文/鈴木拓也

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レスリング選手として全日本選手権で通算7回優勝したのち、ソニー生命へ転身した金久保武大さん。
彼の著書『圧倒的な結果を出す思考の筋トレ』(小学館 https://www.amazon.co.jp/dp/4093116024)を紹介する記事第2弾は、入社1年目で数百件もの成約を得たことの、さらなる秘訣を取り上げたい。
「ワクワク感」がなければ挫折しやすい
ビジネスの世界では、頑張ってはいるが成果に結びつかないと悩む人多い。
そういう人には共通点があると、金久保さんは説く。
それは、目標が曖昧なこと。これだと、闇雲に行動するばかりで徒労に終わりやすいという。だから、明確な目標設定がカギとなり、それには5つの技術(スキル)があるとする。
1つめは、「期限の明確化」。いつまでに目標を達成するかを、まず決める。例えば、「6か月後の営業成績1位を獲得する」といった具合だ。これがないと、先送りの誘惑に負けやすく、行動のペースが緩慢になるなど、いいことはない。
2つめは、「アポ件数を週10件増やす」といった定量的な数値目標を掲げること。
ただし、目標はあくまで現実的なものとすることが重要で、これが3つめの技術となる。つづく2つの技術は、具体的であること、そして「ワクワク感」が伴うことだ。最後の「ワクワク感」とは、ぜひやりたいという感情とも言い換えられる。これがないと、ほかの4つの要素が満たされても、不安や苦しさを覚えた時に挫折しやすい。金久保さんにとっては、「成長が言葉や数字に変わる瞬間」がワクワク感の源泉であったという。
たとえば、契約が成立したあとにお客さまから「あなたで本当によかった」と言われたとき。毎月のランキングで、自分の順位が一つでも上がったとき。その一つひとつが、ゲームのステージをクリアするような感覚で、嬉しかった。(本書082pより)
もちろん、金久保さんとて、嬉しいことばかりではなく、うまくいかずつらい日もある。これを明日の希望につなげるためにも、ワクワク感は必須の要件といえそうだ。
日々の行動・感情を日記に書きつける
金久保さんが、長く続けている習慣に日記がある。
商談で、誰と会話し、どんなことが起きたかといった事実関係を記すだけでなく、その際に自身がどう感じたかも盛り込んでいるという。首尾よく成約に至っても、「この人とはもう会いたくない」と思うこともある。そうした感情も含め、日記として書きつける。
金久保さんはこれを「セルフモニタリング」と呼ぶ。継続することで、どんなタイプの人と相性がいいか、どんな場面で力を発揮できるかといったことが見え、さらなる成長につながるそうだ。
そこから一歩進んで重要になってくるのが、「自分をどう扱えばうまくいくのか」という視点だ。本書では、「自分の『取扱説明書』をつくる」と表現されているが、自分は朝型なのか夜型なのか、マルチタスクは苦手なのかどうか……。こういった自己分析を重ね、自身の特性を深掘りする。これをおざなりにすると、本来の力は発揮できない。
この「取扱説明書」のつくり方は、日々の行動・感情を紙に書き出すことから始まる。そして、夜になったら5分だけ振り返りをし、それも書き残す。習慣化することで、自分をより良くマネジメントできるようになるはずだ。
ハイパフォーマーの「当たり前」に近づく
金久保さんは選手時代から、結果を出すハイパフォーマーを観察してきたという。
それでわかったのは、そういった人たちは、ストイックな思考・行動の習慣を持つという共通点があることだった。
より具体的には、「当たり前力」の水準の高さを挙げる。はたから見て圧倒的な仕事をこなしているように見えても、当人にとってはそれが「当たり前」になっている。これが、ハイパフォーマーと、そうではない人たちを分ける大きな特徴だとする。
だから、もしハイパフォーマーになりたければ、この「当たり前」の水準を引き上げることが重要。これは、単なる努力論ではなくて、環境を変えることで達成できるものだ。たとえば、ダイエットに成功したいと思っても、周りがジャンクフード大好き人間ばかりであれば、それもおぼつかない。その場合、健康的な食生活が当たり前な人たちと交流を深めることで、打開できる。ビジネスも同じで、大きな成果を出している職業人と関わることが肝要。そうして自然と、自身の「当たり前力」も上昇していく。
金久保さんは、こうして社内でも稀に見るハイパフォーマーへと進化を遂げていったが、入社して数年で退職を考えるようになる。
【今日の仕事力を高める1冊】
『圧倒的な結果を出す思考の筋トレ』

定価1650円
小学館
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。











