人生も五十路の坂にさしかかる頃になりますと、それまでの人生を振り返る機会も多くなるものです。そんな時、己の半生を言い表す言葉を探してみるのも一興ではないでしょうか? もしかすると、先人が残した言葉や名言の中に“言い得て妙”と思えるような言葉を見つけられるかもしれません。そして、その言葉からは、己が何を信条として生きてきたのかも見えてくるのではないでしょうか。

名前さえ知らなかった人物が残した言葉。その言葉が、自分が歩んだ人生と重なる“奇遇”を体験できるかも? さて、第8回の座右の銘にしたい言葉は「桃栗三年柿八年(ももくりさんねんかきはちねん)」 です。

目次
「桃栗三年柿八年」の意味
「桃栗三年柿八年」の由来
「桃栗三年柿八年」を座右の銘としてスピーチするなら
まとめ

「桃栗三年柿八年」の意味

「桃栗三年柿八年」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「桃と栗は芽生えてから三年、柿は芽生えてから八年で実を結ぶということ」とあります。転じて何事にも成就するまでに、相応の年数がかかることのたとえとして用いられます。

この言葉には、物事を成し遂げるためには時間が必要であり、忍耐強く待つことの大切さが込められています。日々の生活の中で、即効性や短期的な結果を求めがちな私たちにとって、この言葉は深い教訓を含んでいます。

「桃栗三年柿八年」のあとに、「梅は酸い酸い十三年」「柚(ゆず)は九年の花盛り」「枇杷(びわ)は九年でなりかねる」「枇杷は九年で登りかねる梅は酸い酸い十三年」などの句をつけることもあり、地域によって違うようです。

「桃栗三年柿八年」の由来

この言葉の由来は明らかではありませんが、江戸時代の書物『役者評判蚰蜒(やくしゃひょうばんげじげじ)』に「桃栗三年柿八年人の命は五十年夢の浮世にささのであそべ(酒飲んで遊べ)」とあります。ですから、江戸時代にはすでに使われていたといえます。

古人は、自然と共に生き、四季の変化を肌で感じながら生活していました。彼らにとって、作物が実を結ぶまでの時間は、ただ待つのではなく、その過程で土地を耕し、自然のリズムを学び、生きる知恵を深める貴重な期間でした。「桃栗三年柿八年」という言葉は、そのような生活の中で培われた、辛抱強さと時間の価値を尊重する哲学を伝えているのではないでしょうか。

「桃栗三年柿八年」を座右の銘としてスピーチするなら

シニア世代の方々が「桃栗三年柿八年」を座右の銘としてスピーチする場合、この言葉の深い意味を共有し、忍耐がもたらす豊かな人生の重要性を強調することができます。以下に、「桃栗三年柿八年」を取り入れたスピーチの例を三つあげます。

1:人生の節目におけるスピーチ例

「『桃栗三年、柿八年』。この言葉は、私たちの人生において、物事が実を結ぶまでには時間がかかるというシンプルながらも深い真理を教えてくれます。私がこの言葉を座右の銘にしている理由は、人生の多くの節目で、忍耐が最終的には豊かな成果をもたらすということを体験してきたからです。

若い頃、私たちの夢や目標はすぐには叶わないかもしれません。しかし、桃や栗、柿の木が植えられてから実を結ぶまで時間を要するように、私たちの努力もまた、時間をかけてじっくりと育てる必要があるのです。」

2:ビジネスの成功を振り返るスピーチ例

「『桃栗三年柿八年』という言葉には、ビジネスの世界においても大きな意味があります。私のキャリアに置き換えて考えると、新しいプロジェクトや事業を始めたとき、すぐに成果が出ないことに焦りを感じたことが何度もありました。

しかし、時間をかけて地道に努力を続けることの重要性を、この言葉は私に教えてくれました。成功は一夜にしては達成されません。まさに桃や栗、柿の木が実を結ぶまでに時間を要するように、私たちの事業もまた、時間をかけてコツコツと育てることで、やがて大きな実を結ぶのです。」

3:教育や子育ての価値を語るスピーチ例

「『桃栗三年柿八年』この座右の銘は、教育や子育てにおいて私たちに大きな教訓を与えてくれます。子どもたちが新しいことを学び、成長する過程には、それぞれのタイミングがあります。全ての子どもが同じ速度で成長するわけではないのです。

桃や栗、柿の木がそれぞれ異なる速度で成長し、実を結ぶように、私たちもまた、子どもたち一人ひとりが自分のペースで成長することを忍耐強く見守り、支える必要があります。この座右の銘から私たちが学ぶべきは、忍耐と理解、そしてそれぞれの個性に合わせた育成の大切さです。」

まとめ

人生において、私たちは多くの挑戦に直面します。目標を達成するためには、一朝一夕ではなく、長い時間と辛抱が必要です。しかし、その過程自体が、私たちを成長させ、内面を豊かにするのです。「桃栗三年柿八年」という言葉には、そんな人生の智慧が込められています。皆さんがこの言葉を座右の銘として選ぶことで、日々の生活においても忍耐と努力の重要性を思い出し、目の前の困難に対しても諦めずに取り組むことができるでしょう。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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