年金制度は、現役時代に保険料を支払うことで老後にお金を受け取ることのできる制度です。ご自身の年金について、いくらもらえるかは誰しも気になるところだと思います。それに他の人は実際、どのくらい年金をもらっているのでしょうか。自分の受給額以上に気になるところでもありませんか?
ちなみに大谷翔平選手が所属するアメリカのメジャーリーグにも日本とは異なりますが、年金制度があります。満額需給の要件を満たせば年間20万ドルを終身で受給できるそう。もらえる額がけた違いに大きいですが、受給要件の「メジャーに10年在籍」というハードルが高すぎるのが難点のようです。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、年金の平均受給額はいくらなのか、働き方や世帯別にどれくらい受給額が変わってくるのか、シミュレーションを交えつつご説明いたします。
目次
年金の受給額はどう決まる?
年金の平均受給額はいくら?
職業・世帯別に平均年金受給額をシミュレーション
まとめ
年金の受給額はどう決まる?
受給することが出来る年金の種類について、日本の年金制度は以下の「3階建」の制度構造になっています。
・1階部分… 国民年金(老齢基礎年金)
・2階部分… 厚生年金(老齢厚生年金)
・3階部分… 年金払い退職給付(以前の職域加算)(※)
さらにその上に重ねてiDeCoやNISAなどの制度もあります。
※企業年金や公務員独自の上乗せ制度
このうち、2階部分である厚生年金は、人によって加入期間が異なる上、受取額も加入期間の平均報酬額によって変動することになるため、単純に比較することはできません。さらに、3階部分も企業年金制度の加入の有無によって差が出て、個人での確定拠出年金の加入や民間生命保険会社の個人年金保険の加入の有無によって変動することになります。そのためやはり単純には比較することはできません。
1階部分については、原則として全国民が加入する定額年金で、年金受給金額は加入期間のみによって決定されます。20歳~60歳までの40年間加入し、滞納や免除がなければ全ての加入者が年間で約80万円程度を満額として受け取れる制度です。なお、令和5年度の国民年金の満額は79万5千円です。
これを計算式で表すと、下記の金額となります。
その人の国民年金の受給額 = 79万5千円 × 保険料の納付月数 ÷ 480か月(40年)
年金の平均受給額はいくら?
厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和3年度分、令和4年度分)によると、公的年金の被保険者数は令和4年度末で6,744万人となっています。
それぞれの内訳は下記の通りです。
・自営業者を中心とする「国民年金第1号被保険者」:1,405万人
・会社員等の扶養配偶者が加入する「国民年金第3号被保険者」:721万人
・会社員等が加入する「厚生年金保険第1号被保険者」:4,157万人
・公務員共済組合員・教員共済制度加入者が加入する「厚生年金保険第2~4号被保険者」:461万人
わが国では厚生年金保険の加入者が多いことがわかります。
それでは、国民年金・厚生年金の平均受給額についてみてみましょう。
【令和4年度 国民年金】
・平均 = 5万6316円/月
・満額 = 6万4816円/月
・男性平均 = 5万8798円/月
・女性平均 = 5万4426円/月
【令和4年度 厚生年金保険】
・平均 = 14万3973円/月
・男性平均 = 16万3875円/月
・女性平均 = 10万4878円/月
滞納や免除、学生や専業主婦の期間があって、その間の支払いをしていない人もいるため、男女の間で差があり、また満額受給と平均受給にもそれなりに差がある事が分かるかと思います。
職業・世帯別に平均年金受給額をシミュレーション
それでは、具体的な例を用いて平均年金受給額をシミュレーションしてみたいと思います。
上記の厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和3年度分、令和4年度分)をベースにして試算してみましょう。もちろん加入状況などは人によって異なるため、あくまで参考として考えてください。
夫婦共働きの場合(夫婦とも会社員で厚生年金に加入)
・男性・厚生年金 = 14万3,973円/月
・女性・厚生年金 = 10万4,878円/月
・夫婦合計 = 24万8,851円/月
・世帯年間受給額 = 298万6,212円
夫が会社員・妻が専業主婦の場合(夫が厚生年金で妻が国民年金のみ)
・男性・厚生年金 = 14万3,973円/月
・女性・国民年金 = 5万4,426円/月
・夫婦合計 = 19万8,399円/月
・世帯年間受給額 = 238万788円
夫婦で自営業の場合(夫婦とも国民年金に加入)
・男性・国民年金 = 5万8,798円/月
・女性・国民年金 = 5万4,426円/月
・夫婦合計 = 11万3,224円/月
・世帯年間受給額 = 135万8,688円
独身会社員の場合(会社員で厚生年金に加入)
・男性・厚生年金 = 14万3,973円/月
・世帯年間受給額 = 172万7,676円
・女性・厚生年金 = 10万4,878円/月
・世帯年間受給額 = 125万8,536円
上記はあくまで参考数値です。ご自身の年金受給額がいくらかになるのか、詳細を確認したい場合には、「ねんきん定期便」を参照すると良いでしょう。「ねんきん定期便」は日本年金機構からご自身の誕生日前に届く書類です。こちらを見ると、保険料の納付状況や将来もらえる年金の金額が記載されています。
納付漏れなどの確認のためにも毎年しっかり確認されることをお勧めいたします。
まとめ
年金は原則65歳から受け取ることができます。しかし、ご自身の健康状況や勤務年数によって「繰り上げ受給」や、「繰り下げ受給」の制度を選択して受給のタイミングをある程度調整することが可能です。
また、今回のシミュレーションでは、国民年金と厚生年金の平均受給額を用いて試算していますが、いわゆる「3階部分」に該当する「企業年金」や「年金払い退職給付」などがある方はさらに上乗せがあります。加えて、昨今はさらにiDeCoやNISAなどを活用して老後の資金を上乗せすることも可能です。
自営業の方は2階部分である厚生年金がないことになります。しかし、別に「国民年金基金」という制度が用意されているので、国民年金だけでは不安という方はそれに加入することで、自身で年金を上乗せすることも可能です。他にも、小規模企業共済などに加入していれば、支払った掛金が全額確定申告で所得控除することができ、事業廃止の際は退職金としても受け取ることができます。
年金以外にも老後の生活資金を確保する方法があるため、ご自身の生活にあった資産形成を行っていくようにしましょう。
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)