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誰かに話したくなる「作家と猫」の知られざるエピソード3つ

取材・文/わたなべあや

古来、猫を愛した作家はたくさんいます。たとえば、夏目漱石宅に迷い込んできた黒猫は、福をもたらす「福猫」だと言われたのですが、鳴かず飛ばずの作家であった漱石に「吾輩は猫である」というヒット作をもたらしました。この猫が亡くなった時、漱石が門下生に、わざわざ猫の死亡通知を送ったのは有名な話です。

歴史的な作品の誕生に欠かせなかった猫の存在とはどのようなものであったのか。今回は、そんな「作家と猫」をめぐるエピソードを3つご紹介しましょう。

■1:猫好きだった室生犀星は「猫のうた」という詩を残した

室生犀星(むろう・さいせい)の「動物詩集」には、“猫のうた”という詩が収められています。「やさしい人にはついてまはる、きびしい人にはつかない」など、猫の性質を細やかなところまでよく知っていて、相当の猫好きだったことが伺えます。

犀星は茶トラの愛猫ジイノを飼っていて、一緒に火鉢にあたっている写真も残されているのですが、ジーの尻尾が梅の実のように小さいのがご愛嬌です。

また犀星の作品には猫がたくさん登場しますが、それだけでなく、小鳥や犬、昆虫も飼っていて、庭も手作りしていました。小動物や植物だけでなく、蝿の詩も書いています。そんな作品からは、地球上の生きとし生けるものを愛おしむ犀星の心が伝わってきます。

■2:佐野洋子は猫を看取って死生観が変わった

たくさんの猫を飼っていたことでも知られる佐野洋子(さの・ようこ)の作品には、『100万回生きた猫』をはじめ、猫が登場する絵本が多数あります。またエッセイにも猫が度々登場します。とくに「フネ」という猫は印象深かったようで、ガンで亡くなったふねの看取りは、佐野洋子の死生観を変えたほどでした。

後に佐野洋子は、「人間は手術をするとかしないとか病気になると大騒ぎする。しかし、猫は潔く、静かに死を受け入れる」と、当時の感慨を語っています。

■3:寺田寅彦と内田百間、愛猫との別れに向き合う姿は対照的だった

寺田寅彦(てらだ・とらひこ)と内田百間(うちだ・ひゃっけん)は、共に猫好きだったのですが、作品を読み比べると、愛猫との別離に向き合う姿が対照的なことが分かります。

寺田寅彦は、文学者であると同時に物理学者でもあったのですが、猫が亡くなって悲しいと言いつつも、非常に客観的かつ冷静に自分の心を見つめ、分析しているのです。しかし、「文章(猫のことを)を書くのは、慰めだ」とも語っていて、愛猫を失った悲しみは隠せないようでした。

一方、内田百間は、愛猫が失踪してしまったことで、大の大人とは思えない、我を見失うほどの悲嘆に暮れました。随筆『ノラや』にも、悲しみの深さが切々と綴られています。例えば、風呂場にいることが多かったノラのことを思い出すので風呂にも入れず、卵焼きを一緒に食べた思い出に胸を締め付けられるので、寿司も食べられない……といったありさまだったのです。

*  *  *

いかがでしょうか。このような作家と猫の知られざる関係性にスポットを当てた企画展「作家と猫」が、福井市橘曙覧(たちばなのあけみ)記念文学館で開催されています(~2018年5月13日まで)。同展では、夏目漱石、宮沢賢治、大佛次郎、池波正太郎、向田邦子など、明治~昭和の作家12人の猫にまつわる作品と写真を展示。それぞれの個性あふれる猫とのエピソードに触れることができます。

他にも同展では、谷崎潤一郎が愛猫「ベル」が亡くなったことを悼み、猫の剥製を作って書斎に飾っていたエピソードなど、普段あまり知られることのない作家と猫の話が、縁の品とともに数多く紹介されています。お近くにお寄りの際はぜひ。

【開催概要】
企画展「作家と猫」
会期:2018年3月15日(木)~5月13日(日)
会場:福井市橘曙覧記念文学館
住所:福井県福井市足羽1-6-34
TEL:0776-35-1110
会期中無休

福井市橘曙覧記念文学館

展示中の夏目漱石「吾輩は猫である」

取材・文/わたなべあや
1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。2015年からフリーランスライター。最新の医療情報からQOL(Quality of life)を高めるための予防医療情報まで幅広くお届けします。趣味と実益を兼ねて、お取り寄せ&手土産グルメも執筆。

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