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文/鈴木拓也

40代も半ばを過ぎると、それまでは漠然としか思っていなかった「親の介護」が、にわかに現実味を帯びてくる。

「うちの両親はまだ元気だから大丈夫だろう」などと高を括っていると、いざ要介護となった際に、予想もしない苦労や面倒に直面するから注意が必要だ。

具体的に、どんな苦労が襲いかかり、どう乗り切るのかを書籍『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(ダイヤモンド・ビッグ社)にまとめたのが、エッセイストの鳥居りんこさんだ。

実は、鳥居さん自身も、親の介護を呑気にかまえていた一人。傘寿を迎えようとする母親が、歩行障害が進行する難病に罹っていると分かって大慌て。自宅介護では手に負えなくなり、老人ホーム入居に踏み切るところから、本書は始まる。

一読して印象に残るのが、「介護とは、想定を超えてお金がかかる」という点。そうなる理由は幾つかあるが、しばしば病院に入院するため、老人ホーム入居費と入院費の二重負担となるのが大きい。出費を大甘に見込んでいた鳥居さんは、資金繰りで大きな苦労を背負いこむ羽目に………。

本書では、単なる苦労話だけでなく、介護費用を節約できる制度についても解説されており、「介護は他人ごとではない」我々の多くにとって実用性が高い。

例えば、「高額介護サービス費制度」。これは、介護保険を利用し、1か月に支払った自己負担額(1割または2割)の合計額が上限を超過した場合、超過分が払い戻されるという、ありがたい制度。その上限額も、個人・世帯所得によって変わるという「特定入所者介護サービス制度」という別の制度で決まっており、このややこしい仕組みを1制度に1~2ページを割いて明解に説明している。

このほか本書では、ATMで暗証番号を数回誤入力したら「超面倒臭い手続き」が要るので、親の記憶力がまだ大丈夫なうちに暗証番号を聞いてメモしておくとか、成年後見人制度や家族信託といった馴染みない制度もあらかじめ知っておくべしといった、鳥居さんの経験に基づくアドバイスがちりばめられている。

いわゆるハウツー的な本には書かれていない、生の体験にも多くのページが割かれており、自分も介護を始めたときに想定される事態がイメージしやすい、という点でも本書を推したい。

【今日の介護に役立つ1冊】
『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』
https://www.diamond.co.jp/arukikata/9784478821534.html
(鳥居りんこ著、本体1,200円+税、ダイヤモンド・ビッグ社)

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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