年金制度は2階建、3階建とも言われます。その最も基本となる1階部分の老齢基礎年金はどのように計算され、いつの時期から受給することができるのか、ご自身が受給できる年金の額をシミュレーションして、今後の受給に備えていきたいものです。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、老齢基礎年金の年金受給資格期間についてご説明いたします。
目次
老齢基礎年金とは?
老齢基礎年金の年金受給資格期間とは?
老齢基礎年金を受給するには?
老齢基礎年金の受給額をシミュレーション
まとめ
老齢基礎年金とは?
老齢基礎年金は、国民年金保険料を納めている方が、65歳から受け取れる年金のことを指します。老齢基礎年金を受給するには、保険料納付期間と保険料免除期間(災害や失業など)の合計期間が10年以上であれば、原則として65歳から受給することができる基礎年金です。
加入するのは20歳からで、最後の保険料の支払い時期は60歳であるため、40年間の保険料をすべて納めると、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。なお、受給できる年金額は、保険料の納付期間に応じて計算される仕組みです。
原則65歳から受給する老齢基礎年金を受け取る方法としては、下記2つの制度があります。
(1)繰り上げ受給:60歳から65歳までの間に受給開始時期を繰り上げて年金を受け取る
(2)繰り下げ受給:66歳から70歳までの間に受給開始を繰り下げて年金を受け取る
(1)繰り上げ受給をすると、繰り上げた分だけ年金は減額され、反対に(2)繰り下げ受給をすると、繰り下げた分だけ年金は増額されることになります。
老齢基礎年金の年金受給資格期間とは?
年金を受給するためには、保険料を納めた期間や加入者であった期間などの合計が一定年数以上必要です。現行制度では「20歳から60歳までの間に、保険料を10年間分以上納める」と定められています。これは国民年金、厚生年金、共済組合の加入期間も含んでおり、年金額に反映されない「合算対象期間」や、保険料が免除された期間も受給資格期間になります。
「合算対象期間」とは、一定の事由により国民年金に任意加入していない、あるいは被保険者の対象となっていなかったことなどにより10年の要件を満たせなくなった方々であっても、受給資格を得るための計算にはカウントする期間です。計算期間はカウントされても、納めた保険料は少ないわけですから、将来受給できる年金額は減額されることになります。
不足している保険料は追納の制度を使って追加払いが可能で、受給する老齢基礎年金の金額を増やすことは可能です。
老齢基礎年金を受給するには?
老齢基礎年金の受給には一定の手続きが必要です。その際、下記の注意事項があります。
(1)年金受給のための請求手続きと時効
一般的な老齢基礎年金を受け取る権利が発生する方に対しては、65歳に到達する3か月前に年金事務所から(最終の年金加入記録が共済組合の方は、当該共済組合から)、「年金請求書」等の案内が送付されます。
この年金請求書に必要事項を記載して、受給開始年齢の誕生日の前日以降に添付書類とともに年金事務所に提出して手続き完了です。ただし、年金受給の請求をせずに受給権を得てから原則として5年を過ぎると、当該5年を過ぎた分の年金については時効により、受取ができなくなるので注意が必要です。
その後、1~2か月後に「年金証書・年金決定通知書」が送られてくるので、ここで受給する金額を確認します。さらにその1~2か月後に年金の受け取りがスタート。年金は原則として偶数月の15日に前月・前々月分が振り込まれます。
(2)年金の繰り上げ受給・繰り下げの請求手続
年金の繰り上げ受給を希望する際は、65歳までの受給を希望するタイミングで手続きを行います。この時点で、年金を繰上げ受給する際の減額率が決まります。
また、繰下げ受給については、上記(1)65歳のタイミングで手続きを行わずに、66歳以降70歳までの間で、繰下げて増額した年金受給を希望する時期に、繰り下げ請求書を提出することが可能です。そして、この時点で年金を繰り下げ受給する際の増額率が決まります。
(3)年金保険料の追納
例えば、学生期間があったことや、転職をした際に保険料を支払えなかった期間があるなど、40年間の保険料を納められなかった、というケースがあるでしょう。この場合、保険料を全額納付した場合と比べて受給できる年金額が低くなってしまいます。
納付猶予や学生納付特例の期間は、年金の受給資格期間として計算されますが、年金額には反映されません。ただし保険料の免除・納付猶予や、学生納付特例の承認を受けた期間の保険料については後から納付(追納)することが可能です。
注意点として、追納はその承認を受けた月の前10年以内の免除等期間に限られること、追納の時期によっては加算額が上乗せになる場合があること、老齢基礎年金を受給することができる方は追納ができないことなどが挙げられます。納付できない場合は、免除や猶予の申請をして、納付可能となった際は速やかに追納の手続きをして納付しておきましょう。
老齢基礎年金の受給額をシミュレーション
将来、受給される年金の額は誰しも気になるところです。国民年金の加入要件を最大に満たした場合、受給額はいくらになるのか試算してみます。
40年間の保険料を全て納めると、満額の老齢基礎年金を受給できます。令和5年度の年間満額支給額は79万5千円(昭和31年4月2日以降生まれ、新規裁定者の場合)です。
これに20歳~60歳までの40年 × 12か月 = 480か月の内、年金の加入期間の割合に応じて受給額が決定します。
加入要件を最大に満たした場合、下記数式の通り79万5千円が受給され、この金額をベースに未納期間や免除期間があると受給額が異なってくることになります。
79万5千円 × 加入期間(480か月)÷ 保険料納付期間(480か月)= 79万5千円
ご自身の受給予定額は、日本年金機構が「公的年金シミュレーター」を公開しているので、そちらで確認ができます。また、「ねんきんネット」では、過去の加入記録に基づく、より詳細な年金の見込額を確認することが可能です。年金の受給予測だけでなく、自身の年金記録などの情報も確認できるサイトになっていますので、一度ご確認ください。
※「ねんきんネット」には、マイナンバーカードのご用意が必要です。
まとめ
今回は老齢基礎年金に焦点を絞っていますが、基本的に年金の受給には、加入期間を確認することが重要です。年金を受け取る資格があるのか、受け取る場合はいくらなのか、追納を失念していないかなど、あらかじめ確認しておくことをお勧めいたします。
誕生月には日本年金機構から「ねんきん定期便」という案内が届きますので、そちらで自身の状況を確認しておくことが大切です。若い方でも、特に学生の方や転職をされている方などは、普段から意識して年金保険料が未納にならないように気をつけましょう。
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)