくアルバイトをしながら半年間の療養期間を過ごします。そんな中、在職中から親身に相談に乗ってくれていた元上司から声をかけられ、東京で正社員として再び働き出します。次こそは仕事を頑張りたい!しかし、その思いを試すように、兄妹の結婚ラッシュが始まり……。

「私が休職中に兄が、上京したばかりの時に姉が、そしてその1年後に妹が結婚しました。仕事を頑張りたい思いがあったのに、再び父親からの『結婚しろ』という干渉が始まりましたね。父親は旅行やアウトドアが好きで、家族で年に3回ほど海や温泉に行っているんですが、毎年孫が増えて参加人数が増えていくんですよ。弟はまだ独身なんですが、北海道で暮らしており不参加。私だけが居心地の悪さを感じながら旅行に参加していました」

それでも帰省の機会を作り、家族旅行に参加し続けた千夏さん。2年前に参加した時には孫が7人に増えたことで両親と会話をする機会はまったくなくなっていたとのこと。そんな中、温泉旅行に行った時に兄妹が孫たちを連れて遊びに行ってしまい、父親と2人きりになったと言います。

「『まだ結婚しないのか』といつもの小言の後、『自分ももう70歳を越えて、男の平均寿命から考えるとあと10年。俺が死んでしまったらもう助けてあげられない。パートナーを作ってほしい。お前は一番俺に似ているから』と。

父は開口一番に憎まれ口を言ったり、どこか一言多いので、近所付き合いもあまり上手じゃなかった。祖父の仕事を継いだ後も兄弟仲が結局こじれて仕事を奪われる結果になっていましたから。自分が1人で生きていけるタイプじゃないから、そんな自分に一番似ている私を心配していたんだなってやっと父の干渉の意味を理解することができました」

現在千夏さんは家族旅行の他にも両親と3人で過ごすための時間を作っているそう。「父親からの『結婚しろ』アピールはまだ続いていますよ。でも、そんなに私のことが心配=好きなんだなって思えるようになったから、前より辛さは無くなってきています。結局姉が子供時代に見せた私への嫉妬は当たっていたんですよね。自分だけが見えていなかったんだなって改めて反省しています」と千夏さんは語ります。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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