息子はしっかり者の嫁の「言いなり」だった

旅行当日は、成田空港で待ち合わせた。「せめてこのくらいは」と、光則さんは息子一家の空港ラウンジ代は出した。

「驚いたのは、それに対して、さも当然という態度を取られたこと。かつての息子なら、“お父さん、ありがとう”と言うはずなのに、そうしない。息子は7年前に結婚し、3歳と5歳の男の子の孫がいるんですが、人の親になればなるほど、感謝がない人間になっていくのが気になりました」

さらに驚いたのは、ラウンジでたっぷり食事をとったこと。特に嫁は人の倍は食べていた。

「ハワイ便は夜発が多く、ちょうど夕飯の時間帯だからいいのですが、それにしても食べ過ぎている。そもそも、ラウンジに来る人は、食べ放題のバイキングのように、皿にたくさん盛り付けません。必要なものを楽しむ程度に食べて、お酒を飲みながら、風景を見ながらゆったりする。その時間を楽しむのです。それなのに、お嫁さんはそんな空気を全く読まず、もりもり、むしゃむしゃと食べている。何だか不思議な感じがしました」

妻は「意地汚い食べ方をするわね」と光則さんに耳打ちした。加えて、孫2人のマナーも最悪だった。走り回る、ドリンクサーバーで遊ぶなどしても、親は注意をしない。

「見かねて私が“やめなさい”と言うと、“なんでやめなくちゃいけないの?”と。“みんなが迷惑するから”と答えると、“それってあなたの感想ですよね?”と返ってくる。何も言わないでいると“はいロンパ(論破)”と言われました」

「はい論破!」とは、ネット上で広まっている定型文のことだ。このフレーズを実社会で使うと、自分の主張に固執し、他者の意見に柔軟に対応できないと判断されてしまうだろう。ところで、嫁はどんな人なのだろうか。

「息子と同じ有名国立大学を卒業し、大手商社に入るも数年で退社。ワーキングホリデーでオーストラリアに行き、帰国後はワイン関連の仕事をしています。息子とはワインの勉強会で出会い、学部が違う同級生であることに意気投合。6年前に授かり婚をして、今に至ります」

この嫁と結婚してから、息子は明らかに変わった。自己主張をするようになり、お金や権利に固執するようになった。

「起業した会社がうまくいくようになったのも、お嫁さんと結婚してから。取りはぐれていた利益を、お嫁さんが回収してくれたんだと思っています。あとは、私たちの財産を聞いてくるようになったことが変化といえば変化。“このマンションは、独身の姉ちゃんにあげるの?”とか、“貯金はいくらあるの?”とかね。まだこっちは元気なんですよ。それなのに、終活だかなんだか知らないけれど、財産のことを聞いてくる。これは絶対お嫁さんの差し金なんですよ」

ラウンジでも、かつての息子は食べ物はほどほどに、ワインを飲みながら会話を楽しんでいた。しかし今は、嫁の言いなりになって、フルーツや惣菜をテーブルに運んでいる。光則さんはハワイ旅行の前途多難さを予感したという。

【ハワイの10日間で待っていた試練とは……その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。

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