雇用保険制度は、事業所に雇用されて働く人のための制度です。雇用保険の適用が任意となる事業は、個人経営の農林水産業など一部の事業しかありません。法人であれば、労働者を一人でも雇用していれば、強制適用事業所となります。

しかしながら、雇用保険の適用事業所で働いていても、被保険者ではない人も現実に数多く存在します。なぜなら、雇用保険に加入できるのは、「被保険者となる要件を満たした労働者」であり、適用除外となる人たちもいるからです。では、適用除外に該当するのはどのような人なのでしょうか? 今回は、雇用保険の適用除外について、人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。

目次
雇用保険の適用除外とは?
除外される人とは
適用要件を満たしているのに雇用保険に加入できていない! トラブル事例を紹介
まとめ

雇用保険の適用除外とは?

雇用保険の強制適用事業所であっても、働いているすべての人が被保険者になるわけではありません。被保険者となるためには、一定の要件を満たす必要があります。雇用保険の被保険者は、「一般被保険者」「高年齢被保険者」「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」の4種類があります。

一般被保険者は65歳未満、高年齢被保険者は65歳以上の被保険者を指します。一般被保険者、高年齢被保険者となる要件は「所定労働時間が週20時間以上であること」と「31日以上雇用される見込みがあること」の二つです。正社員であっても、パート・アルバイトであっても、被保険者となる要件は変わりません。ただし、週に20時間以上働いても、季節的に雇用される人には別の要件が設けられています。

季節的に、4か月以内の期間を定めて、週30時間未満の労働時間で働く人は、被保険者とはなりません。4か月を超えて、週30時間以上働く場合は、短期雇用特例被保険者となります。また、適用事業所に30日以内の期間を決めて働く人、または日々雇用される人は日雇労働被保険者になることができます。日雇労働被保険者になるためには、本人がハローワークに行って、「日雇労働被保険者手帳」の交付を受ける必要があります。

このように、雇用保険制度の適用を受けるためには一定の要件があり、その要件を満たさない場合は適用除外ということになります。

除外される人とは

雇用保険制度には、労働時間や雇用期間にかかわらず、適用の対象とならない人もいます。原則として、昼間学生は被保険者となりません。ただし、休学中の者や、卒業見込みの者が内定している会社で働く場合などは、被保険者となります。また、言うまでもないことですが、事業主(法人であれば会社の代表者)は雇用保険の被保険者の対象にはなりません。

会社の取締役や役員も、原則としては被保険者にはなりません。事業主の同居の親族や家事使用人も適用除外となります。ただし、これらの人は、就業の実態により労働者性が認められる場合は、被保険者となる場合があります。判断が難しい場合は、ハローワークが決定することになります。また、基本的に雇用保険は二重に資格を取得することはできません。

今はダブルワークの人も増えていますが、二つ以上の適用事業所で勤務している場合は、主たる賃金を受けているほうの事業所でのみ、被保険者となります。その他、海外で現地採用された人は、被保険者にはなりません。国内の会社に雇用されて、出向や転勤により海外で働く場合は、被保険者となります。また、国・県・市町村などで働いている公務員は、別の法令・制度により給付等を受けることになるので、雇用保険の被保険者にはなりません。

適用要件を満たしているのに雇用保険に加入できていない! トラブル事例を紹介

ここまでは、適用除外となる人について解説しました。しかしながら、適用の要件を満たしているのに、雇用保険の被保険者となっていない人は少なくありません。そこでトラブルになることもあるのです。次は、そのような事例について紹介します。

一つ目は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用されているのに、加入していないというケースです。これは雇用契約をきちんと交わしていない、あるいは当初は週20時間未満の労働時間で働く契約だったのに、なしくずし的に20時間以上働くようになったというケースが多く見られます。被保険者になる要件を満たしたら、会社はすみやかに雇用保険の資格取得をしなければなりません。

会社側の意識が低く、本人も正社員でないと雇用保険に入れないと思い込んでいることもあります。このようなケースは退職したあと、失業給付がもらえないことでトラブルになることが多いものです。被保険者になっていなければ、育児・介護給付などの申請もできません。雇用保険の加入の有無などの労働条件は、しっかりと確認するようにしましょう。

二つ目は在宅勤務者のケースです。コロナ禍によるテレワークの普及により、在宅で仕事をする人は増えました。在宅で働く場合でも、指揮命令系統がはっきりしている、拘束時間や始業・終業などの時間管理が可能である、などの条件があれば雇用保険の被保険者になれることがあります。

ただし、業務委託や請負の場合は雇用されているわけではないので、加入の対象とはなりません。どのような契約で働くのか、雇用保険の被保険者となるのか、確認しておくことが大切です。

三つ目は、65歳以上で、複数の事業所に勤務しているケースです。一つの事業所では雇用保険の被保険者になる要件を満たしていなくても、二つの事業所を合わせると労働時間などの要件を満たす場合、マルチジョブホルダー制度という特例を利用することができます。この場合は、本人がハローワークに届け出る必要があります。

まとめ

雇用保険は社員、パート・アルバイトを問わず多くの人が加入している制度ですが、意外と適用の除外となるケースは多いものです。これは、制度の目的が労働者の雇用の確保と生活の安定であるため、保護される対象にある程度の要件を設けるのはやむを得ないことと言えるでしょう。

しかしながら、実際は被保険者となる要件を満たしているのに、未加入でいるのは大きな損失につながります。労働契約を結ぶ際には、雇用保険が適用されるのかどうかは、しっかりと確認しましょう。

●執筆/小田 啓子(おだ けいこ)

社会保険労務士。
大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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