取材・文/わたなべあや
「猫はこたつで丸くなる」という歌詞の童謡がありますが、のんびりこたつで丸まっていると思ったら、意外と俊敏で、なかなかキャリーバッグに入ってくれないと手を焼いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方に朗報です。今回は、猫を簡単にキャリーバッグに入れる方法を、大阪市にあるはる動物病院院長で獣医師の藤原武弘先生に伺いました。
■猫様はデリケート
犬も猫も環境の変化に敏感ですが、猫はとてもデリケート。一度病院が嫌いな場所になってしまうと、連れて行かれる気配を察知しただけで、捕まえられないように逃げてしまいます。
もうそうなったら、人間は完敗。狭い隙間や手の届かない家具の上など素早く動き回って、手に負えなくなってしまいます。そして、猫を病院に連れていくのが億劫になってしまう飼い主さんが案外多いのです。
でも、だからといってずっと連れて行かないわけにもいきませんよね。なんとかキャリーバッグに入れて連れて行かねばなりません。
では、なぜ猫は「病院に連れて行かれる」と分かるのでしょうか? 実は、その秘密はキャリーバッグにあるのです。
犬と違って猫は散歩をしないので、普段は家の中にいる子が多いのです。たまの外出といえば病院くらい。そこで飼い主さんが伝家の宝刀のように出してくるのがキャリーバッグなのです。
これでは猫の中で「キャリーバッグ=病院」という固定観念ができ上がってしまいます。
■キャリーバッグをお気に入りの場所にする
人間でもお出かけといえば病院なんてことになったら、嫌になってしまいますよね。では、猫にとって、キャリーバッグをお気に入りの場所にするにはどうしたらいいのでしょうか。
まず、キャリーバッグをどこかに片付けるのをやめましょう。動物病院に出かける時だけキャリーバッグを出すのではなく、猫がいつでも中に入れるように部屋にキャリーバッグを置くのです。そして扉の部分は、外れるものは外して、外れないものは開けておきます。猫は寒がりなので、温かい素材の敷物を入れてあげると心地よい場所になるでしょう。
ご飯を食べる場所にするのも効果的です。お気に入りのおやつを中に入れるという必殺技も駆使してみましょう。そう、もうお分かりのように、「キャリーバッグ=大好きな場所」にすることがポイントなのです。
■猫がいやがらないキャリーバッグの選び方
キャリーバッグの選び方ですが、ポイントは2つあります!
【ポイント1】プラスチック製のもの
まず、猫の安全のために飛び出してしまわないものを選びます。柔らかい素材のものやファスナーで蓋を閉めるものは、猫が鼻で開けて飛び出す可能性があるので不向きです。
また、ある程度強度がないと、大きな音にびっくりするなど、何かの拍子に猫が暴れて飛び出す可能性があります。
【ポイント2】横と天上に扉があるもの
横扉だけでなく天井扉があることで、猫の出し入れが簡単にできます。キャリーバッグは、横扉だけのものが多いのですが、ほとんどの猫は病院でキャリーから出そうとすると、奥で固まって出てきません。
キャリーを斜めにして出したり、無理に引っ張り出したりすると診察前に恐怖感を与えてしまいます。天上扉がない場合、上下に分かれるタイプのものもおすすめです。
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以上、猫を簡単にキャリーバッグに入れる方法をご紹介しました。
日頃からキャリーバッグに慣れさせて、心地いいと感じる場所にしてしまうこと。それが猫にとっても安全で快適に移動できる方法です。そして、病院に行く前に猫と格闘しなくてもいいので飼い主さんのストレスにもなりません。災害の時にも役に立つので、ぜひこの方法を試してみてくださいね。
取材協力/藤原武弘先生
はる動物病院院長。獣医師。大阪府立大学獣医学科卒業。大阪市獣医師会理事。大阪どうぶつ夜間急病センター取締役 http://haru-animal-hp.com/
取材・文/わたなべあや
1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。2015年からフリーランスライター。最新の医療情報からQOL(Quality of life)を高めるための予防医療情報まで幅広くお届けします。日本医学ジャーナリスト協会会員