写真・文/柳澤史樹
11月に横浜から引っ越してはじめた相模原での田舎暮らしも、気がつけば3ヶ月が経過。慣れない寒さも、大寒を過ぎてからは日差しに春を少しずつ感じるようになってきました。
そんななか、田舎暮らしを教わっているおだやか家のメンバーが全員で協力し、ビッグプロジェクト「自家製醤油づくり」がスタートしました。
しかも、原料はおだやか家の畑で育った大豆と小麦、全て手作りというレア醤油です。
私が引っ越した津久井というあたりでは、古くは醤油を自分の家でつくる風習があったそうで、近年になってその貴重な食文化復活の活動をしている、地元の名士に教わりながらのチャレンジです。
日本の料理には欠かせない調味料である醤油は、大豆と麦に麹菌を合わせ発酵させた「麹」をつくり、それに塩と水を加えた「諸味(もろみ)」を約1年間樽で保存、手を加えながら醸し、最後にそれを絞って完成するという大変に手間のかかる仕事。
今回はその第一段階である「諸味つくり」までの合宿のようすをみなさんにお伝えしたいと思います。
* * *
まずは醤油の原料となる、昨年夏から育てた津久井在来の大豆を、大きな釜でグツグツと煮て、同じく自分らで育てた小麦を煎りすりつぶして準備が完了。
麹屋さんから買った麹菌を、大豆と麦に合わせてよーくかき混ぜます。
その後、それをしっかりと計量、箱に入れて「室」と呼ばれる部屋に保管し、発酵がはじまる準備を整えます。
ようやくここまでたどり着いたのですが、そこからが長かった……。
実に4日間のあいだ、室の隣にある小屋に寝袋を持ち込み、夜中も目覚ましをかけて起きては1時間半ごとに温度や湿度をチェック。
途中で二度、温度を冷ますためにかき混ぜる「手入れ」をして、麹ができあがるまで待つのです。
おだやか家の主人である島崎さんをリーダーに、仲間たちも協力しての作業のあいだ、女性陣はご飯を作って持ち寄るという、まさに総力戦でのチャレンジでした。
そして待つこと4日目の朝、ついに「麹」が完成。
最初の写真と比べてみると、大豆にビッシリと麹菌がついているのが分かりますよね。
こうしてできた麹を室から出す「出麹」、塩をいれる「塩切り」という作業を経て、樽の中にいれたものに水を足し、ついに「諸味」が完成しました。
いやー長かった……。4日目が終わった夜に自宅に戻り、カラダがガチガチになっていることを実感しました。
しかし先ほども書いたとおり、これでようやく第一段階が終了したに過ぎません。これで放っておけば完成ではなく、このさき出来上がるまでの約1年間、中身をかき混ぜる「天地返し」を定期的に行っていくのです。
シンプルですが大変に手間のかかるこうした作業を行いながら「温度計もない昔の人はどうやってこの管理をしてたんだろう?」とか「麹菌を発酵させるとこうなり、それが食べられるものになるとどうやって会得していったんだろう?」など、疑問や先人達への感謝の念が沸々と湧き上がってきます。
こんなふうに日本に昔から伝わってきた醤油つくりを、自分たちで育てた大豆と麦を使って実現できるなんて、本当に感無量で、そしてとにかく一年後が楽しみ。
最高の醤油になってくれることを信じて、丁寧に手入れをしていきます。
これから諸味がどんなふうに変わっていくかも、みなさんと一緒に共有していきますので、楽しみに待っていてくださいね。
【おだやか家】
http://odayakaya.com/
写真・文/柳澤史樹
フリーライター/ 自分史アドバイザー。歴史を楽しむ情報サイトや企業ファンサイトのマネージメント、ビジネスコンセプトやコピーの執筆、多数の著名人取材などの他、現在は一般社団法人 自分史活用推進協議会認定 自分史活用アドバイザーとして、個人の軌跡を残す「自分史」を活動の軸とする。2016年暮れ、地元横浜から相模原市緑区へ引越し、農的暮らしと執筆生活の両立へシフトチェンジ中。