人の顔には、それぞれの人生が刻まれると申します。若さや美しさという面では、どう足掻いても年齢とともに輝きは失われ衰えるものです。しかし、年齢を重ねることによって得た経験や体験、修得した技能、そして鍛えられた精神が、その人の顔に滲み出てくるようになります。それは、まさに渋くて味わいのある“燻し銀の表情”ではないでしょうか? 

それは、若い人には無い魅力となります。そうした方々が口にする言葉も、また味わいのあるモノで心に深く浸透するものであります。そうした先人が残した一つの言葉をご紹介します

第7回の座右の銘にしたい言葉は「果報(かほう)は寝て待て」 です。

目次
「果報は寝て待て」の意味とは
「果報は寝て待て」の由来
「果報は寝て待て」を座右の銘としてスピーチするなら
まとめ

「果報は寝て待て」の意味とは

「果報は寝て待て」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「幸福の訪れは人間の力ではどうすることもできないから、焦らずに時機を待て。」と説明されています。「果報は寝て待て」という言葉には、人生において良いことが起こるのを焦らずにじっくりと待つべきだ、という教えが込められています。

この言葉は、忍耐と信頼の精神を象徴し、特に現代社会において迅速な結果を求めがちな私たちにとって、重要な意味を持ちます。良い結果や幸せは、すぐに手に入るものではなく、時には静かに待つ必要があることを教えてくれます。

「果報は寝て待て」の由来

この言葉の正確な由来は、はっきりしていませんが、長い歴史を通じて人々に受け継がれてきた智慧の一つであることは確かです。「果報」は仏教語で、前世での行為によって受ける現世での報いを表し、転じて良い運に恵まれて幸せなことを指します。「寝て待て」と言ってもただ怠けて寝ているという意味ではなく、「焦らずにゆっくり待て」ということを意味しています。

何事もその成就を焦る必要はなく、時の流れに身を任せ、自然の成り行きに従うべきだという考え方。この思想は、仏教の教えにも通じるものがあり、すべての事象は条件が整えば自然と成就するという哲学を反映しているともいえます。とはいえ、仏教に由来するものではなく一般的な意味で成立したことわざであると考えられています。

「果報は寝て待て」を座右の銘としてスピーチするなら

座右の銘として「果報は寝て待て」を選ぶことは、深い洞察と人生観を表すことができます。以下に「果報は寝て待て」を取り入れたスピーチの例を三つあげます。

1:目標達成のためのスピーチ例

「私の座右の銘は『果報は寝て待て』です。この言葉は、私に大きな価値を教えてくれました。特に、新しいプロジェクトを始めたり、難しい目標を設定したりしたとき、成功への道は決して一直線ではないことを思い出させてくれます。

達成には時間がかかり、時には我慢が必要です。この言葉を胸に、私は困難な時も焦らず、一歩一歩前進してきました。皆さんも自分のペースを大切にし、時間を味方につけましょう。」

2:仕事とキャリアの進展についてのスピーチ例

「皆さん、今日は『果報は寝て待て』という言葉から、仕事とキャリアにおける忍耐の価値に焦点を当てて話します。私たちはキャリアにおいて、すぐに成果を求めがちですが、最も価値ある達成は時間をかけて築かれます。

私の知人に、新しい事業を立ち上げたばかりの起業家がいます。彼は最初の数年間、事業がなかなか軌道に乗らず苦労しました。しかし、彼は諦めず、その理念とビジョンを信じ続けました。

『果報は寝て待て』の精神で、地道にコミュニティを築き、品質を追求し続けた結果、数年後にはその分野で高い評価を受けるに至りました。この話から私たちが学べるのは、仕事においても、結果を急がず、着実に努力を続けることの大切さです。」

3:成長と自己実現のプロセスを語るスピーチ例

「今日は、成長と自己実現について話したいと思います。私がいつも心に留めている言葉があります。『果報は寝て待て』です。この座右の銘を通して、私は、自己実現の旅は一日にして成らず、時間をかけてコツコツと努力する価値があることを学びました。

例えば、新しいスキルを身につけたい時や、個人的なプロジェクトを進める時、すぐに結果が出なくても落ち込まないようにしています。『果報は寝て待て』の精神で、自分自身の成長を信じ、着実に前進しています。皆さんも、自分自身のペースで成長し、夢に向かって進んでください。」

まとめ

「果報は寝て待て」という言葉は、シンプルでありながら深い意味を持つ座右の銘になり得ます。人生の旅においては、時には静かに待つことの価値を認識し、焦りを抑えることが重要です。この座右の銘を心に刻むことで、生活の中で不意に訪れる難題や挑戦に対しても、落ち着いて対応できるようになるでしょう。また、この言葉は、私たちに時間を大切にし、物事が自然な流れで進むのを待つ、という美徳を思い出させてくれるのです。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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