文/鈴木拓也

ビジネスコンサルタントなど、複数の肩書で活動する金久保武大さん。
かつてはレスリング選手として勇名を轟かせ、2009年に全日本選手権で優勝したのを皮切りに、通算7回優勝するなどの実績をもつ。
引退後は、ソニー生命に営業職として入社。1年目で契約件数434件という、新入社員の歴代最高記録を打ち立て社長杯を受賞。同社から独立した後も、八面六臂の活躍ぶりで注目の存在となっている。
その金久保さんが先般上梓したのが、『圧倒的な結果を出す思考の筋トレ』(小学館 https://www.amazon.co.jp/dp/4093116024)だ。
本書のなかで金久保さんは、舞台を変えながらも成果を出し続ける秘密を、惜しげもなく明かしている。
その秘密の一部を、3回に分け紹介しよう。
才能・運に恵まれていたわけではない
金久保さんがレスリングを始めたのは、大学に入ってから。それまで柔道を続けていたが、結果は出せずじまいであったという。
柔道のおかげで身体はできていたが、似て非なるレスリングでは勝手が違う。全日本選手権で初優勝を果たしたのは、それから4年2月経った、大学院に進んで間もない頃であった。その後、世界選手権で世界5位となったことで、オリンピックで頂点を目指すという、大きな目標が生まれる。
しかし、2016年のリオ五輪では最終選考試合で敗退。「オリンピックに行けなければ、引退する」と心に決めていた言葉どおり、潔く競技人生にピリオドを打った。
それでも、遅いスタートながら全日本選手権で通算7回優勝という戦績は瞠目に値する。本人は、才能や運に恵まれていたわけではないと述懐するが、試行錯誤の末「成果を出す型」を編み出していた。
「型」をマスターして成果につなげる
本書で金久保さんは、その「型」を4つ挙げている。
その1つめは「ロールモデルを真似る」。最初のロールモデルは、高校時代の先輩だったという。その人は、「筋トレの量、試合の準備、日々の生活習慣、すべてにおいて一切の妥協がなかった」理想の人物。一挙手一投足を真似るうち、細部にこだわって積み重ねることが、パフォーマンスを向上させることに気づく。
それからの金久保さんは、いつもより1時間早く起床するなど、細かい改善を徹底的に習慣づけた。
2つめは「感情の波にのまれない」。優れたアスリートは、ゾーンという境地に入ることでパフォーマンスが最大になることはよく知られている。感情の起伏が大きいと、ゾーンにはなかなか入れない。そこで金久保さんは、納得感のある行動に打ち込むことで、感情の波に翻弄されず、ゾーンに入りやすい体質を身につけた。
そして3つめが、「勝つための具体的な数値」を掲げることであった。例えば、「3か月後の大会で投げ技成功率80%を達成する」といふうに、目標に時期や確率などの数値を含ませた。漠然と「強くなりたい」では、なかなか具体的な行動には結びつかない。これが、数字があることで、どんな行動を継続すればいいかが明確になる。
最後の型が、「反省と修正のループの習慣化」。何かに失敗したら反省し、修正して次につなげる。これをループのように繰り返し、最終的には習慣とすることを目指したという。歯磨きと同じで、習慣化したら意志力は不要となる。そこに余計なエネルギーを使わずに済むので、金久保さんにとっての「当たり前」の水準はどんどん上がっていった。
これら4つの型をマスターすることで、「普遍的な勝ち方」を会得し、全国大会の連続優勝という快挙につながったのである。
入社1年目で「異常なほどの」成約率を果たす
前述したように、アスリートを引退した金久保さんは、ソニー生命で第二の人生をスタートさせる。
業界も職種もまったく未知の世界。しかし、これまで培った「普遍的な勝ち方」を応用することで、実績を作れるという勝算はあった。また、オリンピックに届かなかったという悔しさも、大きな原動力となっていた。
そして、ここでも「ロールモデルを真似る」型が役立った。金久保さんは、トップクラスの先輩の働き方を、徹底的に真似した。例えば、訪問した見込み客にお礼の手紙を書いたり、商談中の私的な話題を次の商談でさりげなく触れるといったことを、愚直に実行。徐々に、営業という仕事の本質を把握していく。
1日に5件以上の商談をこなし、がむしゃらに動くうち、保険営業に通用する「型」をつかんでいく。その型とは、初めて会った相手から2回目のアポを取ること、そして売り込みはせず、相手の困りごとを解決する姿勢に徹することであった。
やがて、これが功を奏しはじめる。「一度、話を聞いてみたい」と向こうから求められる機会が増えていったのである。信頼関係が構築できればあとは早い。顧客が、別の見込み客を紹介するという連鎖が始まり、「異常なほどの」成約率につながっていく。
かくして金久保さんは、ルーキー社員歴代1位の成約数を達成する。

もっとも、この成果をもたらした秘訣は、上記にとどまらない。それについては、次の記事で取り上げたい。
【今日の仕事力を高める1冊】
『圧倒的な結果を出す思考の筋トレ』

定価1650円
小学館
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。











