「ねんきん定期便」が毎年誕生日にお手元に送られてきていることは、把握していらっしゃるでしょうか? この「ねんきん定期便」は、これまでにご自身が納付した保険料や、将来にもらえる年金の見込額などが記載されています。「ねんきん定期便」が届いているのに、見ないままになっている方も多いかもしれません。しかし、年金は老後の生活基盤となる大事なお金であるため、正しくチェックしておきたいところです。

そこで、今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、「ねんきん定期便の見方」について、ご説明いたします。

目次
ねんきん定期便とは?
50歳未満の人、ねんきん定期便の見方のポイントは?
50歳以上の人、ねんきん定期便の見方のポイントは?
ねんきん定期便から将来もらえる年金の計算方法は?
まとめ

ねんきん定期便とは?

「ねんきん定期便」は、年に一度、誕生日に保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報を知らせるものです。年金制度に加入していることや、年金給付と保険料負担の関係を実感してもらい、特に若い世代の方に年金制度に関する理解を深めていただくことにより、国民の年金制度に対する信頼を向上させることを目的としています。

「消えた年金問題」をご存知でしょうか? 平成19年、年金手帳などに記載されている基礎年金番号に統合されていない記録(持ち主不明の年金記録)約5,095万件の存在が明らかになりました。その後の対応でいくらかは解明したものの、結局2,000万件ほどの記録は未解決のまま事態の終了宣言がなされてしまったものです。

これらの反省から、現在は日本年金機構が年金の管理を行なっています。年に一度、加入者一人一人に、ねんきん定期便を送付し、自身が支払った年金を確認してもらおうという趣旨です。実際に消えてしまった事実があるだけに、ねんきん定期便が送られてきた際には、しっかりとチェックをするように心がけたいものです。

ねんきん定期便は、受け取る方の年齢が(1)50歳未満と、(2)50歳以上とでは記載されている内容がやや異なるのです。今回はこちらに焦点を当てて、それぞれの「ねんきん定期便」の見方をご説明します。

50歳未満の人、ねんきん定期便の見方のポイントは?

実は、50歳未満の方に送付されるねんきん定期便には、将来もらえる予定の年金金額は記載されていません。単に「これまでの加入実績に応じた年金額」として金額が表示されています。加入した時からねんきん定期便を集計した時点での加入実績をもとに算出したものなのです。当然、若い方などは加入期間が短いので、少ない金額が表示されています。

これは、公的年金は、若い時に自分が積み立てた分を将来自分で受け取る『積み立て方式』ではなく、現役世代が納めた保険料を現在の受給者への支払いに充てる『賦課方式』が採用されているためです。将来の人口構成の変動に応じて、今後も年金制度が改正される可能性があります。そのため、50歳未満の方々に対しては、(将来変わるかもしれない)現行制度で算出した将来の年金額よりも、現時点での加入状況の確認に重点を置いていることになるのです。

参照:日本年金機構HPより

上記は日本年金機構が紹介している、50歳未満の方向けの「ねんきん定期便」の見本です。

このうち、確認して頂きたいのは以下のポイントが挙げられます。

(i)=これまでの年金加入期間

老齢基礎年金を受給するためには、原則として保険料を納めた期間と免除された期間を合算して120か月の「年金加入期間」が必要です。これが10年以上あれば老齢基礎年金を受給できますので、必須の確認ポイントであると言えるでしょう。

50歳以上の人、ねんきん定期便の見方のポイントは?

50歳以上の方のねんきん定期便には、「受取見込額」が表示されています。

上記は先ほど同様、日本年金機構HPより抜粋しています。

このうち、確認して頂きたいポイントとしては、まず50歳未満の方と同様、「(i)=これまでの年金加入期間」です。老齢基礎年金を受給するためには、原則として保険料を納めた期間と免除された期間を合算して120か月の「年金加入期間」が必要となります。

(j)・(k)・(l) =【老齢年金の種類と見込額(年額)】です。50歳以上の方は、ここで1年間の受取見込額が表示されます。受取見込額は、現在の加入状況のまま60歳まで継続して加入したものと仮定して計算されたものです。

ねんきん定期便から将来もらえる年金の計算方法は?

ねんきん定期便から、将来もらえる年金の額を計算できるでしょうか?

50歳以上の方

50歳以上の方については、上記の通り、すでに (j)・(k)・(l) =【老齢年金の種類と見込額(年額)】で将来もらえる年金の見込額が記載されています。下記の部分を確認すると、現状の納付状況がそのまま60歳まで継続した場合にもらえる見込額になっています。

50歳未満の方

50歳未満の方は、下記ねんきん定期便の、ⓙ =これまでの加入実績に応じた年金額を確認してください。

この部分には、これまでの加入実績に応じた年金額が年額で記載されています。

前述しましたが、50歳未満の方に送付される年金定期便には将来もらえる年金の見込額は記載されておりません。将来もらえる年金の見込額を確認するためには、今後、保険料を納めることによって上乗せされる年金額を算出する必要があります。

「(j)=これまでの加入実績に応じた年金額」に「上乗せされる年金額」を足した金額が将来もらえる年金の見込額です。

それでは、この「上乗せされる年金額」を試算する方法をご案内いたします。

国民年金

国民年金は、1年間保険料を納付することで約2万円、年間受給額が増加します。そのため、今後も納付を継続することで下記の計算で上乗せされる年金額を計算することが可能です。

2万円 × 加入年数(60歳 -現在の年齢)= 上乗せされる年金額

例えば48歳の方であれば、あと12年加入する見込みです。そのため、2万円 × 12年(60歳 - 48歳)= 24万円 が「(j)=これまでの加入実績に応じた年金額 老齢基礎年金」に上乗せされることになります。

厚生年金

厚生年金は、保険料が給与賞与の額に応じて変わるので平均年収で試算することになります。計算式は下記の通りです。

今後の平均年収 × 0.55% × 計算時から退職までの年数 = 上乗せされる年金額

例えば、年収600万円の方が、あと12年間納付を継続する場合、600万円 × 0.55% × 12年 = 39万6千円 が「(j)=これまでの加入実績に応じた年金額 老齢厚生年金」に上乗せされることになります。

受給の要件をこれまで通り満たしていれば、イ)国民年金と、ロ)厚生年金を受給することになるため、増加額は、24万円 + 39万6千円 = 63万6千円(年額)になります。厚生年金はあくまで見込年収をベースにするので、さらに増えることも減少することもあるのでご注意ください。

まとめ

ねんきん定期便の見方についてご案内しました。ねんきん定期便を確認すると、年金制度や年金受給額についての見通しを立てることができるようになります。ご自身の将来の生活の基礎となるものですので、ねんきん定期便はしっかりと確認して自身の受給額を想定し、将来の設計を立てていくことが重要でしょう。

他にも例えば、年金の受取のタイミングを遅らせる・60歳以降も仕事をすることで厚生年金の加入期間を延ばす・iDeCoや個人年金保険に加入するなどの方法で年金の受給額を増加させることも可能です。しかし、この調整も、現在想定される年金受給額を把握してこそになります。これから届くねんきん定期便を一度じっくり読み解いてみてはいかがでしょうか。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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