取材・文/ふじのあやこ

一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、親やきょうだいのこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
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株式会社KiteRaは、全国のビジネスパーソンを対象とした「職場のグレーゾーンハラスメント実態と社内規程の機能性に関する調査」(実施日:2025年6月13日〜6月17日、有効回答数:18〜65歳のビジネスパーソン1196人、インターネット調査)を実施。調査にて、「これまで職場で10歳以上歳が離れた人との会話やメール等で不快に感じたことがありますか(単一回答)」の質問に対し、「はい」が38.9%、「いいえ」が61.1%だった。次に、「業務上または日常の職場で、上司や部下、同僚から以下のような言動を受けたことがあるものを全てお選びください(複数回答)」と質問したところ、「ため息や舌打ち、挨拶を返さないなど、不機嫌な態度で接された」が最多で26.2%、次いで「社内の飲み会や接待への参加を強制された」が16.2%、「過去の慣習や個人的な価値観・先入観に基づいた発言をされた」が14.5%という結果になった。
今回お話を伺った奈央子さん(仮名・42歳)は、家では姉との不仲があり、新卒で入った会社ではベテランスタッフからのいじめに遭い、上司からプライベートな関係を求められるなど、疲弊しながら仕事を続けていた。【~その1~はこちら】
うつ病で退職するも「金食い虫」と罵られる…
我慢しながらも出勤を続けていたが、不眠や食欲不振に悩まされていた。そして、2年目に入ってしばらくしたある日、ついに腹痛と涙が止まらなくなり、仕事に行けなくなったという。休職期間を経て、奈央子さんは退職することになる。
「もう限界でした。自分の体なのに思うように動かせない、コントロールできない感覚でした。両親は無理に仕事に行けとは言いませんでしたが、辞めるのではなく、少し休むだけだと思っていたんでしょう。辞めると伝えたときには、『もう少し考えたら』と、きつく言わないまでも続けてほしいといった感じでした」
奈央子さんはうつ病と診断されていた。しかし、姉からの、仕事を辞めた奈央子さんへの当たりはさらに強くなった。その姉に同調するように両親も奈央子さんを邪険に扱うようになっていったという。
「うちの家族はうつ病に対して知識がなくて、甘えだと捉えていたんです。働かずに家にいて何もできなくなった私のことを、姉は『家のお荷物』とか『金食い虫』と呼ぶようになりました。両親もそんな姉を止めることなく、感化されていったというか……。仕事をいつ始めるのか、いつまで何もしない状態を続けるのかといったことを言ってくるようになりました。
そんな家族と一緒にいることがどんどん辛くなっていきました。でも、実家以外、居られる場所がなかったから、我慢し続けました」
早く家を出るためには働くしかない。しかし、体はその焦りと反比例してうまく動かず横になる日々がただ続いていく。そんな日々から救い出してくれたのは、帰省してきた兄だった。
「お盆の時期になり、兄が実家に帰省してきました。それで、仕事も辞めて寝込んでいる私の状態を見て、話を聞いてくれたんです。この状態になって、ただ話を聞いてくれた家族は、兄1人でした」
【お互いがお互いのセーフティーネットだった。次ページに続きます】
