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暮らし

大半の高齢の親は子との同居は望んでいない!? 遠距離介護で自滅しない選択

文/鈴木拓也

郷里に住む親の介護で自滅しないための「遠距離介護」という選択

■大半の高齢の親は子との同居は望んでいない

遠く離れた郷里に住む父親が、病を得て寝たきりになりかけている。高齢の母親1人に父親を看させるわけにもいかず、これを機に両親を呼び寄せるべきかどうか…
そんな悩みを持つ人が増えている。

子の暮らす地域に親が転居してもらうというのは、一見合理的に思える。しかし、長く住み慣れた所を離れてまで子のそばに住むつもりはない、という親が、実は多数派。内閣府の最近の調査では、1人住まいの高齢者が「今のまま1人暮らしでよい」と考えるのは76%に及ぶ。子の方が郷里にUターンしてくるのも、大半の親は切望していない。

■介護サービスを活用した「遠距離介護」という選択

そこで、子にとって第3の選択肢となるのが「遠距離介護」だ。これは、必要に応じて子が親の家に通って介護するというやり方。時間的な制約や交通費の負担はあるが、今の仕事・生活を維持できるなどのメリットがある。

遠距離介護には「介護保険などのサービスを利用することが不可欠」と説くのは介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。太田さんは著書『遠距離介護で自滅しない選択』のなかで、(サービスを利用せず)子だけで介護をまっとうしようとするのは、「自滅」につながると釘を刺す。今では、自治体から民間までさまざまなサービスがあり、これらを利用しない手はないのは確かだ。

■サービスの利用を拒否する親は多い

ところが、である。こうしたサービスの利用に「ヘルパーが来たら疲れる」「デイサービスなんて、年寄りばかりのところには行けない」などと言って、親の側が拒否する傾向があるという。

遠距離介護開始時の子の悩みの筆頭に挙げられるこの問題について、太田さんは、「うちの親はどのようにアプローチすれば耳を貸してくれるだろう」と考えることを促す。そのヒントとして、例えば以下の処方箋を太田さんは記している。

・家族の言葉に耳を貸さない親でも、「先生」という立場の人には弱い傾向が…。そこで、こっそり主治医にお願いして、主治医から介護保険の申請を勧めてもらう。「先生が言うなら仕方ない」と納得する親は多い。
・娘の言葉には耳を貸さないが、親にとっての息子の言葉には弱い親は多い。そこで、男兄弟がいる場合は、親への提案をまかせる。(本書61pより)

親の拒否に根負けして、子が介護離職などすれば、「自滅」のリスクは一気に高まる。サービスの活用は大前提の姿勢で臨もう。介護保険の申請は、地域包括支援センター等で無料代行するシステムがあるので、帰省が難しいときは依頼するなど、いろいろ手はあるものだ。

■家族以外の「見守る目」を確保

遠距離介護をする子は、ふと「親になにかあったら」という不安につきまとわれることがある。

こんなとき、「遠くに住んでいるから仕方ない」ではなく、「できることはやっておく」方向性を太田さんはすすめる。

例えば、緊急通報システム。ペンダント式の通報ボタンを親に所持してもらい、緊急の際は親がボタンを押すと、地域のセンターや消防署などに通報されるというシンプルな仕組み。多くの自治体が、1人住まいの高齢者に無料または安価で提供しているので、利用を検討したい。
これとは別に、主に自治体が提供する「みまもりサービス」というものもある。乳酸飲料の戸別配布時に安否確認したり、新聞受けに新聞がたまっていないか確認するなどあり、めったに帰省できない子が過度に心配するような状況を回避できる。

■願い事や愚痴の相手はよく考える

本書は、遠距離介護を続ける上で発生しうる、人間関係上の問題についても言及している。
その1例が、片道6時間の実家に住む母親が入院したときの出来事。子は、実家の近所に住む叔母に、入院費用の支払いなど対応する保証人になってくれるように頼んだ。それが、叔母の逆鱗に触れ「姉妹と、親子の関係はまったく違う。甘えるな」と言われてしまう。
太田さんは「自分は遠いからと、何でも近所の親戚にお願いする」のは、「自滅する人」のパターンだと諭す。そうではなく「自分に『できないこと』を親戚にお願いする」のが大事。また、次のようなアドバイスも。

親の周囲にいる親戚や近所の人たちに腹が立つことがあっても、「そうですね」、「すみません」、「ありがとうございます」という言葉で「かわす」ことが、結果として親と自分の生活を守ることにつながるケースもあります。(中略)今後も、何かのときには「世話になる可能性」があるのならば、グッとガマン。そうは言うものの、頼り過ぎは禁物。彼らが手を貸してくれているのは、あくまでも厚意からです。頼りにするけれど頼り過ぎない、のさじ加減が大切です。(本書102~103pより)

さらに、愚痴や悩みごとを打ち明ける相手も考える必要があるという。何を「考える」かと言えば、その人が「味方」かどうか。親と同居しながら介護をした経験のある人に遠距離介護の悩みを打ち明けて、「毎日一緒にいるわけではないのだから、気楽でしょう」みたいな返答がきたら、あなたはどう思うだろうか? 仲の良い人でも「理解してくれるとは限らない」点は、肝に銘じておくべきだろう。

*  *  *

このように本書には、遠距離介護をスムーズに続けるための考え方やノウハウがたくさん盛り込まれている。高齢の親と離れて暮らしている方は、一読をすすめたい。

【今日の心の健康に良い1冊】
『遠距離介護で自滅しない選択』

https://www.nikkeibook.com/item-detail/17684

(太田差惠子著、本体1400円+税、日本経済新聞出版社)

遠距離介護で自滅しない選択文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、https://www.nikkeibook.com/item-detail/17684フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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