写真・文/柳澤史樹
この連載もすでに3回目になりました。先日泊まり込みで仕込んだ醤油づくりにつづき、今回は「おだやか家」で毎年開催されている「味噌づくりの会」の模様をご紹介します。
いきなり大げさなタイトルをつけてしまいましたが、これは本当の話。なぜなら私が、ここ相模原に引っ越してくることになったのは、この味噌と出会ってしまったからなのです。
2013年、友人に誘われて参加したある講演会で、おだやか家の島崎夫妻がその味噌を友人に手渡しする場所に居合わせ、私と妻が「自家製味噌!? 作りたい!」と食いついたのです。そこからすぐにおだやか家の「味噌づくりの会」に参加、畑にも通いだし、気がつけばここ相模原で暮らすことに。まさにあっという間でした……(遠い目)
前置きが長くなりました。早速まいりましょう。
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おだやか家の味噌づくりの会は、お昼ごはんをはさみ11時から16時くらいまで。最初の挨拶のあと、目の前に出されたのは利き酒ならぬ「利き味噌」。参加者のみなさんから歓声があがります。
それぞれ全く味わいも寝かせた年数も異なる16種類もの味噌をみんなでテイスティングし、自分の好みなどをシェアしたのち、はるさんの解説を受けます。
味噌には大きく分けて「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」の三種類があり、それは麹の種類によるものだそう。
そしてそれぞれの個性を知ったうえで、気候や体調によって味噌を使い分ける、また合わせ味噌にする、といった暮らしの知恵についても教わります。さらに3年熟成させた味噌には健康を保つための高い効能があると言われているそうです。古くから「味噌は医者いらず」と言われるゆえんですね。
もともと味噌は大好きでしたが、この講座を受けるまで、
さて、知識もしっかり学んだところで、いよいよ味噌つくり開始です。
味噌つくりは醤油にくらべてカンタン。煮た大豆をボウルなどですりつぶし、そこに塩と麹をあわせた「塩きり麹」を混ぜ合わせ、「味噌玉」と呼ばれる団子を作ります。
これらの作業を番重(ばんじゅう)という箱を囲み、みんなの手を合わせてやるのですが、そのことで、それぞれの手に住む常在菌(健康な身体に日常的に存在する微生物たち)も入り込み、それも味噌の個性になる、ということなんですね。
さて、味噌玉ができたら、それをみんなで樽のなかに「ビシッ」と投げ込んで、その上からしっかり押さえて仕込んでいきます。
こうすることによって、空気が抜けるのだとか。参加した人みんなで列を組んで「ビシッ!」「ビシッ!」と投げ込む姿はちょっと面白い(笑)
さて、樽のなか一杯に味噌玉を仕込んだら、その上にカビ防止のために蓋をします。女将が様々なやり方を試した結果たどり着いたのが、前年の味噌を表面に塗る「味噌蓋」。
こうして仕込んだ味噌をこのあと10ヵ月間熟成させ、12月のイベント「むすびの会」で開封します。
女将のはるさん曰く「味噌を仕込んだ味噌メイトとのご縁むすび、女将のおむすびを食べて、年をむすぶ」という意味合いが込められているのだそうです。どんな味噌に仕上がるのか、今からとても楽しみ。
最後に女将が準備してくれた水炊きをおいしくいただき、12月の再会を約束して、味噌つくりの会は和やかに終了しました。
すでに過去3年、うちの味噌は頂きものやお土産を除き全て手前味噌。それも自分らで夏の暑い日に汗だくになりながら育てた大豆で仕込むんですから、愛情も思い入れもひとしお。
前回仕込んだ醤油に比べて味噌は作るのもカンタンですし、毎回のご飯がこんなにおいしく豊かになるうえに健康にもいい。
おだやか家での味噌つくりの会、今年はすでに終了しましたが、来年はみなさんにも手前味噌つくりにチャレンジしてもらい、この豊かさを経験してもらえたら嬉しいです。
【おだやか家】
http://odayakaya.com/
写真・文/柳澤史樹
フリーライター/ 自分史アドバイザー。歴史を楽しむ情報サイトや企業ファンサイトのマネージメント、ビジネスコンセプトやコピーの執筆、多数の著名人取材などの他、現在は一般社団法人 自分史活用推進協議会認定 自分史活用アドバイザーとして、個人の軌跡を残す「自分史」を活動の軸とする。2016年暮れ、地元横浜から相模原市緑区へ引越し、農的暮らしと執筆生活の両立へシフトチェンジ中。