獣医さんが教える「譲渡犬」を飼うことの5つの良い点

性格や癖が明らかになっている成犬はかえって対応しやすい面も。

取材・文/柿川鮎子

犬を飼おうと考えた時、最初の選択肢として「譲渡会」を考える人は少ないかもしれません。しかしペットショップで買うのではなく、「譲渡会」で犬を譲り受けるという人は徐々に増えています。それはつまり犬の「里親」になりたい人が増えているということでもあります。

そこで今回は、公益社団法人日本動物福祉協会で長年にわたって譲渡活動を行ってきた獣医師・兵藤哲夫先生に、譲渡犬の良いところについて伺いました。

譲渡犬はペットショップなどから迎えるより良い点がたくさんあると兵藤先生は言います。

良い点その1:出会いと感動の喜びが深い

まずは犬と飼い主の運命的な出会いという点で、ショップで購入する犬に比べると出会いの感動や喜びが深いと言います。

「神奈川県では野良犬が少なく、譲渡も少ないのですが、それでも譲渡犬の飼い主さんは『うちの子と出会った』と言いますね。目と目が合ったとか、抱いた時からピンときた、と言って大切に飼育されています。運命的な出会いという点では、ショップよりも喜びが大きいと思います」

良い点その2:飼い主と犬との最適なマッチングが可能

成犬が主体なので、ある程度性格や癖などが確立しています。とても寂しがりやだとか、甘えたい子であるなど、それぞれの性格に合った対応の仕方が可能になります。

ペットショップで子犬を飼ってしまうと、その子が成長してどんな性格になるのかわかりません。昼間、家を留守にするビジネスマンが寂しがり屋の子犬を飼ってしまうと、犬にとっても飼い主にとっても不幸です。

そうした飼い主と犬とのマッチングが適切にできるのは、譲渡犬ならではです。

良い点その3:ベストなしつけ方を選べる

飼育情報が確立していると、その子に合ったしつけの方法で教えることができるのもメリットのひとつです。よく、子犬でないとしつけができないと誤解されますが、犬はいくつになっても学び、しつけることが可能です。ただし、性格によってしつけの入りやすい方法があります。

飽きっぽく元気な性格の子には、飽きさせない様に遊びの中でしつけます。飽きっぽい子に長時間かけてじっくり教えてもあまり効果がないので、少しずつ一日何回にもわけて教えてあげる。そうした性格に合ったしつけが可能になり、優秀なコンパニオンドックにすることが可能です。

ベストなしつけ方を選べるのは、成犬ならでは。ペットショップの子犬にはない、譲渡犬のよいところのひとつです。

良い点その4:社会貢献になる

保護された犬や猫は施設に来たその日から、エサ代金や施設の管理費などの費用が掛かっています。飼い主さんはこうした犬に関わる費用を肩代わりしてくれる大切な存在です。

犬を家庭に引き取ってくれるということは、こうした飼育に関する維持費を飼い主さんが引き受けてくれるという意味で、立派な社会貢献活動をしていることになります。

良い点その5:命の尊さを深く実感できる

もしかすると安楽死させられる運命にあったかもしれない犬の命。譲渡とは、飼育することで命を救う行為でもあります。楽しく遊んでいる姿を見ていると、可愛い犬の命を救ってあげることができたという達成感を得られます。ペットショップではあなた以外の人が飼い主になるだけで、命を救ったことにはなりません。

「私のところに来る飼い主さんは皆、命を救えた満足感と感動をおっしゃいますね。愛犬がいるだけなのに、日々命の尊さを教えてもらえることになっているようです。素晴らしいことだと思いますよ」

「新たな飼い主になってくれる人は本当にありがたい存在ですが、あまり社会貢献とか、福祉とか、前のめりに考えると辛くなってしまいますね。それに、どうしても犬を飼育するには経験と知識が必要です。初めて犬を飼う人はしつけのプロの教えを受けることをお勧めします。また、高齢犬はどうしても病気に罹るリスクも高くなりますから、そうした費用もあらかじめ考慮しておいた方が良いでしょうね。

私自身はできるだけ犬も飼い主さんも両方がハッピーになれるような譲渡であってほしいと活動しています。ショップでの出会いも良いのですが、譲渡会でも素晴らしい出会いがあるかもしれませんよ。ぜひ、譲渡会にも参加してみて欲しいですね」

*  *  *

以上、譲渡犬の良いところについてご紹介しました。

「もし、犬を飼育したいなと思ったらぜひ、自宅近くの動物愛護センターなどへ問い合わせてみてはいかがでしょうか。実際、日本の動物愛護活動がどんな現状なのかもわかると思いますし、あなたの人生を変えるような、素晴らしい犬との出会いがあるかもしれませんよ」(兵藤先生)

ちなみに兵藤先生が関わっている日本動物福祉協会横浜支部の譲渡会は、毎月第三日曜日、兵藤動物病院内で実施されています。

譲渡会の様子。

談/兵藤哲夫さん
麻布大学獣医学科卒業後、1963年横浜市にて兵藤動物病院を開設。ヒョウドウアニマルケア代表として公益社団法人日本動物福祉協会理事、公益財団法人神奈川県動物愛護協会理事、横浜市獣医師会理事などを歴任。http://www.hyodo-a.com/

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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