取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「今でこそいい関係性を保てていますが、昔はどこまで頼っていいのか、どちらに頼るべきなのかを毎回悩んでいたような気がします」と語るのは、瞳さん(仮名・34歳)。彼女は現在、都内にある病院で受付の仕事をしています。瞳さんは母親と2人暮らしをしていて、離れて暮らす父親のところにも頻繁に顔を出しているそう。両親は離れて暮らしているものの、離婚はしていません。
物心がついたときには父親には別の帰る家があった
瞳さんは神奈川県出身で、両親との3人家族。物心がついたときには父親は別の家で生活をしていたと言います。
「たまに父親の姿を家で見ることはありましたが、夜になるといなくなっていました。両親が家で揃っているところはあまり記憶にありません。まったくと言っていいほど一緒に暮らした記憶がないのに、私は昔からその男性を父親だと認識していたのが不思議ですよね」
家族というよりも母親、父親といった個別の関係性ながら、お互いの祖父母も全員が瞳さんを構い、寂しい思いはしなかったそう。
「母方の祖父母が元気なときはよく遊びに来てくれていたし、父方のほうとも父親を含めて4人でよく出かけていました。今日は誰がどこに連れていってくれるんだろうって思っていたほど。私と遊ぶ時間割があったみたいに、みんな別々だったから一人の時間があまりなくて。それに母親以外はなんでも買ってくれていましたね(苦笑)」
小さい頃は良かったものの、そのバランスは思春期に入り、気を遣うものになっていったとか。
「親とか親族とかと一緒に過ごしたくない時期ってあるじゃないですか。それをわざわざ私に会いに来てくれている人たちに言えるわけがない。祖父母は足を悪くしたり加齢などで一緒に出かけることは減っていったんですが、父親とは……。中学生ぐらいのときには私の携帯に直接父から会う約束を取り付けるメールが来ていたんですが、断れないまま月に一度は会う関係になっていました。いつからか父親は家に来なくなって、外で会うようになっていたんです」
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