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獣医さんが教える「譲渡犬」をわが家に迎える際のポイント

譲渡会の様子。

取材・文/柿川鮎子

犬を飼おうと考えた時、最初の選択肢として「譲渡会」を考える人は少ないかもしれません。しかしペットショップで買うのではなく、「譲渡会」で犬を譲り受けるという人は徐々に増えています。それはつまり犬の「里親」になるということでもあります。

そこで今回は、公益社団法人日本動物福祉協会で長年にわたって愛護活動を行ってきた獣医師・兵藤哲夫先生に、犬の譲渡を成功させるポイントについて伺いました。

ポイント1:譲渡団体の活動やポリシーに納得できるか

兵藤先生はペットの譲渡に関して、最初に信頼できる団体かどうかが大切だと教えてくれました。どうしても譲渡してもらう犬の方に目が行きがちですが、譲り受ける団体が重要なのだそうです。

愛護団体によって譲渡の方法や、費用などが異なります。できれば信頼できる団体から譲り受けるべきだと兵藤先生は言います。

「私は日本動物福祉協会の理事として、横浜支部の設立と同時に譲渡会を行ってきましたが、きちんと犬や猫の幸せのために活動しているかどうか、その点を把握しておくことが大切です。どんなポリシーを持って活動をされているのかとか、譲渡に関する審査やトライアル、そして大切な費用に関してもきちんと最初から説明してくれるところであれば、安心できますね。

団体の人の話をよく聞いて、その団体の活動に納得できるかどうかが大切だと思います」

「犬を見るのも大切ですが、人や団体を見るのも大切です」と兵藤先生

「譲渡に関してはNPO法人が主催するものから、2~3人のボランティアで行っているところまで、組織の形態や規模はさまざまです。規模の大小ではなく、譲渡に関してどのような姿勢で取り組んでいるか、そうした点をきちんと把握した上で、自分と相性の良い犬を探す方が後でトラブルになりません。

犬じゃなくて人を見る。信用できる団体かどうかは重要なポイントです」

ポイント2:譲渡費用に関して最初にきちんと説明してもらえるか

特に費用に関して、きちんと説明してくれる団体を選ぶと、トラブルを防げると兵藤先生はアドバイスしています。

「避妊・去勢をしたらその費用を団体が負担すると言われたので、手術後に団体へ請求したところ、『無料で譲渡したのだから、それぐらいの費用は飼い主さんが負担すべきだ』と断られた飼い主さんもいました。さらに、『団体の協賛金として年間12万円も支払うように請求されたのですが、どうしても支払わなければいけないのでしょうか?』と相談に来られた人もいます。あらかじめ費用に関して、どんなシステムなのか、きちんと説明を受けましょう」

基本的に譲渡会で犬を譲り受ける時は、費用は無料です。しかし、団体によっては一定額の費用が発生するケースもあります。譲渡前に接種するワクチンや避妊・去勢手術など健康管理にかかったコストを飼い主さんが負担するように求められるケースです。

この場合も納得できる金額かどうか、さらに、最初にこうした費用が必要であると説明をしてくれる団体を選ぶ方が良いと兵藤先生はアドバイスしています。

ポイント3:譲渡審査が厳正であるか

譲渡を受ける際には必ず審査を受けます。そのための審査は厳しくあるべきだと兵藤先生は考えています。

「なぜかというと、そもそも譲渡というのは飼い主が何らかの理由で飼育できなくなった犬を新たな飼い主へと譲渡するのが目的だからです。犬の幸せを考えて譲渡先を決めるためにはきちんとした審査が必要です。ご高齢で一人暮らしの女性が大型犬を飼育するのは、かなり訓練されていたとしても難しいでしょう。引き取ったとしても無理だった場合はまた、別の譲渡先を考えなければいけません。犬にとってはまた別の人と別の暮らしに慣れねばならず、負担です。マッチングのための審査は厳正であればあるほど、犬にとって優しい、信頼できる団体だと言えるでしょうね」

「また、自治体の愛護センターなど、厳格な審査をしている団体は、保護した犬や猫を飼い主さんに押し付けてくることはありません。何となく見学に行ったのに、どんどん決められてうちの子になってしまった、という人もいましたが、そういうケースは後で問題が出てきた時に、なかなか乗り越えることができません。押し付けてくるようなところはやはり何か問題があると思って、様子を見た方が良いでしょうね」

譲渡は成犬が中心で子犬は少なく、一頭の子犬に希望者が殺到します。

ポイント4:トライアル制度があるか

犬と飼い主とのマッチングを成功させるためにも、トライアル制度は重要です。一定期間、いっしょに暮らして、犬と安心して生活できると判断した段階で、正式に譲渡を受けるのがトライアルです。

「欧米ではトライアルが一般的で、すぐには譲渡権を渡しません。何かトラブルがあるとすぐに犬を返してもらえるようにしておくためだと言っていました。日本でもお試し期間として一緒に暮らしてみるのは重要です。吠え声がうるさいとお隣からクレームがつくかもしれません。朝晩のお散歩が意外と負担だったりもします。飼ってみないとわからないことはたくさんあるので、トライアル制度は有効活用した方が良いですね」

*  *  *

以上、兵藤先生に伺った「譲渡を成功させる4つのポイント」をご紹介しました。

「もし、犬を飼育したいなと思ったらぜひ、自宅近くの動物愛護センターなどへ問い合わせてみてはいかがでしょうか。実際、日本の動物愛護活動がどんな現状なのかもわかると思いますし、あなたの人生を変えるような、素晴らしい犬との出会いがあるかもしれませんよ」(兵藤先生)

ちなみに兵藤先生が関わっている日本動物福祉協会横浜支部の譲渡会は、毎月第三日曜日、兵藤動物病院内で実施されています。

談/兵藤哲夫さん
麻布大学獣医学科卒業後、1963年横浜市にて兵藤動物病院を開設。ヒョウドウアニマルケア代表として公益社団法人日本動物福祉協会理事、公益財団法人神奈川県動物愛護協会理事、横浜市獣医師会理事などを歴任。http://www.hyodo-a.com/

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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