夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。火曜日は「暮らし・家計」をテーマに、川合俊一さんが執筆します。
文/川合俊一
これから株式投資を始めようという人に、ぜひ、励行してほしいことがあります。
それは取引を「記録する」ことです。
これは自戒を込めてお話するのですが、株式投資というと、
どの銘柄を選べばいいのか?
どのタイミングで買うべきか?
といったことに関心が集中しますが、これらと同じくらい「取引の記録」は重要です。
実は僕自身、これが本当に苦手でした。株式投資を始めた頃、前にも(連載第2回)お話しましたが時代はバブルだったので、買った直後に下がっても、その後に上昇し、いつのまにか利益が出ていた、といったことがしょっちゅうで、特に取引を記録していなくても問題はありませんでした。
しかし、いつの間にか上昇していたなどというラッキーは次第に少なくなり、損失が発生するようになってきます。すると、取引を記録して残していないと、いま自分がどれだけの金額を投資しているのか、利益はいくら出ているのか、あるいは損をしているのかといったことがわからなくなってきます。
そんな状態に陥ってしまうと、投資を続けることが難しくなってきます。自分の損得の状況は常に把握していなければならないのです。
現在は、口座を開設している証券会社には、自分の取引の履歴が残っているので、スマホなどで簡単にチェックできます。
でも、買った銘柄が思うように上がらず、損失が重なってくると、だんだん履歴を見なくなる人が結構いるんですよね。自分が損をしている状況を見たくない、という気持ちは痛いほどわかるのですが、放置してしまうとさらに損失が拡大する可能性があります。
損失が出ている銘柄を売却することを「損切り」といいます。
株式投資においてはこの損切りは非常に大切です。
株価が何年にもわたって下落し続けることは、ほんとによくあることで、保有し続けているとどんどん損失が膨らんでいきます。
損切りは、損失を限定する行為で、売却した資金で別の銘柄を買うこともできます。自分の取引の履歴を見ず、損失額を把握していないと、損切りのような冷静な判断もできなくなってくるでしょう。
さらに(できれば)、単に投資金額や損失額を記録するだけでなく、「なぜその銘柄を買ったのか」という根拠も記録しておいてほしいのです。そうすると、後々、自分の予想が当たったのか、外れたのかが検証できるようになり、その反省が次の投資に生きてきます。
買った根拠がわかっていると、損切りもしやすくなります。
株価が下がり、予想が外れたことがわかれば、その銘柄を持っている理由がなくなるからです。
ま、「言うは易く行なうは難し」で、僕もあまりできてはいないんですけどね……すいません。
2020年、東京五輪で株価はどうなる?
ここで、これからの日本の株価の動向について、僕なりの予想を述べておきましょう。
よく、五輪開催国の株価は、開催する前までは上昇し、開催後には下がるといわれます。その根拠は、五輪開催の経済波及効果の大きさにある、とされています。
たしかに、開催前は、設備やインフラの新設・改善に伴う建設需要や雇用創出の効果がありますし、開催中は、訪日外国人旅行者の増加による「インバウンド需要」を見込めます。
しかし、開催後には、そうした経済効果が一切なくなることから、どうしても景気が落ち込むのは避けられない、というわけです。
ただし、これまでのデータを眺めてみると、上記の推測は必ずしも当てはまっていません。
2000年以降の五輪開催国の状況を見てみると、ほぼ想定通りになったのは、2000年開催のシドニーぐらい。
ほかの2004年開催のアテネ、2008年開催の北京、2012年開催のロンドン、2016年開催のリオデジャネイロは、開催前に株価が大きく下がったり、開催後に長期の上昇トレンドに入ったりと、それぞれバラバラな動きをしています。
しかし、その実態をよく見ると、アテネの場合は2000年にITバブル崩壊が起きていますし、北京のときは開催年にリーマン・ショックが起きているなど、株価を動かす個別の要因がありました。
したがって、東京五輪に関しては、特に大きな出来事がなければという前提に基づいて、開催前に日経平均株価はいったんピークをつけ、開催後は伸び悩むと見ています。
なので、開催前、株価が高値圏に来たら売却して、開催後の下がったところで買い直したいですね。
はたして、この目論見通りに行くんでしょうか。2年後には答えが出ているはずです。
文/川合俊一(かわい・しゅんいち)
昭和38年、新潟県生まれ。タレント・日本バレーボール協会理事。バレーボール選手としてオリンピック2大会に出場(ロサンゼルス、ソウル)。